第六十八話 クロスイベント オヅヌ+ケントツカムイVS緑軍グリムドゥーナ騎士団+耳長騎士と笑顔仮面【6】
「刻銀前鬼、参上」
「戦金後鬼、見参、主よ、今こそ我らの力を示す時ぞ」
RANK4の銀前鬼と金後鬼がプレグナル・オウガのセット効果である【鬼力強化】によって刻銀前鬼と戦金後鬼になり、RANK5の特殊ASとして戦列に加わる。
刻銀前鬼は銀と黒の縞模様をした虎面人機で、長く鋭い爪と強靭な牙を武器とする。
戦金後鬼は赤みがかった黒の牛面人機、黄金の角と巨大な戦斧を武器とする。
「両鬼に告ぐ、敵機の悉くを殲滅せよ!」
本当は無力化程度で済ませたいのだが、手加減とは無縁そうな二鬼なのだ。短期決戦が性に合っていると思える。
「委細承知」
「御随意に」
刻銀前鬼がララベル機に、戦金後鬼がアルテア機へと向かう、隊長機は二鬼に任せ、俺は翅無し四機を仕留めるとしよう。
【黒鬼門】から戦斧を取り出し、柄に鬼札を地上のAQAへと投げつける。
風刃魔法を切り裂き緑軍AQAへと飛んでいく戦斧、ターゲットのAQAは咄嗟に光のバリアを張るが、戦闘スキル【斧投壁砕斧】の文字通り、斧刃は光の障壁を粉砕、勢いは極端に落ちたものの緑軍AQAの体部装甲を破壊し、素体に食い込む形で戦斧は止まった。
損傷した機体を庇うかの様に二機の緑軍AQAが立ちはだかるが、【赤十字虎爪刃】を放ち、バリアを斬壊させると追撃の【黒鬼極歩爪】で三機纏めて葬る。
戦場で茫然と立ち尽くす残りの一機を【瞬歩】で背後に回り【刻銀爆砕牙】で爆咬みし、撃破。
翅無し四機を倒し、俺は前鬼、後鬼の加勢に向かおうとしたが、刻銀前鬼はララベル機、戦金後鬼はアルテア機の頭部を掴み掲げながら相方の元へと疾走している。そして前鬼後鬼が交差する瞬間に両隊長機の後頭部をぶつけ合わせた。
もの凄い衝撃だな、頭部装甲が一瞬で爆散したぞ。
だが、両隊長機は互いがぶつかり合う寸前に頭部装甲を切り離し、最悪の事態を回避していた。
おや?緑軍の素体ってマネキンみたいだな。
表情は無いが、光沢のある銀色で綺麗だ。
黒軍と違って全然悪魔っぽく見えない。
外見の差に多少の不条理を感じるが、それはさて置き、大勢は決したのだ。
既に両隊長機の手に武器は無く、高い機動性を発揮していた翅も破壊されており、勝敗は目に見えて明らかだ。
それにしても前鬼と後鬼は俺が少し目を離した隙にどうやって敵の武器を奪い、翅を破壊したのだろう?
疑問は残るが、さっさとミッションをクリアすべく、前鬼後鬼に止めの指示を飛ばす。
隊長機を落とせば残る四機は時間の問題、手っ取り早く【瞬歩】で近付きバリアを砕いて撃ち落とすか…。
指示を受けた両鬼は右腕を掲げ、合体戦闘スキル【鬼切断頭】の構えを取り、二機纏めて刈り取るべく猛然と襲いかかる。
決着の直前、隊長機が発光し全周囲黄色球体バリアが張られ前鬼後鬼が吹き飛ばされる。二鬼のパワーならバリアなんてお構いなしに砕き壊すだろうと思っていたが、隊長機だけに強力なバリアを張れるのだな。
「くははははっ♪ちょっと待て~い!可愛い部下共に危害を加える事は俺様が許さ、どわっ!!」
突如、頭上から笑い声が聞こえてきたかと思うとその機体は大地へと激突、吹き上がった土煙が落ち着くと、落下地点には人型の穴が出来ていた。
「あ、危なかった。何もせずにクリアさせるところだった。」
穴から這い出てきたのは緑軍の増援機だろうか、翅無しの機体だが、ララベル達の機体に比べると見るからに上位のAQAだと思える。
いったい何処から来たんだ?翅も無いのに上空から落ちてきたのか?空を見上げても戦艦らしき物は飛んでいない、イベントシーンかと思ったがいつもと違って機体を自由に動かせる。どうやらイベントではなさそうだ。
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【グリムドゥーナ騎士団所属】
パイロット:ライム 操縦レベル:39
AQA:ライム・ライト(ライム専用機) 素体レベル:88 装甲ランク:10(悪属性)
称号:師匠 グリムドゥーナ騎士団大隊長 真の悪 伝説の耳長族
素体能力値:全能力+825
専用機補正:幸運力+2000 機体スキル【自己再生】、【急速修繕】、【自然回復】、【自動修復】、【完全復活】、【因果転生】
最大攻撃力:4530(965)
最大防御力:6462(972)
最大回避力:5238(973)
最大命中力:4811(971)
最大脳波力:4675(980)
最大耐久力:6525(990)
最大精神力:5105(990)
最大幸運力:6601(961)
最大機動力:3725
※括弧内の数字はパイロット能力
機体スキル:【暗視】、【明視】、【洞察】、【察知】、【感知】、【看破】、【俊敏】、【整備】、【握撃】、【不屈】、【忍耐】、【奇襲】、【襲撃】、【隠蔽】、
【特攻】、【投擲】、【登攀】、【幻影】、【分身】、【夢幻】、【体術】、【硬石】、【波状】、【撤退】、【逃亡】、【窃盗】、【解毒】、【切断】、【竹槍】、
【財貨】、【財宝】、【月光】、【忘却】、【帰還】、【千変万化】、【等位】、【永続】、【無限魔力】、【不老不死】、【無色呪】、【魔零呪】、【定律】、
【絶対契約】
戦闘スキル:【月姫輝夜】、【月球障壁】、【輝夜召喚】、【竹林召喚】、【竹林迷宮】、【光竹転送】、【攻勢破竹】、【空竹割】、
【筍乱舞】、【竹牢】、【爆竹】
リミットブレイクスキル:|【竹出其地暮全忘月帰】《たけよりいでてそのちでくらすもすべてをわすれつきへとかえる》
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増援機の情報が表示される。
どういう事だ?敵機情報に名前やレベルだけではなく能力値やスキルまで表示されている。ララベル機の情報を再度見てもパイロットネーム、素体レベル、AQAの機種とランクしか表示されない。増援機だけが特殊なのか?
また、得られた情報量にも驚いたが、相手の能力値の高さにも驚かされた。
しかもララベル達と同じ様にNPC表示がない、ということはプレイヤーなのだろうか?
「俺は黒軍のオヅヌ、君もゲームプレイヤーなのか?それにしては随分とレベルが高い様だが…」
「いいや、俺様はプレイヤーでは無いが、ノンプレイヤーでも無い、言うなればAMIDAゲームのウイルスみたいなもんだな。そう言うお前さんの方こそ高レベルじゃないか、まあ原因は分かっちゃいるけどね」
どうやら互いの情報は筒抜けの様だ。マイナス幸運値の事も知ってる様だし、PCでもなければNPCでもない、AMIDAゲームの一つであるリミットブレイクオンラインに巣食うウイルスていうのは本当か、…そのウイルスが緑軍の中に居て何をしようとしているんだろう?
「そのウイルスさんはこのゲームを、それともAMIDA本体を壊すつもりなのか?それは寿命を求める全プレイヤーを敵に回す事になるぞ」
「この世界を壊すつもりは今のところないな、何れは破壊する事になるかも知れんが、俺にとってはどちらでも良い事だ。
どのみち俺様は”悪”だからな、いつの時代でも敵対対象。お前さんが敵になるなら歓迎するぜ。好きなだけかかって来れば良い」
通信画面にはライムの顔も表示されている。不敵な笑みを浮かべるエルフの青年、エルフだけあって眉目秀麗、耳が長く、緑色の目と髪、長髪を青いリボンで括って垂らしている。軍服はララベル達と違って緑ではなく青が基調色で随所に金の刺繍が施されている。
「俺だけじゃない、自称”悪”のウイルスさんが守ろうとしている彼女達もプレイヤーなんだ。当然ながら寿命を狙ってる。そんな彼女達も敵になるんだぞ」
「ああ、部下共が敵になれるレベルになったなら大したもんだ。いずれは俺様の寝首を搔きに来てくれる事を楽しみにしている。だが、今は俺様の部下だ。部下の面倒は親分である俺様が見ないとな」
ライムのAQAライム・ライトが右腕を上げ、手の平を天にかざすと複数の黒球が緑軍AQAに向け放たれる。急速に肥大しながら黒球はAWと交戦中の機体も、既に撃破され消失した機体であろうとも、お構いなしに全ての機体を包み込んだ。
黒球に内包された機体だが、黒球の一部が淡く発光し、三日月、半月、満月へと月が満ちてゆくかの様に光が増えて行く。発光部分から薄らとではあるが中の様子が見て取れ、機体が徐々に修繕されているのが窺えた。
黒球が満月になれば修繕完了という訳か…。
敵軍が全快する前にケントツカムイの封印を解除し、ミッションクリアを目指すか、それとも戦って敵機全滅を狙うか…。どちらにせよ勝機は薄いな。
こんな時、トウマなら戦うだろうか?サーシャ隊長なら…両方だな、封印解除した上で敵機全滅、一挙両得を目指すはずだ。
俺は無言で武器を構え、敵意を示す。
「良いねえ、こっちにも漲る程の戦る気が伝わってくるぞ」
ライムも迎え撃つ態勢をとる。緑軍なのに翅無しのAQAが手に持つは竹槍…竹槍?
数本の竹を束ねて一括りにした槍だ。ロボットの世界で竹槍で戦おうというのか?それは世界大戦を彷彿とさせる無謀さだぞ!
こちらを侮っているのか、それとも一見、竹槍に見えてランク相当の性能を有するユニーク武器なのか?
「弱い者虐めは嫌いだが、圧倒的勝利は大好物。さあ、けちょんけちょんに倒してやるから、さっさと掛かってきな」
ライムの言っていることを真に受けるなら手加減する為に竹槍を使うのでは無さそうだ。
此方にとっては有難い事に、今では殆どが黒球から満月球へと変わった修繕済みであろうAQAが球から出てこない。
つまりは、ライムと俺の一騎打ち、いや、AWやASを考慮すると先程の戦闘とは立場が逆の一対多数で戦う事になる。
勝機を見出すには連携が肝心になるだろう、先ずは【AW】黒飛鬼四機をライム機の四方に飛ばし、遠距離から牽制攻撃をさせる。
「ほい!」
ライム機が竹槍を一振りすると周囲の地面から竹が急速に生え伸び、黒飛鬼の光弾を防いだ。
「もう一つおまけに、ほい!」
更に、もう一振りすれば、飛翔する黒飛鬼の真下から竹が次々と伸び、危うく竹で突き落とされそうになる。
「それ、お前らにもくれてやる。ほい、ほい、ほい!」
ライム機が二度ほど竹槍を振るい、最後に竹槍を地面に突き刺すと、竹槍の先端から続々と竹が生えてくる。まるで竹の津波、いや竹の壁が押し寄せるかの様だ。
戦金後鬼は巨大斧で、刻銀前鬼は己の爪で迫りくる竹津波を横一文字に切り裂き難を逃れたが、【AS】黒護鬼では為す術もなく幾百もの竹に突き上げられ彼方へと弾き飛ばされていく。
俺は【瞬歩】で緊急回避、一気にケントツカムイの動きを封じている巨木まで跳び魔機獣封印の強化符を【金棒】極楽大往生で打ち破る。
その瞬間、ピクリとも動けなかったケントツカムイの封印が解け、迫りくる竹壁を十文字槍で薙ぎ払った。
確認できたのはそこまでで、周りは竹壁に囲まれてしまい、視界が効かない。
封印は解いてもイベントは発生せず、ミッションクリアのインフォメーションも無い。
マップ画面に表示されているのは【特殊AS】の刻銀前鬼と戦金後鬼、それにケントツカムイ、上空には四機の黒飛鬼、かなり離れて二機の黒護鬼が居る。
敵を示すマーカーは表示されていない。機体スキルの【隠蔽】なのだろうか、ライム機だけでなく、復活しつつあったララベル達や主力部隊のマーカーすら消えているのだ。
戦場から立ち去ってくれていれば助かるんだけどな。
そんな甘い考えを打ち消すかのように、機体に衝撃が走る。どうやら背後から攻撃を受けた様だ。
足元に竹槍が落ちている所を見ると、竹槍を投げてきたのだろう、だが後部装甲にダメージは無い、やっぱりロボット相手に竹槍じゃ武器にならないよな。
機体に当てられた際、衝撃はあるけどダメージにはならない、転がされたり竹に弾かれたりしてもさしたるダメージは受けないはずだ。
だが、竹壁の攻撃範囲は広く、マップ画面で確認すると【AS】黒護鬼は竹壁に呑まれた後、数キロ先の地点まで運ばれてしまった様だ。
こちらに戻るように黒護鬼へ指示を飛ばすが、結界によってか、指揮範囲外だからなのか、機体スキル【遠隔】を使用していても黒護鬼は微動だにしない。
ああ、連携が大事だと分かっていても上手な戦いが出来ないもどかしさよ。
兎に角、前鬼、後鬼と合流しないと、このままでは各個撃破されて御仕舞だ。集合場所はケントツカムイの居る場所で良いかな。
両鬼に指示を出し、俺も移動を開始する。
【黒鬼門】から戦斧を取り出し、竹を伐採しながら進むが、一向に合流できないでいた。
マップで確認すると誰も移動開始位置から動いていない、これは…確か戦闘スキルにあった【竹林迷宮】ってやつか?だとすると先程からライムの術中に嵌まりっ放しだな。
迷路外の上空へと多段ジャンプで出ようにも届かず、枝葉が邪魔で【瞬歩】が使えない、いったい何十メートルまで伸びてるんだ?
進むもダメ、上もダメなら下か…それとも燃やしてみるか?竹って燃え易かったっけ?
例え火に囲まれてもAQAの中なら大丈夫だろう、致命傷を負うダメージを受けるとも思えない、試してみるか?
思案していると前方の竹竿の一部が光り、そこから数本の竹槍が飛び出してくる。
カナベラルと極楽大往生で飛来する竹槍を打ち払う。
金属製のAQAにとっては竹槍なんて子供のオモチャに等しい、如何に鋭く尖っていようともAQAの装甲に傷を付ける事は出来ない筈だ。
今度は右側から竹槍が飛んでくる。同様に迎撃したが、矢継ぎ早に後方から次弾の竹槍が飛来する。
次から次へと襲い来る竹槍群だが、未だにダメージはゼロ、足元に竹槍の山が積み上がっていく。
足元に転がる竹槍に脚を取られ、滑って転ぶのを狙っているのか?
転倒の恐れが出る前に竹槍の残骸から抜け出そうとしたその時、周囲の竹林全部が光り出し、光った部分から数多の竹槍が飛来する。
更に、叩き落とした竹槍までもが光り、そこからも竹槍が突き出てきたのだ。
視界を埋め尽くす程の竹槍群、到底、全てを捌き切れる筈もなく、串刺しには成らないものの竹に埋もれる形になり、容易には動けなくなってしまう。
当初と変わらずノーダメージではあるが、未だに竹の光りは収まらず、機体の動きを妨げている竹槍も光り始め、竹槍が次々と生え出す。
竹の光が収まる頃には陽光が入り込む隙間すらない程、竹槍に埋め尽くされていた。
竹に圧迫されている左腕を強引に振るって戦闘スキル【黒鬼極歩爪】で竹牢に風穴を穿つが、瞬く間に竹が生え、空いた穴を埋めていく。
なるほど、これが戦闘スキル【竹牢】だな。
スキル名を見ただけなら竹の牢屋なんてたかが知れてると思ってしまうが、実際に受けてみれば、なんと堅牢であることか…。
機体スキル【消去】を使用しても効果は無い、【属性変化】で武器に炎を纏わせても燃えた後から
マップ画面では前鬼も後鬼も、ケントツカムイでさえも動いていない、俺と同様に竹牢に囚われたのだろうか?
いや、マップ画面を当てにしない方が良いだろう、機体を移動させたにも係わらずマップ表示が連動していなかった。これは竹林による迷宮化が成されてマップとのリンク障害が発生しているか、相手にマップ表示を改変されているかも知れないからだ。
だとすればタイムアップの無いこのステージにずっと居る羽目になるのか?
ミッション失敗によるリスクは高いが、皆を待たせ過ぎるのは避けたい。ここは自爆行動も考えておくべきかもな。
闇雲に動いてエネルギー切れを狙うか?
白旗上げて降参するか?
自爆ボタンてあったっけ?
「おいおい、もう終わりか?」
思案しているとライムから通信が入った。
「正直、手詰まりだ。諸手を挙げて降参したいところだな」
「わかった。身包み剥いだら解放してやるよ」
言うが早いか、竹牢が赤く発光し始め、数秒後に何千何万もの竹が一斉に爆発した。
警報装置が一斉に鳴り響く。
全ての装甲が破壊され素体を曝け出し膝をつく、素体の耐久力も残りわずか。ライムの宣言通り、身包みを剥がされたわけだ。
竹牢から解放され周囲を見渡すと、少し離れた場所に刻銀前鬼、戦金後鬼、ケントツカムイが倒れ伏している。
三機とも両肩、両手足を竹槍に貫かれ地面に縫い付けられた状態で拘束されていた。
竹槍…いや、竹の形状をした金属製の杭だな。その色は緑色ではなく鉄錆色だ。
【AS】黒護鬼と【AW】黒飛鬼は既に撃墜されたようで、モニターに使用不可の表示がでている。
「召喚機獣は封印するとして、戦利品で使えそうな物はないか?」
極楽大往生を拾ったライム機だが、一瞥すると興味なさ気に投げ捨ててしまう。
「おっ!このマフラーは良いんじゃない?白黒の虎柄は地味だが染め直せば使えるな」
カナベラルを剥ぎ取り、自機に装着するライム。
プレグナル・オウガは足蹴にされて地面に這い蹲らせられる。
屈辱だが、勝者が敗者から何かを奪うのは当然と言える。それがゲームってものだ。
…俺は敗者だ。負けは認めるが何もせずに散るよりは、せめて一矢報いてから散る方が良い。
このライムという男は隙を見せている様でも実はこちらの奇襲を誘っている素振りがある。あえて誘いに乗って油断してくれたら勝機を見出せる筈だ。
素体のままで使える戦闘スキルはどれも威力がかなり落ちる。機体スキルは使用可能なものと使用不可のものがある。
使うべき機体スキルだと、やはり【瞬歩】だな。
うつ伏せ状態から【瞬歩】でライム機の背後に躍り出ると、最後の抵抗を試み、背部装甲に爪を突き立てる。
バキン!
AQAライム・ライトの回し蹴りで、こちらの爪が蹴り砕かれた。
やはり不意打ちを読まれていた様だ。
続いて牙での咬みつきも、ライム機の右手で頬を抑えられ左右の牙が握り潰されてしまう。
「通じるかどうかは別として、隙を狙うのは高評価だ」
ここだ!狙いの一撃、緑眼から【翠虎光線】を放つ。
「おっ!」
頭部装甲がある時と違い低威力の【翠虎光線】だったが、かすり傷程度にはダメージを与えた様だ。
「隙も狙ったが、油断も誘ったつもりだ。そこも評価してくれるか?」
「ああ、勿論評価に値する一手だった」
ライム機の頭部装甲は光線の熱で表面装甲が溶けて煙が出ていたのに、瞬く間に、まるで何事も無かったかのように修復されていた。
少しでも体勢を崩せていたなら、そこから連撃を畳み込むつもりだったが、全く動じてくれなかった。
寧ろ最後の一撃は態と受けてくれた様な気がしてならない。
「じゃあ、止めを刺すぞ」
「ああ、やってくれ」
ライム機の手刀が素体のコアに狙いを定め突き刺そうとしたが、何かを察したのか寸でのところで動きを止める。
「ちっ!!また邪魔しに来やがった」
自機のコアとライム機の指先との間に霞みがかった黒い粒子が丸板の形状で浮いていた。
「私の同胞にそれ以上の狼藉は許しませんよ♪」
素体の頬を握り掴んでいたライム機の右手が放れ、機体の自由が戻った。
処刑執行から助けてくれたであろう通信機から聞こえた声の主を探すが見当たらない。
だが、先程まで快晴だったのに、急速に雲が天を覆い、周囲に霧が立ち込める。
「同意の上で止めを刺すんだ。文句を言われる筋合いはねえぞ」
「あらあら♪ですが、敗者が勝者を討つのは頂けませんね♪」
どういう事だ?俺が敗者でライムが勝者なのに、まるで逆の言い様だぞ。
「この状態を見てみろよ!俺が勝者で、こいつが敗者。誰がどう見たって俺の勝ちだと言うに決まってる!!」
ライムも声の主を探っているのか、キョロキョロしながら声を張り上げている。
「ふふ♪私が見る限りではライムさんの負けですよ♪惜しいところまで行っていたのですがね♪油断したのが悪かったですね♪」
自機の前、ライム機の背後の霧が一部分だけ晴れ、ようやく声の主が姿を現す。それは赤いラインに黒を基調としたAQA、真紅の眼、肩には眼と同じ炎の輪の中に真紅の蝙蝠があしらわれた記章が付いており、武器は所持しておらず、悠然と佇んでいる。
黒軍のAQAに見えるが、どこか気品を備える機体だ。
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【グリムドゥーナ騎士団所属】
パイロット:オウガデス 操縦レベル:かなり上手い♪
AQA:ガメオヴェア(オウガデス専用機) 素体レベル:天井知らず♪ 装甲ランク:極めて高位♪(喜属性♪)
称号:笑顔仮面 師匠 噺家 元黒軍スタルト騎士団所属 グリムドゥーナ騎士団師団長
素体能力値:無限の可能性♪
専用機補正:機体スキル【大器晩成】♪
最大攻撃力:無限大♪(内緒♪)
最大防御力:無限大♪(秘密♪)
最大回避力:無限大♪(隠蔽♪)
最大命中力:無限大♪(機密♪)
最大脳波力:無限大♪(極秘♪)
最大耐久力:無限大♪(丸秘♪)
最大精神力:無限大♪(隠し事♪)
最大幸運力:無限大♪(秘め事♪)
最大機動力:限界突破の限界♪
※括弧内の数字は教えてあげない♪
機体スキル:多数♪
戦闘スキル:数多♪
リミットブレイクスキル:【遊戯終了】
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気品はあるが、その能力値はふざけている。
いや、音符マークが付いてる箇所はデータを伏せているのだろう。
データの改竄スキルでも持っているのかな?
そんなスキルがあるのなら、ライムも同様の事をしていると思える。
態々全データを見せるのは戦意を挫くつもりなのかも知れない、実際はもっと低いレベルなのかもな。
いや、その技量は表示データと違わぬ実力を持っているのは経験済みだ。単に隠し事が嫌いなだけとも考えられる。
「オウガデス、俺の負けだったと説明できるんだろうな?」
「勿論♪ライムさんも納得がいく様、証明して見せますよ♪」




