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5 真夜中の調査

真夜中の教会はとても静かだ。

降り続く雨の粒が窓ガラスを弾く音だけが聞こえて寂しげだ。

サリーは隣のベットでぐっすり眠っているけれど、私はちっとも眠れない。


暗い中目を凝らすと、壁掛け時計の針が12時を指すのが見えた。

日付を超えてしまった。

もう世界滅亡の日まであと1日しかない。


ちゃんと放火犯を見つけることができるだろうか。 


ノアは時間がないという割には余裕そうな顔で調査をしていて、私はじれていた。

ノアは犯人が複数犯だと確信すると満足して教会を後にしたけれど、そんなので大丈夫なんだろうか。

複数人いる、ということ以外何も掴めていないではないか。


そもそも、放火犯を捕まえれば世界滅亡を防ぐことはできるのか。

予言と違うことを起こせば、その先の未来が変わると思っていたけれど、火事が起きた時点で予言の書のとおりになっているとは言えないか。


「もっと予言について調べよう。

そしたら、未来を変える方法がわかるかもしれない。」


そう決心した私はベッドを抜け出した。


冷たい石畳の廊下を抜けて、私は教会の図書室へ忍び込んだ。

膨大な本の中から星詠みについての書籍を見つけるのは骨が折れた。


「やっと見つかった…!」


意外なことにその本は一番奥の棚、神父様が私たちにさわってはいけないといっていた場所にあった。

この一番奥の棚へ置かれるのは子どもたちが勝手に閲覧してはいけない本である。


「昨日星詠みについて私たちに教えたくらいだから、もっとわかりやすいところにたくさん置いてあると思ったのにな。」


闇の中でランタンの光を頼りに本を読みわかったことは、星詠みが盛んに行われたのは百年ほど前までだということだった。

蒸気機関車が走るような時代になると、星詠みはめっきり行われなくなった。


「どうして星詠みは行われなくなったのかな。

それに、どうやったら予言された未来を変えられるのか書いてないじゃない。」


肝心な情報が得られなくて、私はいらいらしながら読んでいた本を棚へ戻した。

そしてひときわ古い一冊の本を見つけた。


「なんだろう、これ。」


埃をはらって皮の表紙にランタンの光を当てる。

浮かび上がった文字を見て私は驚く。


「ノストラダムスの書…?」


著者名はノストラダムスと書かれていた。


「だって、みんなで読んだ予言の書は新品だった。

こんなに古いのじゃなかった…。」


いま話題になっている、予言の本、ノストラダムスの書。

それは最新の出版術で大量に剃られ、国中に配布されたものだ。


しかしいま私が手にしているこの古い本は活字ではない。


裏表紙を開き、出版年を確認する。


「書かれたのは、百年前だ…!」


これはいま国中に配られた予言の書の、百年前に書かれた原本なのだろうか。


私は世界滅亡の日に関する記述を探した。

本にはこう書かれていた。


始めは黒き雲のもたらす涙の大雨。

雨は幾月も降り続き、枯れた大地すら濁流に飲み込まれる。

その流れには百年生きた大木すら勝てぬだろう。

全てが流された後に訪れるのは天使の裁き。

神を信じた者は導きを受け、悪魔に魅入られた悪人は、地獄の業火へ連れ去られる。

そして終焉が来る。

メスィドール15日の朝、世界は滅亡する。



「予言の文が違ってる。」



いま国中で読まれている予言の書では、"涙の雨"が降り続くのは数日ではなかったか。 

それに雨の後に来るのは"大地の嘆き"と書かれていたのだ。

抽象的な表現に変わっている。


私たちは土砂崩れが起こったとき、これが予言にあった"大地の嘆き"だと思った。

でももし起こったのが地盤沈下や地震だったとしても予言が的中したと思ったのではないか。


さらに言えば、予言の書には火事についての明確な言及はない。

百年前の原本から察するに、天使の裁きとは死後の世界での裁きを意味しているのではないか。


全文を通して、現在の予言の書は現実に起こったことと結びつけられやすい表現に変わっている。


「星詠みができる聖職者が、予言をやり直したの?

それとも…。」


誰かが百年前の予言を書き換えて、国中にばら撒いた。

いったい、なんのために?



そのとき、後ろで物音がした。

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