明の心の変化
「遅ーい」明は、俺たちを見ると不貞腐れたような表情をした。
「誰のせいだよ。まったく!!」と、俺は悪びれたところのない明を、少し睨む。
「何食べたの?美味しかった?」彩さんは、明の前にある空の食器を見ながら言う。
「うん、美味しかった。ご飯が食べたかったから、野菜も付いていたし照り焼きセットにしたの」綺麗に平らげた食器を前にして嬉しそうに笑う。
(バカかこいつ。こんなことで幸せそうに笑うなんて。一緒にいた頃は野菜なんてほとんど食べなかったじゃないか…。涙がふいにでそうになり、慌ててトイレに行くと言って離れる)
「彩さん、ごちそうさまでした。それから、あんなことをして本当にごめんなさい。もう私、そのう。翔太を困らせたくないから帰るね」翔太の姿が見えなくなると明は、そう言ってサッと席を立った。
「待って」彩は、慌てて明の腕を掴む。
「‥‥」
「もしあなたが今の生活に、少しでもこんなはずじゃなかったと思うなら、修ちゃんという人と離れて一人でやり直してみたいと思うなら話を訊いてくれない⁈」
「何いってるの?修ちゃんと別れる?一人になる?無理だよ、そんなの。私、バカだから一人じゃ何も出来ないもの」
「修ちゃんって人は、あなたを幸せにしてくたの⁈仕事を増やしてもあなたは家賃も払えないし、ご飯もまともに食べれてないじゃない。それに、あなたはバカじゃない。翔太に聞いたけど、教育は確かに受けていないかもしれない。でも、さっきの翔太の態度で帰ろうと思ったんでしょ。人としての思いやりがあるもの。もちろん、私にしたことは簡単に許されることじゃないけど」
「‥‥止めて、止めて、それでも‥‥私は幸せな のよ。ううっ、うう」明は突っ立ったまま言葉に詰まりながらも、目からは涙がこぼれ落ちていた。
それを咄嗟に他の客から隠すように、彩は明を抱きしめた。
「おい、おい何やってるんだよ。女どうしで公衆の面前で抱き合って」
「えっ⁈」
「あっ」
翔太の声に二人は、パッと離れる。
「うふふっ」明の半べその顔に
「やらかしたわね」と彩も舌を出す。




