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Limit Break Online  作者: 円連
第三章:出撃、サーシャ小隊
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第六十九話 クロスイベント オヅヌ+ケントツカムイVS緑軍グリムドゥーナ騎士団+耳長騎士と笑顔仮面【7】

「はじめまして♪私の名はオウガデス、以前は黒軍スタルト騎士団を率いておりました♪今は噺家、付き合いで緑軍グリムドゥーナ騎士団で師団長を務めております♪以後お見知りおきを♪」

 通信モニターに映し出されたオウガデスの姿は色白金髪碧眼の優男、絶世の美男子とまではいかないが顔立ちは整っている。

 とても操縦席から通信しているとは思えず。背景は畳敷きの和室、オウガデスの着物はパイロットスーツではなく和服だ。

 西洋人風な見た目に違和感を覚えるが、座布団の上に正座し悠然と佇む姿は噺家に見えなくもない。

 オウガデスの前に置かれた台の上には扇子と手拭い、それと何故か湯呑が載っている。

 あれでどうやってAQAを操縦するのだろうか?念動ってやつか?


 この男もライムと同様にイベントシーン無しで登場し、NPC表示も無い。

「黒軍リブノシュタット騎士団サーシャ小隊所属のオヅヌだ。貴方もライムと同じAMIDAにとってのウイルスなのか?」

「あらあら♪ウイルスですか、そういった見方もできますが寧ろ寄生虫と言った方が的を射ていると思いますよ♪」

「どちらにしろ良いイメージではないな」

「ふふ♪仰る通りですね♪」

 遠まわしに聞いたのが不味かったか、何だかはぐらかされた気がする。


「おい、早く証明しろ」

「はいはい♪」

 おかんむりのライムが苛立ちを顕わにしている。

 急かされたオウガデスは俺に一言助言を残し、AQAガメオヴェアは霧に包まれ消えて行った。


「あの野郎が消えたって事はオヅヌ、貴様が証明するって事だな」

「ああ、どうやらあの時に勝者になっていた俺が証明しなくてはいけないらしいな」

 本当のところは”勝っていた”ではなく、”勝てていた”なのでオウガデスから助言を貰った今でも俺が敗者だとは思うが、折角チャンスを貰ったんだ。勝ちを拾えるなら拾ってみたいと思う。


「じゃあ、やってみろよ」

「もうやってるよ」

 AQAライムライトの背筋が後方へと弓なりに曲がる。

「何!?」

 ライム機の首に巻かれた【装具】カナベラルが首を締め付け、その両端は両足首に絡まり、頭部と脚部が触れ合うほどの体勢を取らせ、締め上げているのだ。

 まさか、奪われた武器がまだ俺の武器であるとは、機体スキル【遠隔】でこんな使い方が出来るとは思いもしなかった。


「マフラーを遠隔で使ってください♪」

 オウガデスの一言で勝機が見えた。

 俺にとっては天啓の一言だ。




 ライム機は首に巻きつくカナベラルを剥ぎ取ろうと手を伸ばすが、カナベラルは逆にライム機の両腕を絡め取り後ろ手に拘束、いかに関節部分の可動域が人間とAQAとでは違っていてもその限界は有り、関節技エビ反り固めが極まる。


 俺は捨てられた【金棒】極楽大往生を拾い、拘束から逃れようと足掻くライム機を何度も何度も殴打した。


 バキ!バキ!ドガッ!


 そこへ、金属の竹杭に張り付けられていた戦金後鬼と刻銀前鬼、更にケントツカムイが何時の間にか拘束から解放され、皆でライム機を滅多打ちにする。

「ちょっ、ちょっと待て!なんで召喚機獣が自由になってんだ?野郎、オウガデスの仕業だな、ここまで介入するのは反則じゃねえか!」


「心外ですね♪私はライムさんに証明を急かされましたので、お望み通り決着を早めたのですよ♪」

 霧と共に再び姿を現すAQAガメオヴェア。

 急かされた事に怒りを覚えたのか、三機を解き放った上、一緒になってライム機を何度も踏みつけている。

「ふふ♪私が手を出さずとも遅かれ早かれ召喚機獣の拘束は解かれていましたよ♪」

「やっぱり手を出していたじゃねえか!しかも足も出しやがって、この野郎!!」


 よくアニメで煙に撒かれながら集団でボコボコにするコミカルなシーンを見たが、ゲームで同じ展開を体験するとは思わなかった。

 だが、いくら攻撃を加えようともAQAライムライトに与えたダメージは修復され装甲を破壊する事が敵わない。

 このままだと攻撃側の方が先にエネルギー切れになりそうだ。


「オウガデスさん、やはり俺の負けだな、俺達じゃ再生するAQAを倒し切る事は出来ない」

「ふふふ♪オヅヌさん、何もAQAを撃破する事だけが決着ではありませんよ♪」

 ガメオヴェアの指先がライムライトの体部装甲の一部を突くと、いとも簡単に搭乗ハッチが開きライムを摘み出した。

「はい♪あとはライムさんを煮るなり焼くなりすれば勝利は確定です♪」

 そりゃ、強制開閉スイッチがあってもおかしくないけど、それが何処にあるのかは分からないぞ。

「スイッチなんて時間をかけて探せば見つかりますよ♪見つからなくても壊せば良いのです♪」

 そう言ってガメオヴェアはライムライトを踏み潰して体部装甲を破壊する。

 今までのタコ殴りは何だったのかと思うくらいあっさりとライム機を破壊したオウガデス、常に微笑みを絶やさないが、絶対にこの人を怒らせてはいけないと心底思った。

「放せこの野郎!煮るとか焼くとか相棒をなんだと思ってやがる!」

 オウガデス機に抓まれジタバタするライム、本当に相棒なのかと疑うくらい、ぞんざいな扱いをされているな。

「ふふ♪嫌ですね~♪本当に大事な相棒を煮たり焼いたりするわけありませんよ♪ちゃんと離しますから♪ぽいっとな♪」


 な、な、な、投げた!

 大事な相方を投げちゃったよ。


 何時の間にか雲は晴れており、快晴の空へ向けライムが飛んで行った。

 ライムの姿が見えなくなる頃に一瞬だけ星の様に輝いて消えた気がする。

 ああ、こんなシーンもアニメで見た事あるな。



― 達成条件を満たしました。ミッションクリアです。 ―



 こんな展開でミッションクリアしても良いのだろうか?

「いいえ、良くありませんよ♪」



― ミッションクリアがキャンセルされました。別ミッションの達成条件をクリアしてください。 ―



 いったいどう言う事ですか?二転三転する展開に付いて行けないんですが…。

「折角こうして会ったのですから、もう少しゆっくりしてはいかがでしょう♪」

「ゆっくりって何時までですか?」

「そうですね♪一席設けますので、それまでは楽しんで下さいな♪」

 具体的な時間を告げないところが気になるが、逆らうのも恐ろしいので素直に従うことにした。




「皆様、遠いところをお集まり頂き有難うございます♪」

 何故かAQAを降り、プレイヤー、ノンプレイヤーを含む緑軍の皆さんと一緒にオウガデスの落語を聞くことになった。


「ねえ、オヅヌ、あの人は何者?ライム師匠は何処へ行ったの?」

 隣席のアルテアが声を掛けてきた。彼女達は球体に包まれた後の記憶が無いらしい、以前、球体に包まれた際には、気が付くとミッションクリアとなり基地に居たそうだが、今回は寄席の席に着いていたのだ。

「ライムの相棒のオウガデスという人で、グリムドゥーナ騎士団の師団長らしいぞ」

「そんな偉い人には見えないけど…」

 オウガデスをまじまじと観察するアルテアと隊員たち、俺もモニター越しでなくキャラクターの目で改めて見直した。アルテアの言う通り確かに偉い人には見えないが、えらい人であるのは間違いない。

「ライムは星に、いや、遠くに行ったみたいだ」

「あら、そうなの、いつも戦闘が終わればさっさと何処かへ行くのよね」

 いつも星になってる訳じゃないだろうけど、彼女達にとってライムの行方は気になる程度で、心配する素振りは見受けられない。


 気になると言えば俺達の後方で刻銀前鬼、戦金後鬼、ケントツカムイが片膝を付き待機している。先程オウガデスが三機にも声を掛け、落語を聞くように勧めていたのだ。控えるのは三機だけではない、どこからともなく新たな機体が集結している。

 ウサ耳の女性型機体、馬の頭の機体の二機が三機の後方に、更にその後ろに黒いマントを羽織った赤い機体と狼型のクリスタルブルーの機体が並び立ち、そのすぐ後ろにはAQAの倍はあろうかといった巨大な黄色の機体がこちらを見下ろしていた。


 オウガデスによると、どの機体もAQAではなく、特殊AS、別名”召喚機獣”と呼ばれる意思を持つ機体らしい。


 永遠に続くかと思われる一時間が過ぎた。

 オウガデスは流暢に喋るのだが、内容がつまらない、終始強弱の無い展開、登場人物が多く、場面も頻繁に変わり、最後の落ちも印象が薄かった。

 頭を下げたところで観客が、ああ終わったのかと気付く程の出来だった。

 ところが、NPC全員が拍手喝采、スタンディングオベーションで必死に場を盛り上げようとしている。

 後ろに控える召喚機獣もバッチン、ドッカンと惜しみない拍手を送っているのだ。


 だが、オウガデスは下げた頭を上げようとしない、どうしたのだろうと心配していると、後席に居たNPCの軍人エルフから拍手をするよう促された。つられて拍手をすると、ララベル達も仕方なしに拍手を送る。


「どうも有難うございます♪本日はこれにて♪」

 なるほど、ここは拍手を送るのが礼儀なのだな。

 オウガデスは満足そうに舞台袖へと下がって行った。


 鳴り止まない拍手、それが手拍子へと変わり、アンコールの合唱が始まる。

「えっ!?もう一回聞くの?みんな正気?」

 アルテアが抗議の声を上げるが、周囲のNPCエルフ達が必死の形相で黙ってくれと制止してくる。

 先程の静寂とは一転、狂気のアンコールが続き、一旦下がった緞帳が上がると、そこにはオウガデスが笑みを浮かべて座っていた。


「皆様の声援を受け、恥ずかしながらもう一席、いえ、十席ほど御付き合い下さいませ♪」

 青ざめるも拍手喝采は鳴り止まない、狂気が狂喜であるかのように振る舞うNPCの観衆。

 そうか、これも昔のアニメで見た事があるぞ、空き地でのリサイタルを彷彿とさせる展開だ。


 本当にオウガデスを満足させるまで終わらない寄席、地獄の笑い話はいったいどこまで続くのやら…。

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