#1 友との再会と新しいフレンド
新たな生活が始まったことを知らせる桜の花びらが舞い散る中、
俺たちはクラスが張り出されている大きな掲示板を見ていた。
「ねえ、あった?」
「いや、まだ見つかってない。」
俺は幼馴染の紬美奈と、自分がどのクラスなのかを探していた。今日から始まる高校生活。幼馴染の美奈が同じクラスであればボッチになることは避けることができるので一緒のクラスであってほしい。
「誠と一緒のクラスになってて〜。お願いします〜。」
どうやら美奈も俺と同じ考えだったようだ。
小さい頃から一緒にいるからやっぱり考えが似るんだな。
「一緒のクラスじゃないと、誠がボッチになっちゃうからお願いします〜。」
「いや俺の心配してたんかよ!」
自分でも思っていることだが、流石に失礼だと思う。そう思いながら、名前を探し続けると…
「あ、美奈の名前あった」
「え?どこどこ?」
俺が指をさすと、美奈は俺の腕に顔をつけ指の先を正確に見る。
「あ、本当だ!えーっと…k組か!あとは誠がおんなじクラスだったら〜…、あっ!誠もk組だよ!」
「ほんとだー。やったー」
「なんか、棒読みだよね。ワタシとおんなじクラスなの嬉しくないの?」
「あはは、冗談だよ。俺も美奈とおんなじクラスに慣れてめっちゃ嬉しいよ。」
ほをふくらませながら美奈が俺の手を握り、ブンブンと振り回す。
「痛い痛い。悪かったよ。」
「全く。冗談もほどほどにしないと本当に怒っちゃうからね。」
笑顔でそう言いながら俺の手を離してくれた。
俺はもう一度ごめんごめんと言い、また掲示板に目を戻した。同じクラスの人の名前をすこしでも覚えておこうと思ったからだ。
上から順に読んでいっていると、見覚えのある名前があった。
「美奈、あの名前って…」
「やっぱり、見間違いじゃないよね。」
そこにはかつて転校していったもう一人の幼馴染の名前があった。
「もしかして、俺等に秘密でおんなじ高校に入学してるんじゃないか?」
「まさか〜。だって夢君は、北海道に引っ越したんだよ?わざわざこっちの学校来ないよ。だーかーら、この人はただの、おんなじ名前の他人だよ。」
「おんなじ名前の他人なんかじゃないぜ」
後ろから聞き覚えのある声がした。
振り返ると、そこにはかつて転校していった幼馴染、夢中和希がいた。
「かず!」
「夢君!」
「よ!久しぶり!あいたかっ…とわぁ!」
美奈がかずを見るなり泣きながら胸元に飛びついた。
「おい紬、俺に会えたのがそんなに嬉しいのかよ」
「だっでぇ、だっでぇ、三年も会えでながっだんだよぉ。うれじいにぎまっでるよぉ。じがもざいぎんれんらぐもながっだじざぁ」
「ごめんごめん、実はお前らを驚かせるためにあえて連絡しなかったんだよ。あと、普通に勉強めっちゃしてたんだ。お前ら、頭いいからスポーツ推薦あってもめっちゃ勉強しないといけなかったんだ。」
笑いながらかずはそう言っていたが、相当な努力をしたのだろう。
この高校は県内でもかなり頭のいい高校だ。しかし、かずは勉強ができるわけではない。中学では赤点ばっか取っていたというし、この高校に来るためにどれだけ努力したかが分かる。
「ほんとにすごいな!あんな馬鹿だったかずが、俺たちとおんなじ高校に入れるなんて夢にも思ってなかったよ。」
「おい!いくら俺がバカだからってそんなストレートにバカって言うなよ。傷ついちまうだろうがよ!」
話が盛り上がっていてあんまり気にせずにいたのだろうが、少し落ち着いてきたところで、かずの顔が思い出したかのように赤くなっていった。
「あ、あー、あのー、つ、紬、さん、いつまで…その…だ、だきついてるんだ?さすがに、恥ずいん、だけ、ど…」
「あわわわわ、ご、ごめんね、つい、久しぶりに会えた嬉しさで…」
そういってすぐに離れる2人。
今の会話の間、美奈はかずの胸にずっと顔を埋め、顔を擦り付けていた。
ふたりともめちゃくちゃ顔を赤くして別々の方向を見ている。
美奈は指をいじりながら下を向き、
かずは頬をかきながら斜め上を見ている。
うん、やっぱりこの2人のこの雰囲気、最高だねぇ。
このシーンを後で思い出しながらご飯2杯は食べよう。
この甘い空気をもっと吸っていたいが、今回は2人に用件があるので、不本意ではあるが、一度この空気を壊したいと思う。
「すぅー…。そういえばさ、二人にこれを渡そうと思ってたんだ。」
そう言って俺はカバンからほんの少しだけ分厚目のミサンガを取り出し、2人に渡した。
「なに?これ?」
「三人の友情は絶対に切れない!っていう意味を持たせたミサンガだ。ほら、三人とも一緒だろ。なんとこれ、俺の手作りなんです!」
「おーすごい!こんなの作れるんだ!」
「めっちゃいいなこれ!てか、よく3人分持ってたな。
…もしかして誠、俺がおんなじ高校に入学するって知ってたのか?」
「あはは、バレちゃったか〜。実はお前と連絡が取れなくなってから、かずのお母さんに電話して話は聞いてたんだよ。」
「おーい。なんで言っちまうんだよ母さんは〜。せっかくめちゃくちゃ驚かせる予定だったのに〜」
頭を抱えながらかずが母を恨んでいると、
「…ねえ、誠。なんで教えてくれなかったのかな?」
怒った笑顔で美奈がずいとこちらに詰め寄ってくる。
俺は一歩後ずさりながら
「ごめんって、教えないほうがおもし…ん”っん”〜。再会した時の嬉しさが大きいかなーって思ったんだ〜…。それに多分かずも驚かせようとしてるんだろうと思ったから…。」
やべ、本音が少し漏れた。これは説教コースかなぁ…。
「…はぁ、しょうがないから今回だけは許してあげる。久々に会えたんだし、たくさん話したいことがあるからね。」
やれやれって感じで許してくれた。
ほんと良かったー。もし本当に怒ったら3時間ぐらい説教だったと思うから良かった良かった!
「でーも、ちゃんと次からは私にも教えてよね。隠し事はなしなんだから!わかった?」
「はい!」
「夢君も!」
「はい!」
俺たちは背筋を伸ばしながら返事をした。やっぱり高校生になっても美奈には逆らえないらしい。
「よろしい!と、いうことで、そろそろ教室に行こう!このままここで話してたら邪魔になっちゃうしね。」
「そうだな!」
そういって、満足気な表情の美奈とかずが歩き出した。俺も少し遅れてその後をついて行く。
そうそう、お気づきだとは思うが、これは俺の恋物語ではない。こいつらが主人公の恋物語だ。
ちなみになんだが、まだこいつらは付き合っていない。
ここ、超重要。
ーーー
入学式が終わり、俺たちは教室についた。
席を確認すると、かずと美奈が窓側で隣同士の席で、俺はその斜め後ろか。
ここの席、まじで神ポジションすぎじゃないか?
なぜかって?、まあ、それは後々わかるでしょう。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴り、オリエンテーションが始まった。
「えー、この度お前らの担任になった、富田理子だ。一年間よろしくなー。次はお前らのことを教えてくれ、そっちから順に自己紹介してけー」
富田先生はもの凄く簡単に自己紹介をし、生徒たちに自己紹介をさせはじめた。この先生、かなり適当な人のようだ。
ー
「はじめまして、夢中和希っていいます。好きなことは泳ぐことです。中学でも水泳をやってました。この高校でも続けていこうと思っています。一年間よろしく!」
「はじめまして、紬美奈といいます。いろんな人と仲良くなりたいので、気軽に声をかけてほしいです!一年間よろしくお願いします。」
ふむふむ。やはりこの二人は人気が出そうだな。
かずが自己紹介したときはかっこいいねとか周りの女子が言っていたし、
美奈の自己紹介のときは男子がめちゃくちゃレベル高くねーかなど口にしていた。
おっと、もう次が俺の順番だ。ここは俺も馴染みやすそうな奴だってアピールしておくか。
「えーっと、歓喜誠です。趣味は人間観察です。中学の頃からしてきたので、一ヶ月くらい一緒に過ごしたら、どの人がどの人とどんな関係なのかをなんとなく当てることができます。よろしくお願いします。」
パチパチパチ…なんだか俺だけ拍手の音が小さい気がする。気のせいだろうか。もしかしてこの自己紹介キモかったか?そう思い2人の顔を見ると、二人とも引いてるときの苦笑いをした。
あぁ…。俺、いきなりやらかしたっぽい…。
俺は一人深い絶望を感じながら皆の自己紹介を聞くのであった。
自己紹介も終わり、何故かもう係も決め、
かずが学級委員長、美奈が副委員長、俺はクラスの会計、そして書紀は隣の席の小井沼 澪さんという人がなった。
ちょうど決め終わったタイミングで鐘が鳴り、
「はい、じゃあ今日はこれで終了でーす。かいさーん。あ、そうだ、もし席変わりたい人とかいたら交渉して勝手に変えていいからなー。」
そう言い残し先生は教室を飛び出していった。
その様子を全員がぽかんとした様子で見ていた。
なんか、変な先生だなぁ。そう思っていると、
「あの…」
隣の席から小さいが透き通るようなきれいな声が聞こえてきた。
ええっと確かこの人は書紀の…
「小井沼さん、だったよね?よろしく」
「よろしくお願いします。」
初めて喋る人だからか、それとも2人ともコミュ力がないゆえのものなのか、しばらくの沈黙が続いた。さすがに気まずくなった俺が先に口を開く。
「えっと、どうしたのかな?」
「あの、席、変わってくれませんか?」
「…理由を聞いてもいい?」
「見たいものが…あるんです。」
そういって小井沼さんは窓側に視線をやる。
俺は窓側に向いた視線の意味を考える。
見たいものがあるっていったよな…。その視線の先にはかずと美奈がいる。
あー、はいはいはい、なるほどね。全部理解した。ということはね、はいはいはい。
まあ、無理もないか。かずはイケメンだし、一目惚れしても何もおかしなことではない。
この人の恋を見るのも楽しそう。応援してあげたい気持ちもある。
だが!かずみなのカップリングは絶対なのだ。
だから俺はこの人の恋を応援することができない。すまない、小井沼さん。
「あーごめん!それはできないかな。それに、俺もここの席がいいんだ」
「…そう、わかった。無理言ってごめんなさい。」
あれ?やけにあっさりしてるな。俺の勘違いで別に見たいものがあったのか?でもたしかに2人の方を見てたから可能性あると思ったんだけど…。色々考えていると、
「誠!早く帰る準備して。今日は夢くんのお帰り会するんでしょ。」
「ああ、ごめんごめん。すぐ準備するよ。」
さっきも思ったがいくら考えても仕方がないよな。
しかも人の恋を止める権利なんて俺にはないんだし。
俺はさっと鞄に筆記用具だけ詰め込み、
「それじゃ」
小井沼さんにあいさつだけして二人と一緒に教室を出た。
ーーー
「誠〜、屋上に飯食いに行こうぜ〜」
「ちょっと先に行っててくれないか。さっきやってこいって言われた問題がまだ残っててさ。」
「ちゃんと答え見ずにやってるのか。さすがだな〜。じゃあ俺等先に行っとるわ。」
「…ああ。わかった!」
かずは後で答え見てやるつもりか…。そんなんでテストは大丈夫なのだろうか。
まあ、テスト前になれば、必死に勉強するだろう。
とりあえず、さっさと終わらして飯食いに行くかー。
3分ほどで終わらせ、飯を持って屋上に行く途中
ブブブブブ
ミサンガが震えだした。まずい、急いで屋上に向かわねば。
屋上に向かうための階段に到着すると、屋上の扉付近に誰かがいた。
あれは、小井沼さんか?なんでこんなところに…。
しかもなにやら屋上を見てるっぽいぞ?これはやっぱり…。
ブブブブブ
はっ、今はそんなことよりも、早く二人のところにいかないと…!
一気に階段を上りきり、屋上に出ようとする俺を小井沼さんが止めてきた。
「待って!行っちゃだめ!今すごくいいとこなのよ!」
止められると思っていなかった俺は少し驚いたが、ミサンガの振動がさらに大きくなっている。
「俺はどうしても2人のとこに行かないといけない。ここで実らせるわけにはいかないんだ!」
「ちょっと!」
小井沼さんの静止を振りほどき、オレは屋上にいる2人のとこにろ大声を出しながら行った。
俺が来たのに気づいた2人は顔を真っ赤にしながら少し離れた。
雰囲気的に結構ギリギリだったみたいだ。何があったのか、ものすっごく知りたいが、
それに関しては知るすべもないししょうがない。今後の改善点だ。
そういや小井沼さんには恩を売ってしまったな。かずみなカップルの成立を食い止めたわけだし。
あれ?でも俺を止めてきたあたり、告白を見てあきらめようとしてたのか?
でもなんかあの感じは違うような?
まあいいや、今は俺が空気をぶち壊してしまって気まずい沈黙が流れてるんだ。
それをどうにかしよう。
ーーー
入学からしばらくたち、今日は俺と小井沼さんが日直の日だ。
いつもは3人で登校しているのだが、今日は俺がいつもより速いので、2人はあとから登校する。
「ふー。終わったー。」
予想よりも早く仕事が終わってしまった。初めての日直だったのでだいぶ早く来てしまったが、
あんまりやることもなかったな。時計を見ると、かずと美奈が来るまでまだ少し時間がある。
てか、どうしよ。まだ誰も来てないよ。もうちょいしたら二人が来るけどさ、
結構無言の時間が続いてさすがに気まずいかも。そう思ってると、
「ねえ、なんであのとき二人の邪魔をしたの?」
急に小井沼さんが聞いてきた。
「あのときあなたが邪魔しなかったら今頃2人は付き合ってたのよ。…まさか、あなた、紬さんのことが…!」
「いや違うから!美奈のことは幼馴染として好き…、これはなんか恋愛的な意味にも聞こえるか?とにかくね、俺は美奈にそういう気持ちはいだいてないから。」
変な勘違いをされているようだ。何をどうなったら俺が美奈のことを好きだと思うのだろうか。
「そうなの?紬さんにしょっちゅうくっつかれて、顔には出てなかったけど内心では『やべー、くっつかれてるよー。きゃー近い近いいい。めっちゃ良い匂いがするよー!』みたいなこと思ってるんじゃないの?」
「そんなわけないだろ!」
なんて人だ、俺のことそんなキモいやつだと思っていたのか。それにその理由なら普通は必要以上にくっついてくる美奈が俺のこと好きになってるだろ。やべーよ、この人。
「ていうか、小井沼さんこそかずのことが好きなんじゃないのか?」
「はぁ?、なんでそうなるの?あの二人の間に割って入ろうとするわけないじゃない。」
「でも、入学式の日だってかずの方を見てたし、授業中もチラチラ見てるよね?この前も屋上にいるかずのこと見てたんじゃないのか?」
「違いますー。私が見てたのは夢中君と紬さんの二人ですー。別に夢中君だけのことを見てたわけじゃないですー。」
「そうなのか?じゃあ、なんで二人のことを見てたんだ?」
「ふふっ、それはね、入学式の日にあなたたちを見かけた時に感じたのよ。あの二人のものすっごてぇてぇオーラを!それからも見てたらすごく甘酸っぱくて初々しくて、尊すぎるものが見れたわ。だから思ったの。私はあの2人のことを推していこうって!」
めっちゃ興奮気味に話す小井沼さん。
なんだこの人、なんか思ってたイメージと全然違うんだけど。てぇてぇオーラってなんやねん。わからないわけではないけども。てか、もっと大人しそうな感じの人だと思ってたんだけど、全然ヤバい人じゃん。 それに話聞く感じ、この人も、もしかして…
「小井沼さんは、恋愛において、どんな時が一番楽しいと思う?」
「?、そんなの付き合うまでのあの甘酸っぱい時間でしょ。何を分かりきったことを聞いてるの?」
やっぱりだ。この人はたぶん俺と同じだ。
「そうだよね。オレもそう思う。だから俺はあの日、2人の邪魔をあえてしたんだ。」
小井沼さんは俺の言ったことの意味がまだ分かってないようで頭の上に?を浮かべている。
「もちろん、俺はあの二人にはいつかくっついてほしいとは思ってる。
俺にとってあの二人はめっちゃ大事な幼なじみだから、二人には幸せになってほしい。
だけど!少しは俺も楽しんでいいじゃないか!
中学ではさ、かずが引っ越ちゃったから甘酸っぱい空気を全然味わえなかったんだ!
でもこうやって三人揃ったんだ。少しぐらい楽しんでもいいじゃん!
それにすぐにくっついちゃったら俺めっちゃ居づらいじゃん!」
「ふーん。なるほどね。そういう意図があってあのとき邪魔したんだ。」
「そうなんだよ。小井沼さんならこの気持ちが分か…」
「シンプルにキモい。」
「な、なん、だと…。」
この人となら分かりあえると思ったのに。キモい、だと…。まあ確かに客観的に見てもキモいとは自分でも思うけどさ。はっ!てかこれマズくないか。このことあの2人に言われたら…。
まずい!まずすぎる!あの2人と仲が悪くなるなんて嫌だー!!言ったことを深く後悔していると、
「まあ、キモいけど気持ちが分からないわけじゃないわ。人の恋愛を見るのはとても楽しいし。」
「私もあなたと同じ立場だったら同じことをしてたかもしれないし。」
「そうだよね!やっぱり分かるよね!」
「いや、ちょっとわかるかもってだけで…」
「よし、俺の気持ちがわかるなら、俺と傍観者フレンドになりましょう!」
「…?傍観者フレンド?なに、それ?」
「ふっふっふ、説明しましょう!傍観者フレンド、略して傍フレは、かずみなの恋の甘酸っぱさを共有する関係のことです!」
「なんかそれキモい気がするんだけど…。」
「やめてください。キモくありません。」
俺は真顔で答える
「その関係になっても別にメリットなさそうだし、できればなりたくないんだけど。」
「メリットがない?本当にそうかな?」
どういうこと?と、首を傾げている小井沼さんに俺は説明する。
「俺と傍フレになれば、なんと!あのかずみなを近くで見ることができます!」
「な、なんですって!」
「さらに!これだけでは終わらない傍フレ特典!なんと!かずみなの昔の激甘エピソードを僕から聞くことができます」
「ファッッッ…!」
豪華特典すぎて声になってないような声がでている。
さらに今の特典を聞いて頭を抱えて考え始めたぞ!
これでなってくれそうだ!頼む!なってくれ!じゃないと俺はあの2人にバラされないか心配で寝られなくなっちまう!
「さあさあさあ、どうしますか!なるんですか?、ならないんですか?」
「っく…。キモい人になっちゃうけど、でも…、くっ…」
「おい!キモいっていうんじゃない。ほらほらほら〜さっさと決めないと傍観者フレンドになれるチャンスを逃しちゃうよ〜。」
「ま、まってよ!今考えてるから!」
おいおいおいそんなに考えなくてもいいだろう。
あんた話した感じ、めっちゃ恋愛オタクやん。ならもうなるしかないよね?めっちゃ豪華特典やん。なんか推しみたいなノリなんやろ?あんたのそれ
そんなにこの関係になるのが嫌なのか?
えっ、てかそんな葛藤することなのか?みてみ、あの顔。まるでビーガンになったライオンの目の前に生肉置いたときみたいな顔してるよ。
えっ。まって。そんなにキモいんか、オレの立ち位置?オレそんな自覚なかったんだけど…。
「…分かった。なる、わ、その、関係に。背に腹は、代え、られ、ないもの。」
「いや、なるって言ったのにめっちゃ嫌そうな顔するやん。…はぁ。まあこれからよろしくな。
あ、なるにあたってなんだけど、絶対にこの関係のことは他言無用でお願いします。」
「わかってるわよ。こんな関係をしてるなんて人に言ったら絶対キモがられるもの」
「…」
キモくないしって言おうと思ったけど、こんだけ言うってことはやっぱキモいことだったんやな…。自覚しました…。はい…。
「はい!じゃあ早速教えてちょうだい。かずみなのエピソードを。
そのためにあなたと傍フレ?になったんだから」
切り替えが早い人だな、さっきまであんなに嫌がってたのに…。
「分かった分かった。じゃあ今日はかずと美奈がお互いを好きになったであろう時のエピソードをお話しましょう。あ、後でこの前屋上で会ったこと教えてくださいね。」
「分かったわ!後でちゃんと話すから早く教えてちょうだい!」
もう待ち切れない様子の小井沼さんに俺は話した。
話してる最中、何度か上を向いて涙を流していた。この人、やっぱ俺よりやべーよな?
傍フレになる相手、間違えたかな?
まあでも、同じような着眼点がありそうだから詳細までしっかり聞けそうだし、良かったのかな?
そんなことを思いながら、俺は小井沼さんに話し続けるのだった。
途中、ドアを開く音が聞こえてきたがきっと気の所為だ。気の所為じゃないと困るんだ。
だってもし見られていたら、俺が小井沼さんに何かを言って、小井沼さんがそれで涙を流している構図。そんなん俺が小井沼さんに酷いこと言って泣かしてるみたいに見えてると思うし、
頼むからこれ以上俺がやばいやつだって思う人がでてきませんように…。