第十九話 ミッション2:哨戒任務【3】
森に入って数分が経つ、随分奥の方へと進んできた。もう基地からのサーチライトは届いていない。鬱蒼と茂る木々の葉を払い除け道なき道を進む。
エリアマップの表示を見る限り大猿の数は減ってはいない、それなのに森に入ってからは大猿の襲撃がピタリと止んだ。
サーシャ「こちらサーシャ、大猿達が皆、森の奥へと引いていったわ。どういう事かしら?」
トウマ「俺が森へ入った途端に猿達の行動が変わったようだ。」
ウェス「西側のサル達も森へ帰っていったよ。」
大猿どもは戦場から逃げ出したわけではない、こちらの動きを探っているのか、遠巻きにして様子を伺っている。
『キキャキャキャ。』『ウオオォゥ、ウォウォゥ。』『キッキッ、キィー.』
攻撃範囲外から奴等の威嚇する声が聞こえる。どうも俺を森の奥へは行かせたくない様だ。
この奥に何かあるのだろうか?
用心しながら更に進むと大木の幹に|AQAリヴァイア・サクトゥの《俺の大事な》両腕が突き刺さっていた。
「おお、あった~、良かったぁ~。こんな奥まで飛んでいたんだ。」
双刀を逆鱗に収め、機械装甲の腕を幹から引き抜き装着する。
ようやく一安心できた。だが、周囲には相変わらず殺気が立ち込めている。
トウマ「森の奥を探ってみる。何か見つかるかもしれない。」
サーシャ「了解、イベントの可能性もあるから私達は念の為、基地の守備に付いているわね。」
俺がイベントシーンに突入すると、その間は敵のAIは通常に戻り、基地を狙い出す可能性が高い。森の奥には強敵が潜んでいるかもしれないが、敵の数を考えると仲間は基地の防衛に専念せざるを得ない状況だ。つまるところ俺は単独で行動せざるを得ないのである。
『ギギャオウ!ギャアア!』『ヴォウオウ、オウ!』『ギキー、ギッキィ!』
大猿の声が一層荒くなってくるが、お構いなしに森の深部へと進む。
やがて、木々の生えぬ広場のへと抜け出てみると、そこには銀色の体毛を持つ一際大きな猿が居た。銀猿を守るように大猿どもが俺の前に立ちはだかる。
トウマ「こちらトウマ、中ボスを発見した。コイツを倒すとどうなるか試してみる。いいかな?」
サーシャ「被ダメージ量は?危ないなら加勢に行くわよ。」
トウマ「大丈夫、まだ損傷率1%から変動はない。中ボス相手にどこまで戦えるかも知っておきたいんだ。ここは俺一人でやらせてくれ。」
サーシャ「了解、くれぐれも油断しないようにね。」
サーシャ隊長は俺を名実ともにエースパイロットとする為、鍛えようとしてくれている。彼女からは「多少の無茶をこなせなければこれから訪れるであろう苦難を乗り切るのは難しくなる。だからチームワークの重要性と、己の強さと弱さの両方を知っておいて欲しい。」と言われた。
「頼むぞ、俺のサクトゥ、お前の力を俺に貸してくれ。」
操縦桿を強く握り締める。逆鱗から双刀を取り出し切っ先を銀猿へと向け敵意を示した。
「銀猿よ、お前に怨みは無いが、その首、貰い受ける。」
銀猿へ辿り着く前に倒すべき大猿の数はざっと百、最初の一匹を×の字に切り裂き後続に重力制御を施した蹴りをお見舞いする。そのままの勢いでバッサバサと切り倒していきたかったが、如何せん残りエネルギーが心もとない、先にエネルギー補給を試みる事にした。両手両足の鉤爪で四匹の大猿の頭を掴み重力増加を伴って地面へ叩きつける。大猿の頭部を地面にめり込ませ逆さまの状態にさせると、マスクゲートをオープン、そのまま一気に【エネルギーバイト】を発動させ四本の尻尾を食いちぎった。
『カッパヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』
『カッパヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』
YES、もう一丁、YES
『指揮スキル【???】は入手できませんでした。』
あれ?
トウマ「こちらトウマ、大猿の名はカッパヌマンと判明、スキルは指揮系スキルで取得出来なかった。」
「なんですって!」「おお、本気か!」
サーシャとナックのトーンが上がる。
ナック「それは朗報だが、カッパヌマンは素早くて中々食らい付くのが難しいんだよな。」
キタ「なんや、あと一匹やと思ってたのに俺には実入りが少ないな。」
ウェス「でも素体レベルは上がったよ。」
ウェスがカッパヌマンを空へと持ち上げ落とす。落下したところをキタが取り押さえ食べる。もしくはキタが押さえ込みウェスが食べるという連携をとって栄養摂取をしていたらしい。敵は俺以外へは攻撃されない限り逃げるだけなので、持ち上げるだけなら攻撃したとはみなされず反撃してこないそうだ。
サーシャ「トウマ、今から三十分間は中ボスを倒しちゃダメよ。わかったわね。」
強欲サーシャが現れた。トウマは新たな試練を与えられた・・・。
トウマ「へい、へい。」
【サテライトオーブ】でAWを自動操縦に切り替え、俺は戦闘スキル【ハイドロウェイブ】を発動させる。このスキルは見た目が酷いので、あまり使いたくはないのだが現状では致し方ないだろう。リヴァイア・サクトゥのマスクゲートが開かれ、口から嘔吐にも似た激流を吐き飛ばす。
濁流に飲み込まれ流されるカッパヌマンもいるが、本当の狙いは大地を泥濘へと変える事である。やがて固い大地だった広場は泥々の沼地と化した。カッパヌマンは足元がおぼつかず転倒する者が続出、立ち上がる事すら侭ならぬ状態に陥っている。
俺は機体スキル【低空飛行】で転がり叫ぶカッパヌマンに近づき一匹ずつ切り倒していく。
【20ソウル獲得】×56
サーシャ「トウマ、もういいわよ。」
カッパヌマンの半数を倒した頃にサーシャからお許しが出た。さあこれで遠慮なく戦える。
銀猿はカッパヌマンを四つん這いにさせ、その上に乗っかかり足場にしている。恐ろしいまでの縦社会だ。
少しカッパヌマンに同情を覚えたが、俄然、銀猿を打ち倒す意欲が湧いてきた。俺の思いを載せてリヴァイア・サクトゥの赤い目が光る。銀猿を含めた敵猿十匹のロックオンが完了、赤い閃光が次々と猿どもを打ち貫いていく。だが、流石は中ボス両腕を交差させローズレイの破壊光線を受け止めた。
『ギャギャアア、ギャウギャーオゥ、オウ。』
防ぎはしたものの銀猿の両肘から先が溶解し元は腕だった溶鉄が沼地へと落ちて白い煙を上げながら沈んでいく。
「そうそう、避けるか防ぐかしてもらわないと簡単に倒れられては此方が困るんでな。」
銀猿の首に腕を回し締め上げつつ真上へと放り投げ、それを追う様にカッパヌマンの背を蹴り飛び上がる。更にもう一段飛び上がり銀猿の尻尾をスラッシュバイトで本体から斬り放す。
むしゃむしゃと尻尾を齧りながら落下する銀猿の両足を掴み、両脇に足を乗せ、そのまま落下、何匹かのカッパヌマンを巻き込みながら銀猿を沼地へと叩きつけた。
『シルバヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』YES、更にもうひと囓り。
『シルバヌマンの肉を摂取しました。素体への栄養としますか?YES/NO』YES。
【素体レベルアップ】:レベルが33になりました。
『シルバヌマンの栄養を全て摂取しました。』
『機体スキル【均衡】を入手しました。』
機体スキル【均衡】:【助手の電子辞書】の説明によると機体バランス補正スキルと書かれてある。うん、あって困るスキルじゃないな。
いただける物はいただいたので、シルバヌマンに止めを差しにかかる。
「お前が最後に聞く声は龍の咆哮だ。」
ドラゴンロアで猿の動きを止め、【太刀】天裂地爆刀でシルバヌマンを肩口から袈裟斬りにぶった斬った。
太刀を逆鱗に収め一言呟く。
「成敗。」
【60ソウル獲得】
一人芝居に酔った自分を省みると少し照れはするが、中ボスを倒しても気を緩めたりはしない、すかさず高速点滅する残骸を漁りにかかる。
【シルバヌマンのパーツ】×2を入手
よしよし、これで仲間から怒られる心配はしなくて良さそうだ。
ナック「お疲れさん、アイテムも手に入れられた様だな。」
トウマ「ああ、幸運力-254でもアイテムが二個手に入る事もあるようだ。」
ウェス「え?三個じゃないの?」
キタ「こっちはシルバヌマンのパーツ三個やったで。」
サーシャ「どうやら減算配分(三個→二個)の法則は見直さないといけないようね。」
・・・まあ、これも覚悟の上のマイナス能力だ。まだ損より得してる方が多いと自分に言い聞かせておこう。
報告を済ませ残敵の始末に乗り出そうとしたが、残りのカッパヌマンは点滅しながら消えていった。
中ボスを倒せばいなくなるのか、ソウルを稼ぐには先にザコを殲滅するべきだったな。
もうこれでミッションクリアかもとも思ったが、モニター表示を見てみると西側の敵マークはまだ消えていない。
そうか、中ボスはもう一匹いるのかもしれないな。
俺は急いで前線基地へと戻ることにした。




