表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】【完結】迷宮、地下十五階にて。  作者: 羽黒楓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/57

第19話 十年ぶり

 すると光希の目の前に、ふわっともやのようなものができた。

 それはだんだんと人の形となっていって――。

 一人の少女の姿となった。

 だが、現実味がないほど薄い煙のような存在感。


「やあやあ。久しぶり。十年ぶりかな?」


 その姿を見て、由羽愛(ゆうあ)が叫んだ。


「お姉さん!?」


 その言葉通り、消え去りそうなほど薄い影は、しかし、よく見ればササノ・ツバキの姿をしていた。


「貴様っ!」


 ミシェルがレイピアを構える。

 光希はそれを片手で制した。


「ササノ・ツバキ。解呪をあれだけまともにくらっても魂が消滅しないとはな」

「ふふふ。私ほどの魔力を持っているとね、あの程度では成仏できないよ」


「成仏? お前みたいなのが仏様になってたまるか」

「ははは。言葉遊びはけっこう。で、なにか用かい? 見たとおり、私にはもう戦うほどの力はない。おかげさまでね。ずいぶん存在が薄くなってしまった。もう一度、さっきの解呪をくらったら、本当に存在が消えてしまうかもしれないよ。こんなあわれな幽霊になんか用はないだろう?」


「……俺達がお前に用があるんじゃない。お前が俺達に用があるんじゃないのか?」


 光希がそう言うと、ツバキは凄みのある笑顔で光希を見つめる。

 しばらく睨み合ったあと、ツバキが静かに言った。


「私に目的が無いとは言わない。で、なにが言いたい?」

「俺達がここを脱出するのに協力してくれ。そうしたら、俺達もお前に協力してやる」


「はははっ! 君たち程度の探索者がこの元魔女たる私になにを協力できると言うんだい?」

「お前が魔女の幽霊(レイス)ならば――さっきの由羽愛の解呪で消滅していたはずだ。だが、そうはなっていない。だからお前は――」


「ストップ。黙れ。これ、配信とやらをやってるんだろう? 全世界に? 滅多なことを口にするもんじゃない」

「やはりな。俺達はお前に協力できる、そうだろう? そしてお前も俺達に協力できる」


 はあ、とため息をついてツバキは呆れたような顔で尋ねる。


「私が何を協力できるっていうんだい? ああ、あの死んだ魔法使いの女の子の魂を探してほしい、とかだろう?」

「それもあるが、最優先は由羽愛(ゆうあ)を脱出させることだ。由羽愛(ゆうあ)だけでいい。お前、テレポーターの魔法は使えないのか?」


「使えるとも。だがお前も知っている通り、多少難しい術式で準備に半日はかかる。そもそもこんなに存在が薄くなってしまっては難しいな」


 そのとおりで、テレポーターの魔法というのは最高難易度の魔法であり、詠唱だけで数時間かかるという戦闘中には不向きな魔法である。

 光希がそれを使おうと思ったら半日の準備ではすまないほどだ。


「とにかく、まだ子供である由羽愛(ゆうあ)だけでも生還させたいんだ、俺は」


 ツバキは何かを手を顎にあて、何かを考え込み始めた。


「ふむ……ふーん……うーん……あれをこうしてああすれば……そうだなあ……しかしなあ……お前らに、あいつが倒せるかなあ?」




お読みいただきありがとうございます!

よろしければこちらの作品もよろしくお願いします!


パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件

https://ncode.syosetu.com/n4044lc/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ