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[4]捜索

 家の外に出ても、何も変わった事は無かった。

二人の目に幽霊が映ることもないし、空中をふわふわと泳ぐ香奈を見て驚く人間もいない。

捜索はただの散歩になってしまった。

一人になってからほとんど家から出なかった蓮は、久しぶりの運動と割り切って無心に歩いていた。

面白くないのは香奈である。

初めのうちは上機嫌で喋っていたのだが、何も見つからないまま時間が過ぎるにつれ次第に黙り込んでしまった。いつになく本気で不機嫌な香奈に、蓮も敢えて話しかけようとはせず、二人は沈黙の中で川沿いの住宅街を歩いていた。

「蓮! あれ見て!」

 突然香奈が叫んだ。蓮は立ち止まって香奈の指差す方向、向こう岸の道路に目を向ける。

「ほら、あそこ! あれって人じゃない?」

 よくよく目を凝らしてみれば、アスファルトと同色の服を着た男が倒れているように見える。言葉を交わす前に、蓮は橋に向かって駆け出した。

「香奈! 先に飛んで行って様子を見といてくれ!」

 言われたとおり、香奈は川の上を通って男の元に飛んで行った。

 数分後、息を切らした蓮が戻ってくると、男は既に立ち上がって香奈となにやら話をしていた。蓮の姿に気付いた香奈は、何事か叫びながら手を振ってくる。

「おーい! はやくー!!」

 無慈悲にも蓮を急かす香奈。ようやく蓮が二人のもとに到着すると、香奈は笑顔で男に蓮を紹介した。

「おじさん、これがさっき話した蓮」

「やぁ、君が蓮君か。はじめまして」

 笑顔で手を差し出す。訳が分からない蓮は男を見て呆然としている。男の顔はボサボサに伸びた髪の毛で隠れてしまっていてよく見えない。全身を包んでいる黒い服は異国の物のようだが、大きく破れた箇所が幾つもあり、靴の爪先も穴が開いていた。

「蓮、何ぼーっとしてんのよ」

 香奈に促され握手を交わそうとする。が、次の瞬間には男は地面に倒れこんだ。

「えっ、ちょ、ちょっと! 大丈夫!?」

 何の前触れも無く倒れた男に触ろうとした瞬間、香奈の手に電流のような痛みが走った。咄嗟に手を引っ込め、男と自分の手を見比べる。

「おい、大丈夫か?」

「あ、うん…びっくりしたぁ…」

 蓮が恐る恐る男に手を伸ばすが、今度は何事も無く触ることが出来た。数回男の背中を叩いて、安全を確認してから蓮は男を背中におぶった。そのまま家に向かって歩き出す。

「……?」

 家に帰る道中も、香奈はずっと怪訝な顔をしたままだった。

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