第六十五話 クロスイベント オヅヌ+ケントツカムイVS緑軍グリムドゥーナ騎士団+耳長騎士と笑顔仮面【3】
俺を呼ぶ不思議な力に導かれゲートを抜けた先は森の中、そして敵AQA中隊の真ん前だった。
直ぐに【洞察】を発動、相手情報を探る。
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【グリムドゥーナ騎士団所属】
パイロットネーム:アルテア
素体レベル:24 小隊長
AQA:クララ・ランス RANK2
パイロットネーム:サラサ
素体レベル:19
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:マーシャ
素体レベル:18
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:ミレイ
素体レベル:18
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:ミラ
素体レベル:18
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:ララベル
素体レベル:22 小隊長
AQA:クララ・ランス RANK2
パイロットネーム:ミーシア
素体レベル:20
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:リィン
素体レベル:19
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:ステラ
素体レベル:19
AQA:クララス RANK2
パイロットネーム:セレナ
素体レベル:18
AQA:クララス RANK2
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AQAの数は十機、機体色はグリーン系、どうやら此処は緑軍の支配地域のようだ。
全員がRANK2のAQA、赤軍や青軍と違って数は多いが性能は低いと言ったところか、ステージマップには非表示地域が多く、どこに魔機獣が封印されているのか分からない。いや、現在地の他に大量のマーカーが表示され動いている。どうやら多くのAQAが移動しているようだ。
ここの敵を倒したら向かってみよう。
いつもと違ってイベントシーンに切り替わらず自由に動けるのだが、眼前の敵は棒状の武器を構え此方を警戒する素振りは見せているものの、躊躇しているのか攻撃はしてこない。
通信を交わしている感じが見受けられ、電波探知には引っ掛かるが内容は聞けない。
何かおかしい、もう一度敵の情報を確認してみた。
「あっ! NPC表示がない、もしかしてプレイヤーなのか?」
通信回線は開きっぱなしなので俺のつぶやきが聞こえたのだろう、先頭の隊長機は器用にもビクッと機体を震わせ、動揺した様子があからさまに覗える。
緑軍ってことは四組だよな。
う~ん、お嬢様クラスが相手とはやり辛いな。
「驚いたわ。まさか敵プレイヤーのAQAが降ってくるとはね。私はアルテア、この部隊の隊長よ。貴方はどちら様かしら?」
アルテアが名乗ると後方にいる部隊の一部がざわつく、もう一機の隊長機が隊員に制止を促している。う~ん、部隊内で派閥でもあるのだろうか? サーシャ中隊とは違って一枚岩ではないのかもな。
「俺は黒軍リブノシュタット騎士団サーシャ中隊所属のオヅヌだ。よろしく」
プレイヤーの操縦するAQAを食ったらスキルは得られるのだろうか? 疑問を抱くが格下だと栄養にならない可能性もある。
ここで戦わずに相手から情報を聞き出せれば、少しはトウマ達の役に立てるだろうか?
「他軍のプレイヤーに会ったことは無いけど、貴方もミッション中なのよね? 他の仲間は何処?」
相手も状況は同じか、戦闘態勢ではあるが直ぐに攻撃してこないってことは、勝利条件は敵機の全滅じゃないって事だ。
こちらの勝利条件も敵機の全滅ではなく、精霊結界の解除と魔機獣封印の解除だから必ずしも戦う必要はない。
必要はないが、かなりの確率で戦う事にはなるだろう……。
「変なゲートを通ったら部隊と逸れてしまったみたいだ。そちらのミッションの邪魔にならないのなら戦いたくないんだが、どうだろう?」
「では、先に貴方のミッション内容を教えてくださるかしら」
どうする。素直に言うべきか、無難なミッションだと偽るか……。
「精霊結界の解除だ。自軍の元に戻るゲートを探す為に精霊結界を解除しなくてはならないようだ。そちらは?」
嘘ではないが全てでもない、魔機獣封印の阻止は伏せておく。
「……良いでしょう、結界解除の手助けくらいはやってあげるわ。ですが、少しでも不審な素振りを見せたなら八つ裂きにしますわよ!」
先頭の隊長機が持つ棒から細く尖った剣が飛び出す。
レイピアかな、棒状から武器に変化するというわけだ。
ただ、他のAQAの棒には先端に赤い炎が灯っているし、先頭のAQAは盾持ちだが他は赤い玉を持っているので、レイピアは隊長機だけの武器なのかもしれない。
「ところで、貴方は素手のようですけど、武器は持たないのかしら?」
ああ、そうか、武器類は左肩にある門型紋機章【鬼の証・黒鬼門】から取り出すから武器は所持してないように見えているんだ。
「いや、武器はここから取り出すんだ」
俺は門型紋機章を開き、【金棒】閻魔大往生を取り出す。
金棒だけが武器ではないが、ここでも手の内を曝け出すのは控えた。
「黒軍のAQAには変わった機能があるのね。まあいいわ。今後、その武器の取り出しは禁止します」
「……わかった」
いざとなったら取り出すが、例え十機が相手でもRANK2程度なら【装具】カナベラルだけで十分だろう。
聞けば彼女たちも精霊結界を解除しまわっているらしく、彼女たちが本隊に合流するまで、俺はゲートを見つけるまでは共に戦うという事で合意する。
緑軍は全機飛行が可能らしく、これはもの凄いアドヴァンテージである。RANK5であるにも係わらず俺のプレグナル・オウガは飛べない。
彼女達は飛び、俺は樹木を蹴散らしながらガション、ガションと森の中を走る。
「本当に方向はこちらで合ってますの?」
「ああ、ゲートに導かれた時と同じ不思議な力を感じるんだ。それに君たちと同じ波長をしたAQAの気配も感じる」
直ぐに戦わなくて良かった。彼女たちがいなければ精霊結界の解除は出来なかったかも知れない、彼女たちにしても俺がいなければ複数ある精霊結界を闇雲に解除して廻らねばならず。味方との合流時刻に間に合わなかった可能性もあったらしい。
進行方向から不思議な力やAQAの気配を感じているのは嘘じゃないが、正直なところ、俺と彼女たちとの機体性能の差だろうが、モニター画面のステージマップには目的地で交戦中の部隊を示すマーカーが表示されている。
騙すのは気が引けるが、代わりに幾つかの情報を道すがら得る事ができた。
1.彼女たちは現在ミッション19である。★ミッションの存在は知らなさそうなので☆ミッションだろうが、かなり進んでいることに驚かされた。
2.【AW】、【AS】はまだ配備されていない。主力部隊には配備されているので存在は知っているそうだ。
3.【母艦】を所持していない。緑軍の☆ミッションでは母艦登録はまだ先の様である。ミッション報酬で入手が可能だという噂があるらしい。
4.左手のオーブで精霊力を貯め、右手のワンドで精霊魔法を行使する。緑軍は敏捷性のある魔法使いといったところだな。
5.素体レベルは妖精、妖魔などの妖種の敵を倒すか、採取ポイントで精霊石を入手すれば上がる。道中の採取ポイントで精霊石を入手していた。やはり食べるんじゃないんだ。
6.彼女たちは同じサーバーであるが、小隊のまま中隊を組んでいない。仲が悪いだけでなく、中隊になれば小隊長のどちらかが隊長機に乗れなくなるからだそうだ。中隊長権限や隊長機の性能も上がるし、副隊長機だってあるのにもったいない。
他にポイントや獲得ソウル量を聞きたかったが、テストの点数を見せ合うのを避けるように、気恥ずかしくて互いの情報は言えず終いだ。
彼女たちの部隊には【洞察】系のスキルを持つ者は居ないみたいだが、俺がまだミッション5の途中だと知ると、油断か、それとも憐れんでくれたのか、プレグナル・オウガのRANKを聞かれる事はなかった。もちろん★ミッションの事は伏せている。
AQA全機が地上に降り、精霊結界により木々にしか見えない景色に目をやる。
「この精霊結界を解けば互いの目的地が出現するだろう」
「そう、案内ご苦労様」
アルテアの労いの言葉とは裏腹に十のワンドがプレグナル・オウガに向けられる。
「いいのか? 俺が嘘を言っているかもしれないんだぞ」
「いいえ、微弱ではあるけど本隊からの識別信号を受信したわ。貴方の言っている事は本当だった」
「じゃあ、撃てよ。ここまで連れてきてくれたお礼に一度だけなら抵抗せずに受けてやる。だが、俺が耐えきれたなら容赦はしない」
内心ではビビりながら、俺は彼女たちに背を向ける。恐らくRANK2のAQAでは大したダメージは受けないはずだ。精霊魔法の威力を知らないから確証はないけど。
「……」
予想通り攻撃はされなかった。無抵抗で背を向ける相手に容赦なく攻撃するのは俺でも躊躇われるからだ。お嬢様たちなら尚更である。
これが、男連中なら撃つ奴もいるだろう、うちの隊でいえばナック副隊長やキタがそうだ……いや、女性にも例外が居た。サーシャ隊長なら躊躇どころか情け容赦ない攻撃をする筈だ。
「…今回だけは見逃してあげるわ。私たちが結界を解いたら直ぐにゲートを潜りなさい、まあ、本隊は貴方を見逃しはしないでしょうけど」
「いや、助かるよ」
その本隊が無事ならばの話だが……モニター表示には緑軍を示すマーカーの数がかなり減っていた。
交戦中の魔機獣にやられたのだろう、当初は数え切れない程のマーカー群だったのに、今では彼女たちと同数程度になっている。
急がないと合流すべき本隊は全滅するかもな。
「六種結界【神火星】解除開始」
三箇所目の結界は六機で行っている。俺が来るまでに幾つか解除したそうなので、定かではないが徐々に結界を解くのに必要な機数が増えているようだ。ここが目的地だからか、解く度に結界が強化されるのかは分からないが、人数が足りなければミッション失敗になるんだろうな。☆ミッションとはいえ、ミッション19ともなると油断はできないといったところか、まあ★ミッションに比べれば随分と優しいが……。
「「「解除完了」」」
精霊結界が解かれると、景色が一変する。
その光景は俺にとっては予想通りの、彼女たちにとっては予想外の状況が目に飛び込んだ。
緑軍AQAの残骸がそこかしこに散らばり、戦闘継続中のAQAも満身創痍といった様相を呈していた。
「残り八機か、結構持ちこたえているな」
そんな緑軍本隊のAQAが取り囲んでいるのは、鎧兜を装着した人型イノシシだ。
「……ああ、猪武者ってことか……。」




