第二十話 ミッション2:哨戒任務【4】
リブノシュタット騎士団前線基地に龍声が鳴り響く、戦闘スキル【ドラゴンロア】を何度も繰り出し敵の動きを阻害し続けているのだ。
仲間のソウル稼ぎに費やすこと一時間、エネルギー補給の為に【エネルギーバイト】を使う以外はカッパヌマンに極力攻撃を当てないようにしている。AQAの四肢を使い、掴んでは投げ、掴んでは投げ、囲まれれば龍の咆哮を使い脱出、それを繰り返す。
味方のエネルギー残量が少なくなれば基地で補給し、残弾数を確保しておくため刀剣での戦闘を心掛けた。
制限なく西の森から飛び出してくるカッパヌマン、もう何百匹葬ったことだろう。数えてはいないが数年分のソウルを獲得したに違いない。
本来ならば制限時間いっぱいまで稼ぎたいところだが、中ボス撃破後に大ボスが出現すると踏んで、ミッション遂行時間残り一時間のところで、ソウル稼ぎを止め、全機のAQAが森の中へと突入していく。
東の森と同様、西の森へ入るとカッパヌマンの襲撃がピタリと止まり、代わりに複数のカッパヌマンによる威嚇の雄叫びが森の中に響き渡る。猿の咆哮など恐るるに足りず、お構いなしに森の奥へと進むと、東の森と同じくシルバヌマンの居る広場へと辿り着く。
今回は仲間がいる為、足場を乱すような事はせず、敵味方入り乱れての激戦へと発展する。
まあ、狙われるのは俺だけだから反撃にさえ気をつければ味方が撃破される危険性は少ないだろう。
【ドラゴンロア】から【ローズレイ】へと繋ぐ龍声眼コンボで、破壊光線に対し防御態勢をとった銀猿の両腕を潰すと、体制を崩した銀猿の前に降り立ち、相手の両足を持ち上げるように掴みつつ共に飛び上がり、空中で錐揉み状に回転しながら落下、シルバヌマンの脳天を大地へとブッ刺した。動けぬシルバヌマンの尻尾を隠し剣を使って切り放し仲間に渡すと、直ぐさま踵を返し、基地へとダッシュする。
「読み通りなら、これで上手くいくはずだ。」
急ぎ前線基地へと戻るとエネルギー補給を済ませ、北側ゲートに移動してから通信を入れる。
トウマ「準備完了だ。いつでもいいぞ。」
サーシャ「了解、ではカウント開始、5・4・3・2・1、撃て。」
【60ソウル獲得】
【シルバヌマンのパーツ】×3を入手
予想通りシルバヌマン撃破後にイベントが発生する。
ミッション2のボスの登場イベントだ。
『グオオオオオオオオゥオゥオゥ!!』
絶叫と共に地響きが起こり、森がざわつき、大地がざわめく。晴れた夜空に暗雲が立ち込め、止まぬ地響きが徐々に大きくなって基地全体が揺れだす頃にはボスの姿が視認できた。北の街道から山の如き大きさの巨大猿が基地を目指して駆けてくる。
金色の機体、三十メートル級の巨猿がAQAを見下ろす。他の猿と同じく金色の毛並みをした尻尾が唯一食える箇所だろう。
キタの読みが的中した。中ボスを倒した途端に大ボスが現れる。それも基地の目の前に、急いで戻るが、その間に基地が攻撃され続け、下手すると戻った頃には基地が壊滅、ミッション失敗の憂き目にあう。それを防ぐには誰かが基地に残り囮になって時間を稼がなくてはならない。囮といえば俺、だがエースパイロットとしても活躍したいので、中ボスを倒す一歩手前で基地へと引き返し、大ボスを迎え撃つ体制を整える作戦をとったのだ。名づけて『押しては返す波のような作戦』。
そして金猿の前に俺が立ちはだかれば基地が攻撃される心配も無い。あとは全力を持って金猿を葬り去るのみだ。
両拳を縦に重ね逆鱗から太刀を引き抜き上段打ち下ろしの構えをとる。相対する金猿は右拳を振り上げ、鉄拳を振り下ろすべき相手を見定める。風が木々を揺らし、ポツリポツリと雨の音がする。雨音は次第に激しさを増し強風を伴って両者に降り注ぐ、闇夜を切り裂く雷が開始の合図であったかのように振り下ろした刀と振り下ろされた拳が激しくぶつかりあった。
天裂地爆刀が金猿の拳を割った。肘の手前まで斬り裂けた拳だったが、どこまで斬られようとも、お構いなしに巨拳の一撃がリヴァイア・サクトゥの上半身に撃ち当たり、そのまま大地へと拳を打ち付けた。拳の形の穴が地面に刻まれ、更にその穴の奥にAQAが減り込んでしまっている。
くっそ~、油断したわけではなかったが俺の予想の範疇を超える攻勢だった。拳を受ける前にも、受けた瞬間にも、叩きつけられた後にも出来ることはあったのに、ただ叩きつけられる衝撃に耐えることばかりに意識が行ってしまっていた。お陰でこの様だ。不甲斐ない自分を叱咤しつつ、損傷部分を確かめ、次の攻撃に備えるため重力制御を行い、ふわりと起き上がる。
「こちらの損傷率は18%、流石のR5機体でも無視できないダメージを負わされる様だな。」
金猿の裂かれた右腕は自己修復機能が作動し、目まぐるしい勢いで機械同士が組み合わさり電子回路が繋がっていく。
そう簡単に修復されてたまるかよ、右拳の傷口に双龍砲の液体龍弾を打ち込んでやる。邪魔するなとばかりに斜め上から巨猿の左手がリヴァイア・サクトゥを掴みに迫ってきた。
「せいりゃあ!」
気合一閃、太刀で迫り来る金猿の手の平を切断、それでも左手の勢いが止まらないのは分かっている。金猿の左手指側に双龍砲を撃ちながら背部にある重力制御装置を使い反重力を発生させ背中から体当たりをぶちかます。名付けて、コンボ【双龍鋼破斬】を決めた。
バラバラに砕かれた四本の指が東の森へと飛んでいく。
「どうだ、これなら直ぐには修復できないだろ。」
金猿は振り切った左腕を見て指を失ったことに気づいたのか、目を赤く光らせ怒声を上げ、飛び跳ねながら両足で大地を踏み鳴らす。
今が好機、怒り心頭の金猿目掛けてローズレイを発射、赤色光線が金猿の頭部に直撃するが、すかさず金猿の右手が割り込んできて光線を遮断、頭部は軽傷で済んだようだが代わりに右腕を半壊させた。
攻撃の手は休めず、ドラゴンロアで動きを制限させ・・・ようとしたのだが、これは効果がないようで金猿の回し蹴りが飛んできた。
バックステップで回避し、今度は【千柱天雷】で鉄柱を召喚する。天候が荒れている為か、帯電放雷装置に貯まっていく雷エネルギー量の増加スピードが通常時に比べると圧倒的に速い。機体のエネルギー消費量も少なく、あっという間に充填率100%に達した。
いざ放電、という時にふと脳裏をよぎったのは、このまま雷を撃つと雨水により濡れた地面を伝ってAQAまでダメージを受けるんじゃないかって事だ。躊躇する間に金猿の連続回し蹴りが飛んでくる。しゃがんで避けてサイドステップ、金猿の背後を奪い反撃を試みるが、金猿の尻尾攻撃により足を払われ転倒してしまう。尻尾がAQAの右足を絡め取り持ち上げられ、いいように振り回される。
脚の隠剣・龍牙で尻尾を斬ってやろうとするが、振り回され地面に叩きつけられてで上手く攻撃を当てられない。こうなりゃ自滅覚悟でやるしかないな。
「放電、【千柱天雷】!」
帯電放雷装置からの雷だけでなく空からも雷が鉄柱に降り注ぐ、鉄柱に帯電した雷エネルギーが他の鉄柱へと放たれ鉄柱間に雷撃が迸りまくる。当然、金猿や自機も巻き込まれ雷に打たれ続ける上に、地面に突き刺さった鉄柱から水溜りを伝って金猿を感電させる。
AQAの損傷を確認してみるがダーメージは受けていないどころか、雷エネルギーの消費量が少なく、長時間放電を続けている。
どうやら帯電放雷装置を使用している間は雷属性攻撃を吸収できる様だ。
感電からの痺れにより尻尾の締め付ける力が緩んだので容易に尻尾の縛めから逃れられた。自由となった俺は今まで自機を拘束していた金猿の尻尾に噛み付いた。エネルギーバイトでエネルギー補給も忘れない。
『ゴルドヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』YES。
【素体レベルアップ】:レベルが34になりました。
二噛じり目中にゴルドヌマンの腕に掴まれ放り投げられる。低空飛行スキルで空中に留まり、振り向きざまにローズレイを発射、ロックオンせずに射ったのでゴルドヌマンの右肩をかすめただけだ。
『ゴルドヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』YES。
【素体レベルアップ】:レベルが35になりました。
あと一噛じりしないとスキルは手に入らないか・・・。
双龍砲で牽制しながらゴルドヌマンの周囲を旋回する。双龍砲でいずれは倒せるだろうが、どうせならスキルを手に入れてから倒したい。だが、なかなか背中を取れないんだよな。
攻あぐむうちに仲間たちが森から出てくるのが見えた。
トウマ「すまん、もう少し掛かりそうだ。」
サーシャ「援護するわ、ついでに肉もいただくわね。」
そうだよな、美味そうな肉は誰もが欲しがるよな。




