第四十話 クロスイベント オヅヌ・コクギンゼンコVS青軍メッサツ武士団【3】
三機もの隊長機を相手に立ち回れるほど俺は強くなく、例え一機だけでも勝てるかどうか微妙なところだろう。故に先程から俺は敵に背を向け逃げ回っている。青軍AQAの特徴は防御力、耐久力、精神力、回避力は高いが、攻撃力、脳波力、特に機動力が低い。例えRANK4のAQAといえども格下であるRANK3AQAにも追いつけない程に機動力は低いのだ。
焦れて飛ばしてくる戦闘スキル【青×字輝気刃】は機体スキル【消去】で文字通り消し去ってやる。消去スキルで消せなかった戦闘スキルはまだ無いので、機動力だけでなく脳波力に関しても自機の能力は隊長機の上をいっているのだろう。
さて、俺が隊長機から逃げ回っている間に、コクギンゼンコは全てのAS大桃侍を打ち破り、隊長機目掛けて駆け寄ってくる。
後はどうやって隊長機を倒すかだな、あの【分身】は機体スキルの様で、戦闘スキルを消す【消去】では何度やっても消せなかった。消すには頭部装甲を破壊するとか、相当のダメージを与えなくては分身は解除されないのかもしれない、最悪の場合は全機撃破しなければならないだろう。だが、コクギンゼンコでも一対一では分が悪いので、出来れば数の上で優勢になりたいところである。妖精AW二機で抑えられる隊長機は一機が限界だろう、それも長くは持ちそうにない。せめてもう一機味方がいれば何とかなりそうなんだが・・・。
そう考えていると、どこからともなく味方機が援護に駆けつけて・・・来る・・・筈もなく、逃げるオミナスプリガン、追う波打極丸、それを追うコクギンゼンコ、チビチビと光弾を撃ち、隊長機に微々たるダメージを与える妖精AQA。
丘の頂きまで駆け上ったところで、コクギンゼンコが隊長機の一機に追いつき、勢いそのままに飛び掛って押さえ込み、隊長機と縺れ合いながら雪の斜面を転がり落ちていく。妖精AWをコクギンゼンコの加勢に回し、俺は他の二機を引き連れ逃走を継続する。
逃げ続けながら攻略法を考えていると、恐ろしい事を想像してしまった。もしも隊長機本体でなく、分身の方を倒したとしても、本体が再度機体スキル【分身】を使ったら、また三機を相手にしなくてはならないのだろうか?それより、今の状態で隊長機がまた機体スキル【分身】を使ったら五機になったり、分身までもが【分身】スキルを使用して三機が九機になったりしだしたら、もう手がつけられない。
機体スキルはエネルギー消費量が少なく、長時間の継続使用でも戦闘スキル1回分よりも減らないのだ。エネルギー切れでの分身解除は期待できそうにない。戦闘スキル【青×字輝気刃】を連発させた方がまだマシだろう。
攻め手に苦心していると、意外な場所で意外な反応を感知した。丘陵地帯の一角に雪からピョコンと飛び出ているモノを発見、それは互いに向き合う雌雄一対の金牛像であった。近寄るとレアアイテム【牛鬼の証】が目の前に出てきて光を放っている。
「もしかして、呼び出せるのか?」
思わず【牛鬼の証】を手に取り念じてみた。呼べる。何か思念の様なものを感じ、呼び出せるのだと確信できた。
「うおおおおおお!!この地に眠りし我が友よ、今こそ目覚めの時!古の盟約により汝の力を再び我に示せ、センカクゴギュウ召喚!!」
翳した牛鬼の証が、より強い光を放つ。
ここからセンカクゴギュウ登場イベントが始まる。
大地が激しく揺れ、土が盛り上がり、積雪は崩れ落ち、地面から城がせり上がり威風堂々たる城塞が出現する。俺は城郭の外から城を見上げると天守閣の屋根を飾る雌雄一対の金牛像が見えた。視線を徐々に下ろしていけば、そこには『封』の字が書かれた城門が軋み声を上げている。
文字は青く明滅を繰り返し、文字が徐々に消えていく。文字が完全に消えると同時に城門が弾け飛ぶ。中から現れ出でたのは、巨大斧を片手に携えた牛巨人、センカクゴギュウである。
出現シーンに見惚れていると背後から波打極丸の青い刃が飛んでくるが、そこはイベントシーン限定超絶テクニックで躱し、センカクゴギュウが巨大斧を隊長機に叩きつけ撃破する。AQA波打極丸は爆発せずに光の粒子となって消えていった。倒したのは分身の方だった様だ。
「力を求めし者よ、貴様との盟約、此度こそ違えるでないぞ。」
ミッション2での事は忘れてないか、今回は大丈夫、俺達で古き良き時代を取り戻そう。
イベントシーンが終わると一気に形勢が有利となった。
イベントにより操作不能になった妖精AWは両肩に収納されたので、再射出し、眼前の隊長機撃墜を優先させる。
センカクゴギュウの巨大斧が隊長機に振り下ろされる。右に躱せば妖精AW二機による光弾射撃、左に躱せばリボルビングショットガンの餌食に、押し負けると分かっていても敵機には刀で受ける選択肢しか与えない。
力負けし膝を折るAQAに光弾と散弾の雨を浴びせる。流石に隊長機の装甲は硬く、銃撃では倒しきれずスパイクロッドの一撃と、センカクゴギュウの角による突き刺しで光の粒子に変えてやった。
「これもまた分身だったか、残るはコクギンゼンコが相手をしている本物のみだな。」
急ぎコクギンゼンコの元へ駆けつけると、隊長機に押されており、かなりの劣勢であった。
センカクゴギュウが角を突き出し突進していく。
隊長機は大きくトンボを切って突進を避けセンカクゴギュウの背中に回ると、刀で袈裟懸けに斬りつける。
センカクゴギュウの大きな背中はパックリと割れ、大量の機油が噴き出した。
惨劇に気を取られていると、いつの間にか波打極丸が眼前に迫ってきていた。
拙い!
咄嗟にリボルビングショットガンを撃ち放つが、狙いも定めずに射った散弾は積雪の中へと姿を消した。慌ててスパイクロッドを振り回すが波打極丸にはかすりもしない。目にも止まらぬ速さの胴抜きで斬り抜けられ体部装甲が爆発する。エネルギー供給源を失った妖精AWがボトリと墜落し、その動きを止めた。
振り返りざまにスパイクロッドを横薙に払うが刀でいなされ、そのまま腕部を斬り潰された。
これは本当に拙い、勝てる気がしない。
隊長機から少しでも距離を取るため、全身の力を抜き斜面を転がり落ちる。
入れ替わりにセンカクゴギュウとコクギンゼンコが隊長機へ怒涛の連続攻撃を仕掛けるが、往なし躱され全ての攻撃が避けられてしまう。
手痛い反撃を受け更に傷を負う二機の巨獣。
「くそ、三機掛りでも敵わないか。」
諦めかけていたその時、三度イベントシーンに突入する。
コクギンゼンコが波打極丸の刀を虎爪で受け止め、センカクゴギュウが巨大斧を振るい隊長機を遠くへ吹き飛ばす。
俺もそうだが、イベントシーンではかなり強くなるんだよな。
不満と羨望に打ち拉がれていると、センカクゴギュウとコクギンゼンコが語りかけてきた。
「邪機を纏いし者よ、このままでは我らの力は、また再び封じられよう。憎っくき彼奴を倒すには我か、粗奴か、いずれにせよどちらかの力をその身に宿すより他はない。」
「さあ、我が黒銀の力か、粗奴の黒金の力か、どちらの力を欲するか選ぶが良い。」
四つの赤い瞳に見つめられ選択を迫られるが・・・どうしよう。
虎か・・・牛か・・・虎は格好良さそうだよな、牛はちょっと・・・でも金の角は捨てがたいな・・・っと、いかん、いかん、見た目より能力を重視しないと・・・う~ん、力なら牛で、技なら虎の様な気がする。力と技・・・う~ん、考えすぎて頭が回る。
「我か!」
「それとも我か!」
「「さあ、どっち?」」




