第三十一話 クロスイベント オヅヌVSセンカクゴギュウVS赤軍アーカイブ魔法兵団【1】
赤一色の景色から通常の状態に戻り、周囲を見渡してみると、ここは前線基地ではなく、どうやら赤い魔法陣によって四方を岩壁で囲まれた天然の闘技場へと転移させられた様だ。飛ばされたのは俺だけでトウマ機の姿はどこにも見当たらない。
ここの闘技場には天井はなく、夜空には絶え間なく続く流れ星と、赤い魔法陣が描かれた満月が浮かんでいる。
イベントシーンはまだ続いていた。
視線を正面に戻すと五機の赤いAQAが床に描かれた魔法陣を囲み、その魔法陣の中心部にミノタウロスが立っていた。五機のAQAは両肘を張り、胸の前で長剣を構えながら呪文を唱えている。
やがて、ミノタウロスは魔法陣に吸い込まれるように足先から徐々に沈み込んで行く。
「よし、術式は成功だ。各員更に魔力を練り上げ、完全にセンカクゴギュウを封印するぞ。」
隊長機と思われるAQAから指示が飛ぶと、レッドメタリックカラーの機体から赤く揺蕩うオーラが立ち込める。おそらくはこのオーラが魔力なのだろう、魔力は長剣へと向かって流れ剣先に収束されて行く。
集まった魔力の塊が五つ、AQA各機の剣先から魔法陣へと注がれていく。
強化された五星魔法陣によりミノタウロス改めセンカクゴギュウが抵抗すらできず腰の辺りまで飲み込まれてしまう。
「クルーリー隊長、どうやら上手くいきそうですね。」
年若い声の隊員が失敗を招くであろう、お決まりのセリフを吐くが、そこはしっかり者の隊長が若輩隊員を窘める。
「集中力を乱すな、封印が完了するまで油断するんじゃない。」
若造隊員は素直に詫びをいれる。途中で封印は失敗するだろうと思ってしまったが、無事にセンカクゴギュウの全身を魔法陣の中へと封じ込めた。
封印が完了すると五星魔法陣は消え去り、魔力を練り上げていた五機のAQAは剣を下ろし、ミッションクリアの感を漂わせている。
だが、赤い機体の一機が俺の存在に気付き全員に警戒を促した。
「隊長、九時の方向二百メートル先に黒のAQAを発見、敵機です。」
一目で敵視されたという事は、あいつらは敵対勢力であり、ミッション2のボスを一撃で仕止めたセンカクゴギュウを五機掛りとは言え封印せしめた精鋭部隊だ。その部隊を相手に単機で戦わなくてはならないなんて、どこまで高難易度なんだよ。
後方に飛び退き抗戦の構えを取ろうとするが全く動けない、どうやらまだイベントシーンは続いているみたいだ。
赤い機体の五機がこちらに銃口を向け魔力を込めて撃つ為なのか赤いオーラが機体表面に波打っている。
イベントで撃墜されてはLBOなんてやってられない、当然、撃ち落とされはせず、先程の赤色五星魔法陣が床に再び描かれ、赤い線や魔法文字がパリンと弾け壊れ、代わりに黒い魔法文字が浮かび上がる。
「人間風情が我を封印しようとはな、フンッ、笑わせるわ。」
魔法陣からセンカクゴギュウの左腕が伸び手近にいたAQAを握り掴む。
「ライヤース先輩!」
若者隊員の悲痛な叫びも虚しく爆発音と共に装甲が破壊され、続けてAQA本体も握り潰されてしまう。
完全に姿を現したセンカクゴギュウは右手に持つ巨斧を横薙ぎに一閃、別のAQAを吹き飛ばし岩壁に激突させる。
吹き飛ばされたAQAは背部と腰部、そして体部の装甲を破壊され、衝突した衝撃により岩壁が崩れ、一部の壁がAQAの上に落下、岩壁の下敷きとなり、その動きを止める。
「貴様ら、まだ希望は見えているか?それとも、もはや絶望しか見えぬか?」
ここで漸くイベントが終了する。
浅黒い体表、ゴルドヌマンに勝るとも劣らぬ体格、機械的な部分はヒヅメと金の双角のみ、意外と食える場所が多く感じる。
機体スキル【洞察】により、センカクゴギュウと赤いAQAのデータが表示される。
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エネミーネーム:センカクゴギュウ
機体レベル:42 RANK5
【アーカイブ魔法兵団所属】
パイロットネーム:クルーリー(NPC)
素体レベル:15 小隊長 エースパイロット
AQA:ディップナル RANK3
パイロットネーム:レイニー(NPC)
素体レベル:13
AQA:ディップル RANK2
パイロットネーム:バーン(NPC)
素体レベル:12
AQA:ディップル RANK2
パイロットネーム:エルクレア(NPC)
素体レベル:13
AQA:ディップル RANK2
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RANK5のボスか、確かゴルドヌマンがRANK4だったはず。このボスを倒せばトウマと肩を並べて戦えるんじゃないか?
ミッション1開始前の作戦会議室でトウマから聞いた話だと、テンザクチバクリュウを倒した際、ステージに用意されているモノを利用し攻略したそうだ。
今回のボスも何がしかの攻略法が用意されているはず、それが赤いAQAなのだろうか、だが、こいつらには先程銃口を向けられたのだ。敵ではあれど味方であるはずがない。それとも他に何か利用できるものがあるのか?
周囲を探ってみると其れらしきものは見当たらなかったが、突如、モニターからピピッと電子音が鳴った。すると、第二モニターに機体スキル【感知】発動のメッセージが流れ、続いて三分後に流星が落下してくるとの情報が表示される。
流星の落下ポイントは・・・俺が今いる場所か・・・。
成程、実に分かりやすい攻略法だな。
ここにセンカクゴギュウを誘導し、落ちてくる隕石をぶち当てる。それまで俺は赤いAQAとセンカクゴギュウの攻撃から逃げまくれば良いわけだ。
1対3対1の三つ巴の戦いが始まった。
右手にはスパイクロッド、左手にリボルビングショットガンを持ち、両肩のAWを射出し戦闘態勢を整える。
対する赤いAQAのディップナルは右手に魔法文字が刻まれた長剣、左手に魔力を込めて撃つ銃、魔法銃を構え、肩には黒猫型のAWが現れた。他の機体も似たような装備だが、AWは装備していなさそうだ。
だが、AWの代わりでは無いだろうが、長剣を回し魔法陣を描くとそこからAQAが出現する。
「なんだ、奴らはAQAを召喚できるのか。」
【洞察】によると、AQAに似ているがAQAではなく、アクセントソルジャーと呼ばれるオプション兵器らしい。
隊長機はASを二機召喚し、他は一機のみの召喚である。
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AS:レッドファントム RANK2
召喚したAQAと同じ行動をとる。実態はなく、ASへの物理攻撃は無効。AQAの頭部が損傷すると同時にASは消滅する。
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もう一方の敵センカクゴギュウは両手持ちの巨大斧を構え、両腕両脚からは鋭利な刃物が突出し、赤く光る眼の上には黄金の角が生え、尻尾の先端には刺付きの鉄球が付いており、敵を求めているかの如く揺れ動いている。
ゴルドヌマンには怖気付いた俺だが、何故かセンカクゴギュウ相手だと闘志が湧いてくる。
やる、やってやる、トウマが居なくとも敵は俺が倒す。
『ブオオオオオオオオオオオゥ!!』
センカクゴギュウの耳を劈く咆哮が戦闘開始のゴングとなった。




