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Limit Break Online  作者: 円連
第三章:出撃、サーシャ小隊
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第五十九話 エクストラミッション 弱肉強食戦【4】

 通信姉さんがひそひそ声で教えてくれる。

「ここだけの話ですけどね、ゴレイエムは採用が内定されているAQAなんですよ。」

「決まっているなら、これは何の為のテストなんだ?」

「実はゴレイエムは対敵要塞特化型の大型AQAなんですよ、要塞撃破のテストは終了したのですが、対AQAでの戦闘データが必要なんです。多数対単機での戦闘データを採取しますので、今回はトウマさんへ支援機を付けますね。」


 通信姉さんの言った通り、基地から十二機のAQAが飛び出してきた。

 RANK2の量産型AQA『フェル・ハーピィ』が九機の他に、飛べないAQAリヴァイア・オーネ、AW(アクセントウェポン)が優秀なラミアル・ツウォー、高性能なグリフィアル・ツレイのテスト機体三機も戦闘支援してくれる様だ。


 十三対一か、それだけゴレイエムが強敵って事だよな。

「ヘイヘイ、トウマちゃ~ん、今度はお仲間だよん、宜しくね。」

「ダニーか?さっき戦ったのにまた出撃するんだ。」

「そうなのよね~、うちの上官は優秀なパイロットに休む暇は与えてくれないらしい、なまじ才能があるってのも考え物だな。」

 自画自賛もここまでくると清々しく感じるな。

「で、トウマ隊長、フォーメーションはどう組む?散解包囲するか、それとも一点集中でいくかい?」

 ん?しまったな、何も考えていない、どうすれば良いんだ?


「・・・ん~・・・。」


 ・・・そうだ、たしか作戦会議室でサーシャ隊長から戦略と戦術について教わったよな。

 正直、戦略は難しくて理解できなかった・・・。戦術は・・・え~っと、確か、適材適所と地形効果を考えて配置すれば良いとか教わったような気がする。・・・防衛線では此方の有利な状況に敵を誘い込み討つべし、だったっかな?

 隠れる場所が多く、防御効果の高い基地内で戦った方が良いんだろうな。


「とりあえず、ゴレイエムを基地まで誘導してから戦おうと思う、その後は自分の得意な戦法で戦ってくれ。」

「おいおい、相手は要塞攻略に秀でたAQAだぞ、明日は味方でも今回は敵だ。基地諸共遠慮なく攻撃してくるだろうから、基地の重要施設を破壊されたら隊長の評価が下がるんじゃないか?」

 ・・・そうか、そう言われれば、そうだよな。

「よし、俺が囮になって湖の方向へ誘導する。他のAQAは湖付近の得意な場所で待ち伏せして、横合いから攻撃してくれ。」


「了解だ。リヴァイア・オーネは水中から、ラミアル・ツウォーは遠距離から、俺のグリフィアル・ツレイは上空から仕掛ける。フェル・ハーピィは側面からの一斉射撃を行う様に指示しておく、攻撃タイミングは任せるぞ。」

 ダニーの真面目な台詞に戸惑いつつも、俺の代わりに各隊員へ通達してくれるようだ。これは大変ありがたい。


 第一モニターに戦場マップと全AQAの配置場所、作戦行動予定が表示される。作戦タイプは散解包囲タイプとなっている。地形に合わせた配置なのだろう、隊長機は自由に各AQAの初期配置場所を変更できる様だが、今回はこのままで行こうと決めた。


 

 ピコーンとレーダー反応音が鳴り、モニター画面に敵機出現のマークが表示される。

「漸くお出でなすった。トウマ隊長、ひと暴れしちゃいましょうぜ~。」

「ああ、でも、なるべく撃墜されない様、慎重にな。」

「あいよ、隊長も無茶な行動は慎んでくれよな。・・・さて、どこぞに居る勝利の女神ちゃん、今度こそ俺にも微笑んでおくれよ~。」

 軽い口調に戻ったダニーが機体の高度を上げて行く、他のAQAもそれぞれの持ち場へと散って行った。

 第一モニターの行動方針に危険回避と表示される。俺の言葉ひとつで部隊の行動が決まるんだな、これは責任重大だ。




 まず俺が囮となるべくゴレイエムの出現場所へと向かう。

 間もなくして視認可能な場所まで飛んできたのだが、最初にゴレイエムの百メートルを超すであろう大きさに驚いた。しかも浮いている。百メートル超のゴレイエムの後ろに半分くらいの大きさのゴレイエムが二機、更にその半分の大きさのゴレイエムが二機続いて移動している。合計五機のゴレイエムは、AQAと言うより卵型の戦艦が浮遊しているかの様であり、メタリックブラックの卵が基地の方向へ実にゆっくりと移動していた。次いで、その動きの遅さにも驚かされる。あまりの移動の遅さに味方を呼んで、この場で戦った方が良いのではないだろうかとも思えた。

 ゴレイエムには手足も無いし、頭も無い、天辺付近に赤い目の様なものが二つあるだけのツルツルとした見た目をしている。武器類は内蔵されているのかも知れないが、あれでまともに戦えるのか甚だ疑問である。

 ステータスを調べてみると、先頭の大卵がRANK8ゴレイエム、中卵はRANK8ゴレイエム・アーム、小卵はRANK8ゴレイエム・フットであった。名前から察するに、どうやら後続の卵達は両腕と両足の様だ。戦闘になると合体するのだろうか?無駄とも思える機能だが、合体前に倒しておきたいと思った俺は、長距離からの先制攻撃を試みる。


「ロックオン完了、【ローズレイ】発射!」

 赤い光線は全ての標的に命中、五個の黒卵に横一文字の光線跡を残す。そして、引かれた光線の跡に沿って次々と爆発が起きた。

 これで倒せたとは思えないが、手応えはあった。どれくらいダメージを与えたのか気になるところだが果たして・・・。

 爆煙が晴れ、損傷個所を見てみるが、全く見当たらない、体表はツルッツルとして黒光りしている。


「・・・あれ?無傷なんだ。」

 ダメージを与えられない敵の出現に凄く驚かされた。

 どうしよう、勝てるかどうか分からなくなってきたぞ・・・。


 焦る気持ちを増長させるかのようにゴレイエムは進行方向を変え、此方の方へと向かってきた。

 囮役としては勤めを果たせそうだが、隊を率いる者にとっては不安な滑り出しである。

 動揺を押し殺し、俺は仲間の所へゴレイエムを引き連れようと踵を返す。俺はゴレイエムがノロノロと付いて来るものだと勘違いしていた。


パパーパラパー♪パパーパラパー♪パパー、パパー、パパーーー♪パパーパラン♪


 変なメロディーが流れると、五機のゴレイエムが合体を始めたのである。大黒卵の下部と小黒卵の天辺から蛇腹状の関節ジョイントが飛び出し接合する。二機の小黒卵の底部が展開され炎を噴き出す推進機となり、同様に大黒卵の左右へ中黒卵がドッキング、それぞれの中黒卵の先端部分が開き、五本の指を持つ両腕となった。


「ウォォォォー!」バシュ!


 雄叫びを上げるゴレイエムの眼から赤い光が放たれる。


 ローズレイ?

 反射的に回避行動をとり、寸前で極太の赤色光線を避ける事が出来たが、まさか相手も同じ攻撃をしてくるとは思ってもみなかった。

 それ以降の攻撃は無く、ジェット噴射で移動速度を上げたゴレイエムがこちらを追尾してくる。


 リヴァイア・サクトゥの半分にも満たないスピードではあるが、初見での徐行スピードに比べれば遥かにましだと思えた。


 予定していた襲撃地点まで無事に誘導できた。ここまでは順調だが、果たしてゴレイエムに包囲作戦が通用するのか不安を感じる。

 だが、やらなきゃならないのなら躊躇せずにやるべきだ。

「今だ、一斉攻撃!」

「あいよ、待ってました~!」

 合図と共に【螺旋飛龍】をゴレイエムへ撃ち放ったのを皮切りに、上空で待機していたダニーが軽快に了解の意を告げ、急降下するグリフィアル・ツレイのミサイルポットから大量のミサイルが発射される。それを追うように周囲に潜伏していたフェル・ハーピィが次々に姿を現しマシンガンを撃ち続ける。湖の中からは銛が飛び出し、遠距離にいるラミアル・ツウォーが操る四機のAW『フォラミア』が、ゴレイエムの背後から機銃を一斉掃射する。


「みんな、攻撃の手を休めず撃ちまくってくれ。」

「うっひょ~う、トウマ隊長は容赦しないねぇ、よっしゃ!それじゃあ一斉砲撃と洒落込みますか。」

 乗り気のダニーがAW『チェルン』を射出させ、更には炸裂弾と腰部に備え付けのブラスターカノンを爆煙立ち込める中へと撃ち込んだ。

 負けじと俺も戻ってきた【螺旋飛龍】を再度放ち、水龍双弾、赤色光線(ローズレイ)を同時発射する。

 ラミアル・ツウォーは胸部の光線砲から集束させた光線を二連射、リヴァイア・オーネは水中から水陸両用ライフルで射撃、フェル・ハーピィは変わらず物陰からマシンガンを連射させている。


 さっきはローズレイでダメージを与えられなかったが、今回は僅かながら損傷を与えている。何が違うのか考えていたらダニーが教えてくれた。

「ゴレイエムの表面装甲はビーム系の攻撃を無効にするようだな。だが、実弾系の攻撃で表面装甲を破壊した後ならビーム系の攻撃でも効果が望めそうだ。」


 なるほど、そういう事か、だったら皆には攻撃を続けて貰い、俺は近くで戦ってみるか。

「ダニー、実弾系の攻撃を続けてくれ、俺は接近戦を仕掛けてみる。」

「無茶しなさんなよ、トウマ隊長、あんたが倒れれば作戦は失敗、テストは即終了になるぜ。」


 失敗か、確かに勝利条件は敵機の全滅、敗北条件は自機の撃墜となっている。そしてその後には再出撃不可の文字が表示されていた。

 ・・・ん?もう一度挑戦って出来ないのか?アイテム『己の殻』を使用してのミッションだからなのかも知れないな。

 だが、そんな事は気にしてられない、どうせ無理無茶無駄を今までも、そしてこれからも繰り返すだろうから。


「無茶は承知の上だ。もし良かったらダニーも一緒に無茶しないか?」

「ははっ、トウマ隊長が女だったら喜んで無茶しますけどね。生憎、男からの誘いには乗らない主義でしてね。」

「それは残念だ。」

「まあ、死なない程度にはお付き合いしちゃいますよ。」


 結局、ダニーも接近戦を試みてくれるようで、ブラスターカノンを撃放ちつつ熱を帯びた六本の爪を伸ばし、ゴレイエムへと近付く。


 奇襲した際にはゴレイエムはされるがままであったが、そうそう何時までも攻撃を受け続ける訳はなく、要塞攻略兵器の肩書通り凶悪な攻撃で応戦する。ゴレイエム版ローズレイがAW『チェルン』、リヴァイア・サクトゥ、グリフィアル・ツレイ、フェル・ハーピィ三機の順に放たれた。


 これによりチェルンは撃墜、俺とダニーは回避し、フェル・ハーピィは三機共被弾する。

 続いて、距離を詰めるリヴァイア・サクトゥとグリフィアル・ツレイに向けてゴレイエムの右腕が振り下ろされ大地を叩きつけるが、これも何とか回避できた。落とされた巨大な右腕の質量により大地がひび割れ激しく揺れる。この振動により全フェル・ハーピィの動きが鈍ってしまう。

 ゴレイエムの頭頂部から背中までのハッチが開いてゆき、中から大量のミサイルが発射される。その数はグリフィアル・ツレイのミサイルポットの比で無く、数百発ものミサイル群が周囲のAQA目掛けて飛び交って行った。


 雨あられと降り注ぐミサイルにより起伏が破壊され平地に、更に着弾が続いて平地が窪地へと変わる。

 結果、このミサイル攻撃で二機のフェル・ハーピィが損傷し、四機が撃破されてしまう。


 更にゴレイエムは両腕を湖へと向けると掌から極大のレーザー光線を放ち、水中のリヴァイア・オーネ諸共、湖を消し飛ばした。

 俺も軽口を叩くダニーでさえも、一連の攻撃には黙らされてしまう。


「おいおい、何が対敵要塞特化型なんだよ、AQA相手でも充分に戦えるじゃないの、遣り過ぎって感じもするけどな!」

「確かにそうだが、それよりもゴレイエムの損傷箇所が塞がってきてないか?」

「なぬ!?」


 一斉攻撃により与えた筈の傷が徐々にではあるが治ってきている。

「てえへんだ、てえへんだ、こいつはてえへんだ・・・。」

 こんな状況でもまだ軽口が言えるんだなと、ダニーに感心しつつ、厄介なゴレイエムを倒す方法を考えるが直ぐには思いつかない。

 強敵を前に★ミッション1のテンザクチバクリュウを倒した時の、谷で挟んで鉄球を落とす作戦を思い出すが、ここにはそんな物は無い。

 あると言えばボコボコの大地に先程まで湖だった水溜まりだ。

 巨木や巨石などAQAを隠せるほどの地形は既になく、空を見上げれば・・・ん?晴天なのに一箇所だけ暗雲が立ち込めている場所がある。その雲は異様に黒く、稲光がこれでもかと荒れ狂っているのが見えた。


「閃いた!」

 この時、俺はゴレイエムを雷に感電させて倒す作戦を思いついたのだ。

 

 そう、あの雲の下でなら最大出力の【千柱天雷】で倒せるかもしれない。

「ダニー、ゴレイエムを誘導しながらあの雲に向かうぞ。」

「・・・なるほどね。へい隊長、合点承知!」


 俺達はゴレイエムから一旦離れ、雷雲へと誘う。

 こちらの被害は大きく、戦えるのはリヴァイア・サクトゥ、グリフィアル・ツレイ、無傷のラミアル・ツウォーと五機のフェル・ハーピィである。

 だが、グリフィアル・ツレイとラミアル・ツウォーの機体は思っていたよりもエネルギーの消耗が激しく、残りエネルギーは約半分、これじゃあ全力での長時間戦闘はできそうにない。

 

 ゴレイエムを誘導しながら機体の損傷度を確認していると第三モニターにリミットブレイクゲージが8%程度貯まっているのに気付いた。

 【博士の電子辞書】によるとリミットブレイクゲージが100%になればリミットブレイクスキルが使用可能になるようだ。

 だが、自軍が危機に瀕すればゲージが貯まるとしか記載されていない。

「ダニー、リミットブレイクゲージってどうすれば貯まるんだ?」

「リミットブレイクゲージ?なんだそれ。」

「ダニーでも知らないか、リミットブレイクスキルを使う為にはリミットブレイクゲージを貯めきらなくては成らないらしい。」

「リミットブレイクスキル!?」

「おっ、知っているのか?」

「ま、まあ、知っていると言えば知っているが、実際に見た事は無いな。そのスキルが使えるのは星王と呼ばれる星を治める力を持った者だけだ。例え星王の地位と力を持っていても必ず使えるとは限らないしな、それにアンダーク帝国にはリミットブレイクスキルを使える奴なんて居ない筈だ。」

「そうなのか?俺もオヅヌも持っているんだが、発動条件が良く分からないんだよな。」

「な、な、な、なんだと~!そのスキルがあればゴレイエムなんて一撃で沈められるんだぞ、うちの爺さんから聞いた話じゃ星すら砕く力があるって言うくらいだからな。」

 それなら尚更使ってみたくなってきたな。・・・う~ん、どうすればゲージが貯まるんだ?少しだけど実際にゲージは上がっているんだから、絶対に貯める方法がある筈なんだ・・・自機がダメージを受けたらゲージが上がるだけではなく、味方もダメージを受けたら上がるのだろうか?だったらサーシャ隊の時でもゲージは上がっていた筈だ・・・。


 ・・・考えた末の結論は『わからないから後回し』だ。

 俺の頭では答えは出せないが、オヅヌもリミットブレイクスキルがあるのだから、先にゲージ上昇条件を発見してくれる事に期待しておく。



 結局、スキルについては解らなかったが、追尾してくるゴレイエムの欠点は解った。

 ゴレイエムが高速移動状態になると攻撃してこない、つまり、逃げながらゴレイエムの射程外から射撃すれば一方的に攻撃できるのだ。

 だが、ゴレイエムの射程外となるとラミアル・ツウォーのAW『フォラミア』か、リヴァイア・サクトゥのローズレイと【螺旋飛龍】くらいであり、フォラミアは攻撃力不足、ローズレイは無効化され、【螺旋飛龍】だけでは敵の高い治癒能力により有効打には繋がらない。


 欠点を知っても欠点を突く方法が無いと倒せない、別のやり方があるのかも知れないが、俺にはさっぱりだ。やっぱり、雷感電作戦しかないか・・・。



 頼みの雷雲は目前だ。

 凄まじい数の稲光、近付くほどに鳴り響く轟音が大きくなっていく。



 ・・・そして、目を凝らせば雷雲の真下に三匹の悪魔が見えた。

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