第六十四話 クロスイベント オヅヌ+ケントツカムイVS緑軍グリムドゥーナ騎士団+耳長騎士と笑顔仮面【2】
「ララベル、いったい何をしに来たのかしら?」
予想通りの言われようにララベルは苦笑いを浮かべる。
「友軍が苦戦しているとあらば助けに来るのが当然でしょ」
「どこを見て苦戦してるって言うのよ!」
大声でララベルに文句を言いながらもアルテア小隊を率いる隊長のアルテアは、レイピア型ワンドを黄軍AQAの頭部に突き刺し止めの一撃を加える。
「ふん!こんな奴らなんて楽勝で圧勝、完全勝利間違いなしよ」
アルテアのAQAはララベルと同じ隊長機のクララ・ランスであるが、所持武器は異なり精霊魔法の威力は落ちるがワンドの先に刺突に適した刃が付いたレイピアワンドと精霊力蓄積量は落ちるが防御も可能なシールドオーブを備えた接近戦仕様になっている。
緑軍の主な陣形は遠距離砲撃型陣形なのだが、アルテア小隊は変則攻撃型陣形の前衛1の後衛4であり、前衛の一機は多大な危険にさらされるが、他の四機は攻撃や前衛の補助に専念しやすく早期に決着する事が多い。
ララベル小隊がアルテア小隊と黄軍との戦闘を察知した時点では緑軍五機対黄軍十機の不利な状況であったが、駆け付けた時には既に二機を撃破し終え、増援は不要とばかりにララベルの眼前で三機目を撃破してしまった。
アルテアはプレイヤー技能、スキル構成、操縦レベル、素体レベル、レア装備、そのどれもが非凡であり他者より秀でているが、中でも秀逸なのはレア機体スキルの【危険予知】と【舞踏回避】である。死角からの攻撃であろうと予め察知するスキルと、予知に合わせ舞い踊るように攻撃を回避するスキルの組み合わせは、十機の猛攻を一機で凌ぐ事を可能としている。
「確かに手助けはいらなさそうね。ララベル小隊、作戦変更よ。美味しいところを頂きましょう」
「ちょ、ちょっと何を勝手なことしてんのよ! 私達の獲物に手を出さないで!!」
ララベル小隊の風属性魔法によって起こる嵐撃が縦横無尽に戦場を飛び交う。
「もう!広範囲魔法は止めなさい!」
如何に【危険予知】による攻撃回避が可能でも避けきれないものがある。回避速度以上の攻撃速度であったり、必中攻撃、スキルや魔法使用後の隙などもそうだが、広範囲攻撃もその一つに数えられる。アルテアは範囲魔法を見事に回避し続けてはいるもののララベルへの怒りを募らせていた。
結局、ララベル小隊が五機撃墜、アルテア小隊も五機撃墜で、仲良く戦果を分け合う形となり、手柄を横取りされたと怒り心頭のアルテアはララベルへ猛抗議に出るが、温厚な隊員達がアルテアを宥め、ここからはアルテア小隊主導の下、ミッションを進めることを条件に渋々ながら皆の説得に応じる。
「では早速ララベル小隊の皆さんに、この精霊結界を解いてもらおうじゃありませんの」
「考えなしに解除するのは危険じゃないかしら?」
言っても無駄とは知りつつも、ララベルはアルテアへ聞き返す。
「あら、即断即決即実行はライム師匠の教えでしょ、つべこべ言わずに早くして頂戴」
アルテアからは見えないだろうが、やれやれといった感じで頷くララベル、AQAの手振りで隊員たちに結界を解くと告げる。
「三種結界【夢想蓮華】解除開始」
【蜃気楼】に比べ、やや開封難易度の高い結界【夢想蓮華】を苦も無く解除するララベル小隊、攻略時間の短縮を考えればアルテア小隊が行うよりも遥かに効率が良い。無謀を友とするアルテアだが、部隊を率いる者としての采配は心得ていると言えよう。
「はい、解除完了」
「ご苦労様、あなた達は後方に下がっていいわよ」
高飛車に言い放つとアルテアは先へとAQAを進ませる。
「何ですか!? 同格の隊長に向かってあの態度は!」
ミーシアは激怒するが、直ぐにララベルが嗜める。
「態度は置いておきましょ、今回は見習うべきところは見習うミッションだと思って付いていくのよ」
「そんなところがあれば、ですけどね」
「そうですよ、反面教師にするところは多そうですけど」
「ふふふ、そんなところも学んでちょうだい」
「「「「了解」」」」
余裕があったのは此処までで、先行するアルテアの頭上に突如、異空間のゲートが開き、中から黒いAQAが飛び出し落ちてきたのだ。
「黒のAQA? 初めて見るわね」
アルテアは精霊結界が解かれた為に現れた隠しボスだと判断した。単機なら多少強くても勝てると侮ったのは無理もないことで、過去に隠しボスと二度程戦い、そのどちらとの戦闘でもほぼ無傷で勝利した経験があるからだ。
とは言え、アルテア単独で戦い、手柄を独占しようとは考えない、あくまでも彼女は効率を重視する。
「みんな、いつも通りに戦うわよ。……そうそう、ララベル小隊の皆さんも参加して宜しくてよ、ただし!範囲攻撃は禁止だからね」
「「「「了解です」」」」
「はい、はい」
「「「「……」」」」




