未来
シャワーの水音が聞こえる。
(今日は、ほとんど明のことでつぶれたな。ハアー。しかし、今の明『女の姿』の時に会っていたら俺の気持ちも変わっていたのだろうか?
いや、もう過去のことだし考えるのはやめよう。彩さんがやっと俺に前向きになってくれているんだし‥)
(ん、ん?) お風呂場から声が聞こえる? 耳をすませると、彩さんに呼ばれていた。
「ごめーん。ちょっと、頼まれごとがあるの」
俺は、急いで風呂場へ行く。
「どうした?」
「あ、の、生理用ナプキンとショーツを買ってきてほしいんだけど‥」風呂場の扉から、顔だけを出している。
(そ、そういうことか。恥ずかし気な顔がまた、可愛らしい)
「わかった。こだわりのメーカーとかある?」
「ううん、何でもいいわ。でも、夜用っていうのにしてほしいの。ショーツはМサイズでお願い。お金は、立て替えててくれる?」 早口でこれだけ言うと扉は閉まった。
「わかった夜用だね。別にお金は払わなくてもいいから。じゃあ、行くわ」
□□◆◆
コンビニに着くと、深夜だというのに5人ぐらいの客がいた。なるべくなら、誰もいて欲しくないんだが‥。
「いらっしゃいませー」深夜でも、元気な掛け声の店員。 自分でとりあえず頼まれたものを探してみるが見つからない。
でも声に出して聞くのも恥ずかしいので、もう一周店内を周ってみる。
「あ、あの。せ せ」諦めて、レジ前にいる学生バイト風の男に声をかける。
「はい?」
「あ、あの」それでも、なんだか言葉にだせない。
「良かったら、このメモ用紙を使ってください」と、紙とボールペンを手渡される。
「あっ、ありがとう」
(こいつ、見かけはボオーとして見えるが気が利くなあ) 出されたメモ用紙に、彩さんから頼まれたものを書いた。
「よかったら、持ってきますね。サイズはМでよかったですか」
「あっ、はい。助かるよ」神対応の店員さんのおかげで、難なく買い物をすませられた。
◇◆▽◇◆
私ったら、翔太になんてことを頼んじゃったのかしら‥きっと、恥ずかしい思いしているわよね。ふっー、武人の時はピルを飲んでいたからこんなことはなかったのに‥。彼と別れてから、薬は止めていたから。
考えたら翔太にはいつも受け止めてもらって、自然体でいれてる。
ううん、それも違うわね。私の方にいつも合わせてもらっているのよね。
◆○◆○
深夜の静けさの中、翔太はコンビニの帰り道を急いでいた。手には彩さんから頼まれたナプキンとショーツが入った袋がしっかりと握られている。
俺の心臓は普段の冷静さを失い、鼓動が速くなっていた。
「ただいまー」
家に帰ると彩さんが風呂場から顔を出し、恥ずかしそうに微笑んだ。その笑顔に翔太は胸が締め付けられる思いだった。彼女の存在が、今の自分にとってどれほど大切かを改めて感じられたから。
「ありがとう、翔太。こんなこと頼んじゃって…」彩さんの声は、少し震えていた。
「いいんだよ、彩さん。僕は君のためなら何でもするから」翔太は真剣な眼差しで答えた。その言葉には、彼の深い想いが込められていた。
◆○◆◆◆
夜の静寂が部屋を包み込む中、翔太はベット脇に座ったり横になってみたりと落ちつかなかった。
「あら、まだ起きていたの?」浴室から出てきた彩さんは、いつもの様子に戻っていた。
「悪いけど、明日は早いから先に寝るわね」そう言いながら、ベットの壁際までよってから身体を横たわる。
そんな彩に翔太は後ろから抱きついていた。お互いの体温を感じながら寄り添う。
「おやすみ、彩」
「これじゃあ意識して寝れないわよ。でも、寝なきゃあ」後ろを向いたままの声が、小さくなっていく。
そのまま、翔太はしばらく無言で彩を抱きしめていた。
「これからもずっと、一緒にいてくれる?」
「‥もちろんよ。それと考えたんだけど、正社員を辞めようと思うの。私って不器用でしょう?このままじゃあ、また仕事に没頭してしまう‥だから、パートで週3日とかにしてもらおうかな。しし 翔太‥と、いろんな所へ出掛けたり二人の時間も大事にしたいから」壁際に向かいながら、それでも彩の声は慎重に語っている。
「本当は仕事に没頭させてあげたいけど‥確かに俺のことは忘れさられるおそれがある。だから、そうしてくれる⁈
それと、ありがとう。俺の名前呼んでくれて…俺との今後のことも考えてくれて…やっぱり大好き‼」
後ろから更に抱きしめられた身体は一層密着していく。
お互いの鼓動を感じながら二人とも静かに睡魔に襲われていった。




