第18話 出てこい
:Kokoro〈やったーーー!! 由羽愛ちゃん由羽愛ちゃん!!! 生きてた!!!〉
:ペケポンポン〈俺の由羽愛ちゃんを助けてくれてありがとう!〉
:闇の執行者〈やべー! 世界一の探索者だよお前ら!〉
:ハンマーカール〈最後は由羽愛ちゃんが自分で仕留めたな! さすが由羽愛ちゃん!〉
:ルクレくん〈いや、それにしても元魔女を相手に五分以上で渡り合った梨本光希がすごい〉
:積乱雲〈梨本すげーな〉
:光の戦士〈ダークドラゴンにワイバーンに元魔女を立て続けに撃破だもんな〉
:エージ〈もう名実ともに人類史上最強の探索者じゃねえの?〉
:音速の閃光〈さすが光希! おけまる水産!〉
:seven〈このままなんとか凛音ちゃんも助けてやって!〉
:Q10〈とにかくひとまず救出おめでとう!〉
:コロッケ台風〈梨本最高!〉
:冷凍焼きおにぎり〈ミシェルのおっぱい最高!〉
:250V〈ミシェルの尻尾を吸いたい〉
:きジムナー〈由羽愛ちゃんかわいい、いい匂いしそう〉
:ポッポッポー〈俺は梨本光希の臭いをかぎたい。汗臭いのが好き〉
:由香〈やべーやつがいるな〉
:aripa〈匂いをかぎたいやつは全員やべーだろ〉
次々と流れていくコメント欄。
「ふむ……私のチャームポイントが復活したな」
ミシェルが満足そうに自分のウサギ耳を触っている。
由羽愛の治癒魔法を受けたのだ。
凍結石化の魔法で砕け散った方の耳も綺麗に再生している。
「俺の怪我もなおったようだ。小学生でこれだけの治癒魔法を使えるとは……。テレビの演出じゃなかったんだな」
光希も肩をぐるぐる回しながら言う。
「ちっちゃい頃は演出もありましたよー。今はそこそこ使えます。剣よりも魔法の方が得意ですもん、あたし!」
由羽愛は得意げにそう言う。
小学生らしい小柄な体型に長い黒髪のポニーテール。
顔色はよく、怪我もしてなさそうだった。
「いや、怪我はしてたんです。あのお姉さんに回復ポーション飲ませてもらったんですよ。……あのお姉さん、悪い人だったんですか?」
「ああ。お前の身体をのっとって自分のものにしようとしていた幽霊だったんだ。そのおかげで由羽愛が食われなくてすんだが……」
「そっか。お姉さん、悪者だったんだ……あたしを殺すために助けたんですね……」
寂しそうにえへへ、と笑う由羽愛。
「あのー、二人だけであたしを助けに来てくれたんですか?」
「いいや、最初は六人パーティだったよ、ミシェルを含めてな。だけど怪我をしたんで三人は地上に帰った」
「あたしも探索者を目指しているんです。ざ・ばいりんぎゃるずのことも少しは知っています。だって日本有数のSSS級パーティですから。凛音さんと田上さんと三原さんと門脇さんですよね。帰ったのは……?」
「田上と三原と亜里沙――門脇だ」
「じゃあ、凛音さんは?」
光希とミシェルは顔を見合わせる。
話して良いものか……?
そんな二人の困惑の表情を見てなにかを察したのか、
「あの……もしかして、……もしかして?」
「ああ……凛音は犠牲になった、が大丈夫だ、あいつは輪魂の法を使ったはずだ、まだその辺に魂として存在している。『入れ物』を用意してやれば復活さ」
可能性としてあるだけであって、確実にそうとは言えないのだが、由羽愛に精神的ショックを与えないためにも、光希は早口でそう言った。
「そっか……そうなんだ……。あの……申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる由羽愛。
「気にするな、俺達は成功報酬一人3500万円で潜ったんだ。リスクも全部自分で引き受けてこのダンジョンに潜った、プロの探索者だ。お前が謝ることじゃない。逆に、お前が謝るのは俺達や凛音に対して失礼だぞ。俺達はプロとしてプロの仕事をしているわけでボランティアじゃないからな」
今はとにかく由羽愛に余計な心労をかけないようにするのが大事だった。
まだ小学生の彼女になにかの責任を負わせるのは酷だ。責任があるとしたら彼女の周りにいた大人たちである。
それに実際の話、現状まともな回復魔法が使えるのはこの中で由羽愛だけだし、精神状態は魔力の大きさに影響を与える。
自分たちの生存確率を高めるためにも由羽愛に精神的負担をかけないようにするのは重要だった。
「まあ、早くリンネの魂を探してなにかの『入れ物』にいれてとっとと帰ろう」
ミシェルの言葉に、由羽愛が不安そうな顔で言う。
「あの……凛音さんの魂を探すってどうやって……? それに、『入れ物』なんてどこに……?」
「大丈夫さ。さっきの戦闘でいろいろ考えた。おかしな点がたくさんあったと思う。どう考えてもおかしいんだ」
「なにがだ、マスター?」
「どうして由羽愛がまだ生きていると思う?」
「は? だから、あのササノ・ツバキが保護していたからだろう? 『入れ物』にするために」
「違うな。いや、前半は正解だが、後半が違う。『入れ物』にするならすぐにすればよかった。わざわざ眠らせて保護する必要はない」
「では、ササノ・ツバキは別の目的があって……?」
「そうだ。そして俺の予想があたっていれば……。凛音を救うことができるかもしれない」
ミシェルは眉をひそめて、
「何を言っているんだ、マスター?」
「ここからは交渉力も必要になる。俺は得意じゃないんだが、仕方がない。だから、俺の知っている情報は悪いが全部は話せない。聞かれると交渉にならないからな」
「交渉……? 本当になにを言っているんだ?」
訝しげな表情のミシェルに背を向けて、光希はダンジョンの通路内に響き渡る大声で叫んだ。
「まだいるんだろう!? 出てこい、魔女!」
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