第五十一話 ミッション5:戦艦駆逐【2】
苦悩する艦長を余所に、戦況はサーシャ小隊が優勢であった。
RANK6の戦艦は巨体故に敵弾の的になり被弾は多いが、厚い装甲と圧倒的砲撃力によって次々と敵機体を葬っている。
トウマとオヅヌの活躍にも目を見張るものがあった。
オヅヌが搭乗するAQA、プレグナル・オウガの【金棒】閻魔大往生が敵機BFAの胸部を貫き、機体を爆散させる。
跡に残ったソウルとパーツアイテムが自軍戦艦ゼグセドアルスへ向かい飛んでいく。
「倒した敵の残骸を漁らなくても、勝手に母艦へと吸い込まれていくのは助かるね。」
前回のメンテナンスで【自動取得】の機能が追加された。これにより敵のパーツを拾い集めなくても自動で取得出来る事になったのだ。
【自動取得】の機能は旗艦一括取得に設定しており、【自動取得】と同じく、新たに追加された機能【収集分配】により、ミッションクリア後のインターミッションで山分けする事が可能になっている。【収集分配】のデメリットとしては、ミッションクリア失敗時は集めたソウルやアイテムを全て失ってしまう事、分配に不平不満が出やすい事などがある。
分配方法は運任せの【ランダム分配】と、隊長が振り分ける【任意分配】があり、【任意分配】の場合には独占防止機能として、分配に不満がある者がいた場合は【ランダム分配】に切り替えることが可能となっている。
「俺達不幸持ちにとってはアイテム消失を気にしないで良いのだから非常に有難いな。戦闘に集中しやすくなった。」
「不幸中の幸いだね。」
言葉の意味合いはともかく、オヅヌの言いたい事が何となく分かったトウマは肯定を口にする。
「・・・ああ、そうだな。」
そこへ通信担当のホーリーから戦況を報せる通信が入った。
「皆さん、攻撃可能範囲内の敵はほぼ殲滅、残敵数は敵戦艦を含め前方に四十一機、後方に約三百機です。艦長より各機へ、『エネルギーを順次補給後、直ちに再出撃し、速やかに敵機殲滅を求めます。』以上です。」
涼やかな声でゲンナリする報告を受け愕然とする二人。
「・・・開戦当初より増えてないか?」
「確か、最初に現れたのは三百機くらいだったよね?」
敵の数は襲来時から敵戦艦が現れるまで増え続けており、二百機近くを倒してなお、三百強の敵が不幸持ちの元へと続々と押し寄せてくるのであった。
「補給完了。プレグナル・オウガ出ます。」
エネルギーの補給を先に済ませたオヅヌが再び戦場へと舞い戻った。
プレグナル・オウガと入れ替わりにリヴァイア・サクトゥが母艦へと帰艦、それと同時に優秀なNPCスタッフが戦傷機体へと群がり、迅速に整備と補給を開始、程なくして機体メンテナンスを完了させたリヴァイア・サクトゥが出撃する。
カタパルトから勢いよく飛び出したリヴァイア・サクトゥは、機体スキル【加速】の使用で更に勢いが増す。
加速しつつ愛機の項部位に埋め込まれた逆鱗に手を翳し【太刀】天裂地爆刀を引き抜くと、自機と|バイオ・フージョン・アームズ《敵BFA》とのすれ違いざまに胴体部分を薙ぎ払い、振り返りながらの敵機後頭部から背部、腰部へと縦斬り一閃。すると斬り付けた部位の装甲が爆発し、BFAの素体部が顕となる。残りの装甲、腕部を【肩砲】双龍砲で破壊し、脚部はリヴァイア・サクトゥの龍脚爪【掴爪握脚】で握り潰し、BFAを完全素体にすると、トウマはゼグセドアルスの方へとBFA素体を放り投げる。
ゼグセドアルスの船首部にある大型ハッチが開き、勢いよく投げられたBFAを呑み込もうとする。呑まれてなるものかとBFAはジタバタと足掻いて逃れようとするがゼグセドアルスの吸引力には敵わず、抵抗むなしく口腔部から艦内へと吸い込まれていった。
メイプルがサーシャに敵機捕獲の報を告げる。
「トウマ機より五機目のBFAケイオスオルムが送られてきました。【戦艦融合】【自動取得】完了。これにより栄養素の完全抽出に成功しました。ミッションクリア後に全機へ『攻撃力+2』を分配可能です。」
「どの機体でも五機ほど取り込めばAQA全機分の栄養素を賄える様ね。」
既に敵BFAオールギュス、リーンメイブル、ガンロートの栄養素は全隊員分の取り込みを終えている。残すところアーテムジール二機のみ・・・だったのだが、ケイオスオルム捕獲直後にオヅヌの【特殊AS】刻銀前鬼と、【特殊AS】戦金後鬼によって全装甲をひん剥かれたアーテムジールが二機、船首口へと運び投げ捨てられてきた。
「アーテムジールの栄養素をコンプリートしました。これにより各機へ『防御力+4』を分配可能になりました。あ、おめでとうございます。ナック副隊長とホーリーには能力値の代わりに機体スキル【氷結】の取得が可能になるようです。」
サクラが歓喜を含んだ口調でスキル取得者の報告をする。
「了解、トウマとオヅヌは敵機撃破に専念して、ナック、自動戦闘AIのレベルはどれほど上がったの?」
「さっきと変わってない。レベル4までは順調に上がったが、経験値表示バーを見る限り一割も溜まっちゃいない。レベル5になるには、まだまだ戦闘経験値が足りないな。」
経験値が貯まり難くなったのは敵のレベル、もしくはランクによるものなのか、戦闘方法によるものなのか、もしかすると必要経験値が大幅に上がったのかも知れない、現状では判断が付きにくいので色々と試すことにした。
「砲撃手は持ち場を離れず戦闘モードを手動戦闘から自動戦闘に切り替えて、メイプルは手動と自動での戦闘効率の比較を、サクラは経験値増加量の比較をお願い。」
自動戦闘に切り替えて後、百機撃墜による検証の結果、戦闘AIによる自動戦闘では、手動戦闘と比べて戦闘効率は二十パーセントダウンしたが、獲得経験値量の面では大差は見受けられなかった。
「では、主砲担当のナックとチナツは副砲担当のホーリーとウェス達と持ち場を交代、その後、戦闘モードを手動戦闘に切り替えて頂戴。」
担当チェンジは効果覿面で、二十機も撃破しないうちに戦闘AIはレベル5に上がる。この配置のまま自動戦闘モードに切り替えても経験値の伸びは変わらず良好で、三十機撃破した時点で戦闘AIはレベル6へとアップした。
だが、伸びが良かったのはここまでで、また極僅かな経験値量へと戻ってしまう。
「配置替え効果もここまでのようね。これが能力値によるものなのか、所持スキルが関係しているか、あるいはキャラの個性が活かされているのかも・・・まだまだ検証の余地はありそうね。」
「トウマとオズヌに撃たせるのも面白いかも知れないな。」
「あの二人にこの艦を任せると、敵の集中砲火を浴びるでしょうね。そして戦艦が落ちてゲームオーバー、それでどれだけペナルティを受けるか分からないし、想像したくもないわ。」
一同が一様に頷いたところで戦況に変化が起こる。
漸く敵戦艦が視認できる場所にまで到達したサーシャ隊、ゼグセドアルスのデータベースにアクセスし、照合を試みた結果、敵戦艦はRANK6蜂の巣型攻撃空母『カララドーム』である事が判明した。
『カララドーム』に砲塔などの直接的な攻撃手段は無く、ハチ型BFA『ロビカララ』を大量に出撃させ、ロビカララは獲物の装甲を捕食するとソウル奪い、奪取されたソウルはカララドームへと送られロビカララを生み出す養分となる。
早速、カララドームから数百機ものロビカララが湧き出てきた。RANK4ロビカララは蜂の特徴を持つ人型FBAで、二本の触覚レーダーに緑眼、四枚の羽を持ち、針はないが大きな尻尾が生えている。黄色を基調としたカラーリングで手脚と尻尾の黒輪模様が印象的だ。所有武器は獲物の装甲を噛み砕く為の強靭な顎、右腕にはニードルガンが装着され、左手には突剣を持ち、あちらこちらの関節部分より紫色の炎が噴出している。
「報告、RANK4BFA『ロビカララ』との戦闘が始まりました。ロビカララは我々だけでなく、オールギュス、リーンメイブル、ガンロートなど、初期出現BFAをも攻撃対象としています。」
サクラの報告にナックは頷き呟く。
「敵さんも皆、仲良しこよしって訳ではなさそうだな。」
「三つ巴戦になっている今が好機ね。本艦は自動戦闘モードを継続、私達もAQAで出撃するわよ。ただし、ナック以外はカタパルトからの援護射撃に徹する様に。」
サーシャ隊全AQAが出撃し、戦況は無差別に敵機を攻撃し、ほぼ無傷のサーシャ隊、FBA側の二勢力は組織的に動き、数に勝るヨビカララ群が優勢で、烏合の衆である初期出現BFA軍が劣勢を強いられている。
『ロビカララ』が『リーンメイブル』の装甲を強靭な顎で噛み砕き貪り喰らう。さらに素体へ突剣を突き立てソウルエネルギーを抜き取った。
獲物の装甲を養分としたロビカララは大きく膨らんだ尻尾からAS『カララ』を三体産み出す。カララはRANK3のASで、黄単色四枚羽、武器は両手持ちのマシンガン、尾にはニードルソードが備わっている。
奪ったソウルはロビカララがカララドームへと持ち帰り、ソウルを養分として吸収したカララドームは新たに十機のロビカララを生み出す。
増殖していくロビカララ、初期出現BFA軍が全滅する頃には、サーシャ小隊は総勢千機を超えるカララ群に包囲されていた。
リヴァイア・サクトゥが【双刀】天裂刀・地爆刀を振るいAS『カララ』の首を二機まとめて刎ねあげる。頭部を失った二機が爆発四散するのを見届けもせず、リヴァイア・サクトゥを下方へと移動させ次の獲物を狙う、【掴爪握脚】によりロビカララの両肩を掴みつつ敵機の密集する場所へと特攻、ロビカララのニードルガンによる針型光弾が飛び交う中を、掴んだロビカララを盾にしながら潜り抜ける。双刀を太刀に変え周囲の敵機を一閃、同時に双龍砲を発射、前後左右にいたロビカララの胴体を斬り裂き、龍弾によって前方二機の体部に風穴をあけた。
太刀を逆鱗に戻し戦闘スキル【螺旋飛龍】で両腕を飛ばす。更には【AW】青龍玉を射出し、戦闘スキル【サテライトオーブ】を発動、ブラックダイアが針型光弾を別のロビカララへと弾き返す。トウマは上方の敵機に眼を向け七機をロックオンすると、戦闘スキル【ローズレイ】を発射、赤い一本の光線が次々と敵機を貫いていった。
一機、また一機と撃破していくが、一向に敵の数が減ったように思えない。少しでも立ち止まろうものなら、あっという間に取り囲まれてしまうのだ。
「くそっ、四方八方敵だらけだ。ちっとも減った感じがしない。」
残念ながら宇宙には雲と大地が無い為に戦闘スキルの【千柱天雷】と【ドラゴンクエイク】が使用不可になっている。これにより範囲攻撃が使えない現状、AQAリヴァイア・サクトゥの殲滅力は著しく落ちてしまっているのだ。
一方、トウマと同様に苦戦はしないものの、オヅヌも敵機の殲滅に手間取っていた。
機体スキル【瞬歩】により一瞬にして敵の背後に回り込み、【金棒】閻魔大往生でロビカララを頭部から真っ二つに叩き裂く、【装具】カナベラルが【AS】カララを絡め取り、包み込んだまま締め壊す。
その間にも【AW】黒飛鬼四機が戦場を飛び回り、カララと擦れ違いざまに首を切り飛ばし、或いは噛み砕き、或いは撃ち抜いた。
オヅヌが操る機体は【AW】だけではない。二機の【AS】黒護鬼二機が、更には【特殊AS】刻銀前鬼と戦金後鬼がいる。
防御に優れる黒護鬼は母艦ゼグセドアルス、及び味方AQAの護衛に付いており、積極的に攻撃行動をとってはいないが、代わりに刻銀前鬼と戦金後鬼は所狭しと縦横無尽に飛び回り、敵機をちぎっては投げ、その行く手を阻もうが阻むまいが容赦なくなぎ倒し、宇宙空間では響かぬ雄叫びを上げながら暴れまわっていた。
だが、二人の奮闘も戦局を決定するには功を奏してはいない。
倒した敵数と同じか、それ以上に敵空母『カララドーム』よりロビカララが飛び出してくるのだ。
「オズヌから隊長へ、いくら倒してもキリがなさそうです。ここは雑魚の殲滅よりも敵戦艦の撃破を優先するべきじゃないですか?」
「あら、私としてはもっと敵を倒してソウルを稼ぎたかったのだけど・・・そうね、このあたりが潮時かしら。自動モードの設定を変更、では、これより攻撃空母カララドームへの攻撃を開始します。」
サーシャはゼクセドアルスの自動戦闘モードの設定を、小型機のみを攻撃から敵大型艦への攻撃を優先させるように変更する。
そしてカララドームへ向けてベクトルカノン砲の白色光線が連続で放たれるが、カララドームは半球状の広範囲バリアを展開し、ゼクセドアルスからの攻撃を完全に防ぐ、まさかの防御力に誰しもが驚いた。だが、バリアを張っている間は新たな増援が出せない事が判明、これにより防がれると知りつつもサーシャ達はカララドームへの攻撃を継続させる。
「どうする、隊長、このまま攻撃を続けるのか?」
「ええ、もちろん攻撃は続けるわ。おそらく、あのバリアは死角からの攻撃は防げない筈よ。オヅヌは攻撃空母カララドームの背後に周り、ありったけの攻撃を加えて頂戴。本艦は牽制砲撃を継続、残りはBFAの殲滅よ。」
「「「了解。」」」
出来る限りソウル集めを忘れないサーシャに苦笑するも、皆が己の役目を果たすべく戦闘を続行する。
敵機を撃破していくうちに、全AQAの第二モニターに称号とスキル獲得のメッセージが表示された。
『部隊称号【千機相当の小隊】を得ました。』
『パイロットネーム:サーシャは称号【節約艦長】を得ました。』
『パイロットネーム:ナックは称号【孤独副艦長】を得ました。』
『基地スキル【対話機能】を得ました。』
部隊称号とは称号獲得時に獲得した部隊に所属していた者、全員に付与される称号である。
・称号を獲得した部隊のみが効果を発揮する。
・部隊を外れても称号を失ったりはしないが、称号効果は発揮されない。
・他の部隊と隊を組んでも他部隊に部隊称号の効果は表れない。
【千機相当の小隊】:戦艦を持つ小隊(二機~十九機までの部隊)が一戦闘内で初めて千機を撃破した際に贈られる称号。
効果1:称号を持つ者の全能力+100
効果2:戦闘開始時と十機撃破毎に交戦する敵部隊に戦慄が走り、恐慌状態にさせる場合がある。
但し、部隊に所属していても単独行動(旗艦レーダー範囲外へ出た場合)の際には効果は発揮されない。
又、中隊以上の部隊編成だと称号が変化する。
余談ではあるが、【百機相当の小隊】(効果:全能力+10)の称号獲得条件をサーシャ小隊は満たしていなかった為、得られなかった。
【節約艦長】:ソウル消費兵器を使用せずに、自艦が敵機を百機撃破した際に贈られる称号。
効果1:全能力値+10
効果2:ソウル兵器のソウル消費量5%還元。
【孤独副艦長】:自分の意見は採用されず、隊員の意見が採用されている状態で、自艦が敵機を百機撃破した際に贈られる称号。
効果1:全能力+5
効果2:幸運力-10
基地スキルとは先取り型の隠しスキルであり、多くのスキルを得ることで多用な部隊へのサポートが可能となる。
【対話機能】定員十名、搭乗者ゼロの状態で戦闘AIがレベルアップした際に与えられるスキル。
効果1:戦艦の電子頭脳と会話が可能になる。
効果2:【助手の電子手帳】が【博士の電子辞書】に変わり、電子頭脳と【博士の電子辞書】とが常時リンク。
『皆様、初メマシテ、私ノ名ハ、超高性能電子頭脳【TOMI】デス。【トミー】ト、オ呼ビクダサイ。』
突然の声に皆が驚いた。強襲戦闘艦ゼクセドアルスから各AQAへ通信回線を通して話しかけてきたのだ。
「なんや?いきなり喋りかけてきおって、勿体つけんと喋れるなら最初から喋らんかいな。」
『申シ訳ゴザイマセン、起動プログラムノ起動条件ガ成立シタコトニヨリ、タッタ今目覚メタノデス。』
「それで、トミーは何ができるのかしら?」
ただ会話するだけの機能であれば戦闘の邪魔になりかねないので、即刻会話機能を停止させるつもりのサーシャ。
『オ手元ノ【助手の電子辞書】ダッタ物ヲ、ゴ確認クダサイ、ソレラヲ【博士の電子辞書】ヘト、アップグレードシマシタ。他ニハ、モードノ切リ替エヤ、提示可能ナ情報ヲ皆様ニオ伝エ致シマス。』
「それなら、戦闘AIの効率的なレベルアップ方法を教えて頂戴。」
ブブーッ!
『攻略方法ヲ、オ伝エスルコトハデキマセン。』
「何よそれ!」




