第四十二話 オヅヌ覚醒【2】
力を得た事によってなのだろうか、エネルギーが満タンになっていた。
「よし、これで思いっきり戦える。」
先ずは銀虎爪にエネルギーを送り赤いオーラを灯す。
右手は縦に左手は横に虚空を掻き斬ると、赤い十字の傷が刃の赤光となって波打極丸へと向かう。
相殺覚悟の遠距離攻撃【赤十字虎爪刃】を放つと、案の定、波打極丸は【青×字輝気刃】を【赤十字虎爪刃】にぶつけ、エネルギー衝突により互いの刃は砕け四散する。
エネルギー片が舞い散る中、それを吹き飛ばすかの様に黒い影が走り抜ける。それは自機の銀虎爪を鉤爪の形にし、手の平を突き出し放つ戦闘スキル【黒鬼極歩爪】で、角を持つ黒い半透明なエネルギー体がエネルギーの続く限り好き放題に敵を襲いまくるのだ。
黒鬼は波打極丸へ体当たりを試みるが、待ってましたとばかりに頭から真っ二つに斬られる・・・が、斬られても両断されず、刃は空を切ったかの様に身体をすり抜けた。真面に打ち当たったにも拘らず波打極丸は僅かによろめいただけで、直ぐ様反撃に出る・・・が、これも刃は黒鬼の身体をすり抜けるだけの結果に終わった。
再び攻守が入れ代わり、黒鬼の連続攻撃が始まる。
右へ左へ繰り出す黒鬼のジャブを波打極丸は上半身を左右に振るだけで躱し、黒鬼の回し蹴りには滑かな脚さばきで黒鬼の背面へと移動し避けた。
振り返りざまの裏拳も身を屈めて躱される。
立ち上がりに合わせ黒鬼は右アッパーを打つが、波打極丸は背を反らし回避、戻りに合わせ左フックを顔面に打つが、フックのスピードに合わせ首を捻る事で衝撃を逃がし、損傷を微々たるものに抑える。
兎に角、攻撃が当たらない、当たっても損傷は軽微、恐ろしいまでの回避力と防御力である。
続く黒鬼の連続手刀突きも、波打極丸は躱し、避け、受け止め、被害を最小限に抑えていた。
だが、突然、波打極丸に異変が生じる。
黒鬼の背中を貫き胸から飛び出してきた二本の角が、波打極丸の体部装甲に穴を穿ち、その動きを止めたのだ。
波打極丸を突き刺したのは自機に生えた二本の黄金角、伸縮自在の戦闘スキル【金牛伸突角】で角を伸ばし、黒鬼ごと波打極丸を貫いたのである。
エネルギーを使い果たした黒鬼は、役目を終え消えていった。
俺はAQA波打極丸の装甲を貫いた角の先端を曲げ抜けなくすると、波打極丸を角の力で持ち上げる。
自機の頭上高くまで持ち上げると、角を縮め波打極丸の体から引き抜き戻す。
落下しながらも、波打極丸は気力を込めた青く光る刀を振り上げ、自機の頭部目掛けて渾身の一激を叩き込もうとする。
俺は機体スキル【剛力】を発動させ、【金棒】閻魔大往生で刀を受け止め無理矢理弾き返すと、戦闘スキル【赤破虎砕牙】で波打極丸の左腕に噛み付き腕部装甲を破砕した。
噛み付きにより素体レベルは上がったが、能力アップはしていない、ここはもう一噛みしたいところである。
「ふぅ~、ようやく部位破壊にまでたどり着けたか。」
まだ敵は腕部装甲を失っただけだが、こちらは全身裸の状態だ。
強力な攻撃を受ければ即死も有り得る。
まだまだ安心は出来ない。
AQA波打極丸は距離を取るため後方に大きく飛び退き、【分身】の構えを取る。
ここで取って置きのアイテム【銀前金後召喚門】を使用、巨大な門の両扉が開き、中から銀色の鬼と、金色の鬼が飛び出してきた。
「銀前鬼、参上。」
「金後鬼、見参、主よ、今が我らの力を示す時。」
前後に開いた門から出てきたのはセンカクゴギュウやコクギンゼンコではなく、銀前鬼、金後鬼という鬼型ASだった。
しかも、いつの間にか意思を持つ彼らの主になっている。
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黒軍ASの特徴
・量産型ASの性能は低く、配備数も少ない。
・ASに素体はなく部位も分けられていない。耐久力以上の損傷を与えれば撃破となる。
・一度呼び出すとミッション終了まで付き従う。エネルギー切れで停止する。
・ASを呼び出したAQAのエネルギーが尽きるか、AQAが撃破されれば、そのASは停止する。
・特殊型ASの場合はAQAの特徴により様々なAS性能となる。
AS:銀前鬼 RANK4
銀鬼型AS、一本角、剛爪、全ての能力値が高い。戦闘スキル【赤十字虎爪刃】
AS:金後鬼 RANK4
金鬼型AS、二本角、鋭爪、全ての能力値が高い。戦闘スキル【金牛伸突角】
銀前鬼と金後鬼が揃うと使用可能。合体戦闘スキル【鬼切断頭】
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これで三対三の形にはなった。
あとは鬼型ASの実力が波打極丸に対し、どこまで通用するかだな。
俺は【洞察】、【感知】スキルで本物の波打極丸を探し出す。
ピピッ。
「本物は真ん中、二鬼は先に分身を倒せ、後に本体を攻めよ。」
「委細承知した。」
「御意のとおりに。」
分身を含む三機の波打極丸が【青×字輝気刃】を放つ、その全てを機体スキル【消去】で消し去り、同じく機体スキルの【瞬歩】で波打極丸本体に接近する。
【金棒】閻魔大往生で頭部装甲の破壊を試みるが、刀で受けられたので【剛力】で力任せに押し込み、波打極丸に膝を付かせる。
両脇の分身二体には襟巻き型【装具】カナベラルを両側へ伸ばし、分身の持つ刀にカナベラルの先端を巻き付け、絡め取った。
そこに銀前鬼、金後鬼の合体戦闘スキル【鬼切断頭】が炸裂。
グワシャ!グワン!
左側の分身には、銀前鬼の右腕内側部分を分身の首元目掛けて打ち当てる。
右側の分身には、金後鬼の左腕内側部分を分身の首元目掛けて打ち当てる。
攻撃を受けた分身は両方とも翻筋斗打って雪上に倒れ、光の粒子となって消えていった。
残るは本体のみなのだが、まだ【鬼切断頭】は終わっておらず、銀前鬼は反転し時計回りに回転、左腕を波打極丸の後頭部へ、金後鬼はそのままの勢いで回り、左腕を波打極丸の喉元へ、くの字型に曲げられた二鬼の両左腕が波打極丸の首を刈り取るように交差する。
チュッ、ドーン!!
合力の一撃が決まりAQA波打極丸の頭部装甲が爆発した。
爆発の直後、【装具】カナベラルで波打極丸を拘束、この時点で勝敗は決する。
【赤破虎砕牙】で止めを刺すと、せっせと残骸からアイテムを掻き集める。
このLBOはボスを倒しても勝利の余韻に浸る時間すら与えてくれないのだから、本当に非道いゲームだ。
因みに、波打極丸の肉からは機体スキル【明視】を入手、この【明視】は見え難い物でもはっきりと見る事が出来るスキルだ。
このスキルが有用かどうかは、まだわからない。
さて、トウマの所へと戻る術を模索しているとイベントが発生する。
・・・このイベント発生タイミングは実に嫌らしいな。
眼下にAQAのパイロットと思しき人物が見える。
ちゃんとパイロットスーツを着ているんだな、武士らしく羽織袴なのかと思ってた。
「アンダーク星のAQAは敵機の力を取り込むと聞いていたが、まさか化生の者まで取り込むとは、なんと恐ろしきことだ。」
この人を【洞察】で調べてみると、パイロットネーム:ザンシロウ(NPC)と表示された。うわっ、隊長さん生きてたんだ。
後後の為に踏み潰しておきたいところだが、イベントシーン故に出来そうにない。
・・・暫しの間、ザンシロウ隊長とメインモニター越しに見つめ合っていると、上空から飛行戦艦が音も静かに現れる。
マジですか?次はこれと戦うのですか?
飛行戦艦からワラワラと十機のAQAが降下してきた。
見た目は波打極丸よりも、共嵐丸よりも弱そうだ。符吹とは違うが、せいぜいRANK2くらいのAQAだろう。
右手に刀、左手に護符を持っている。
敵機は刀でこちらを威嚇しつつ、護符をペタペタと貼り付けてくるのだが、いつもの超絶操縦術を使うまでもなく倒せそうなんだが、今回は何の抵抗もせずに、されるがままになっていた。
護符には『転封』の文字が書かれている。
「成程な・・・こいつらと戦うより幾分かはマシか・・・。」
少し御都合主義なところを感じながら、増援の手により、俺は元の場所へと転送される事となった。
「急々如律令、邪機転封、完遂致しました。」
増援に来た隊員機が整列し、飛行戦艦とザンシロウ隊長に向け処置結果を報告する。
戦場跡には相当量の機油が雪を赤く染めていたが、青軍の会話を遮るように風が吹き、雪が降り始め、赤雪を白く塗り替えていった。




