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■ 第6話:日常の違和感
その日、コロニーは何事もなかったかのように動いていた。
人々はいつも通り歩き、いつも通り話す。
笑い声すらある。
だがレイには、それが不自然に見えた。
「おかしいよな」
カナも同じことを感じていた。
「うん……誰も気にしてない」
昨日の異常。
あれだけの騒ぎがあったのに。
「記録、残ってないのかも」
「消されてるってこと?」
「たぶん」
レイは考える。
もしそうなら——
このコロニーは、見せたいものだけを見せている。
「なあ」
レイは小さく言う。
「俺たちも、消されると思うか?」
カナの動きが止まる。
冗談じゃない。
でも、否定もできない。
「……やめてよ」
小さな声。
そのとき、アナウンスが流れる。
『昨日の異常は軽微な故障でした』
軽い言い方。
まるで、何もなかったみたいに。
レイは、天井を見上げる。
「嘘だろ」
誰に向けた言葉でもない。
でも——確信していた。
ここは、嘘でできている。




