明
黙々と、ハンバーガーを二人は食べ終えた。
「家でゆっくりしたいから、もう帰りたいんだろ⁈」翔太が、先に言葉を発した。
「ええ、そうね。今日はありがとう。また、メールするわね。それから、ここの勘定は出してもらうわ。ご馳走様」気まずい不いんきの中、彩は話を続ける。
「僕は、1か月以内に彩さんの親御さんに会いたい。僕の両親は早く○んだから、親代わりの祖父母に会って欲しいんだ。それから3か月後には、身内だけを呼んで簡単な式をあげたいと思っている。仕事先の音楽関係者とか、全員呼んだらすごい数になるからな。次に会うまでに、彩さんの意見も聞かせて」怒こった延長線上といった、無表情な顔つきで淡々と伝える。
「!!そ、そうね。二人の将来をちゃんと考えなくちゃね」3か月かあ。は、早い。でも、そんなこと言える状況じゃないな。とにかく、帰ったらシャワー浴びて早く寝よう。それから片づけして、簡単に何か食べて、明日の仕事の段取りをetc.
「ここから、家近いから車持って来ようか⁈ 結構な荷物だから」
「ううん。大丈夫、通りでタクシー拾うわ」
「そう。じゃあ。タクシーが捕まるまで送るよ」
「あっ、うん。ありがとう。でも店の出口まででいいわよ」いけない、また。
「じゃあ、また」1階の店の出口で、そっけない態度に半ば慣れたように翔太は答える。
「うん、ありがとう。今日は、再会出来て嬉しかったわ」
「ああ、じゃあ。また」
なんだか、今日こそは彩さんとの距離がちじまると思っていたのに、浮かれていたのは自分だけだったのか。でも、結婚の意志は伝えたんだし今後の成り行きを見守ろう。大きな紙袋を両手に抱えて帰る後ろ姿を、ボッーと未練たらしく翔太は見ていた。
「‥!!」ん、勘違いか? 若そうな女が、彩さんの後ろをついて歩いているような気がしていた。まさか、推理小説でもあるまいし、気のせいか?でも気になるので、その女の後ろをついていくように翔太も歩き出していた。
すると、大通りでタクシーを拾おうと身を乗り出した彩さんに、その女は近づいていく。
「おい、おまえ何するんだよ」翔太はその女のもとに走り寄り、身体を捕まえる。
「いっ痛ーい。何するのよ。あっ、翔太」
その女は、振り向きざまにハスキーな声で俺の名を呼んだ。
「し、翔太?」翔太と言った声に後ろを振り返った彩は、先ほど別れたはずの翔太が若い女の両肩を押さえているのを視界に捉えた。
「ど、どうしたの?」彩は、その若い女を見て一瞬天使のようだと思った。
「お、おまえ明か⁈」
「そうよ」悪びれないように、答える
「おまえ、どうして彩さんを道路に突き飛ばそうとしたんだ」
「そ、そんなことしてないわよ」
「しただろ。いますぐ、警察呼んでもいいんだぞ。周りに人がいっぱいいたしな。証言もしてくれるだろう」
こっちへ来いと言って、道路から少し離れた所へ移動する。
「!!‥‥と、とにかく私が関係しているんだったら私も立ち会うわ」と彩。
「いや、いいよ。こいつは、俺の知っているやつだから。何とかするから、彩さんは先に帰って」
「よくわからないけど、私、殺されかけたんでしょ⁈。理由をはっきり聞かなきゃあ」
「翔太のヒット曲を聴いて、 悔しかったのよ。で、たまたま二人を見つけて‥‥別に殺そうとしたわけじゃないわよ。幸せそうな二人が妬ましかったのよ。この女が歌詞に出てくる彼女なんだって。思ったら憎たらしくなって」
「相変わらずの自分本位だなあ。出て行ったのは、おまえの方だろう」
「だって、私をいつまでも受け入れてくれなかったのは、翔太でしょう」
目の前にいる天使は、少し悲し気な表情になる。彩は前に翔太が話してくれた、同性相手だとわかった。
「と、とにかく喫茶店でも入りましょう」
「おい昭、ちゃんと謝れよ。それから、全部おまえの奢りだからな」
「わ、私お金ないわよ」と、悪びれもせずに明は言う。
近くにある昔ながらの喫茶店に入る。
「じゃあ。おまえは水な」
「えっー」
「えっーじゃないだろ。」




