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■ 第8話:残された声
光の先に、小さな端末があった。
誰もいない。
だが、電源は入っている。
「これ……」
レイが触れる。
画面が立ち上がる。
文字ではなく、音声データ。
再生。
ノイズ。
そして——声。
『……聞こえるか……これを見つけたなら——』
かすれた声。
人のものだ。
『外は……危険じゃない……』
カナが息をのむ。
『むしろ——中の方が……』
そこで、音が途切れる。
ノイズ。
終了。
「中の方が……何?」
言葉の続きを想像してしまう。
背筋が冷たくなる。
「誰だ、これ」
記録には名前がない。
残された、断片だけ。
そのとき——
また、あの音。
足音。
規則的な動き。
「来る……!」
今度は、近い。
逃げる時間は少ない。




