6月後
「彩さん、どう仕事慣れた?」
声のする方を見ると、同僚の三上 真奈美と立花 梨花である。
真奈美には、この会社に入ってからずっとついて仕事を教えてもらっていた。自分より4歳も若いが、仕事も出来ていろんなトレンドも抜かりなく身に着けている。そして、入社1年目の梨花と気が合うのか。ほとんどいつも一緒にいた。
「あっ、はい。まだまだ覚えることはありますけど、マイペースでやっていきたいです」
「何いってるのよ。前の会社ではキャリアウーマンだったんでしょ。なんでもこなせるんだから、1年もしたらほとんど教えることないわよ」
「わあ、すごい。真奈美先輩に褒められるなんて!!」
「そんな、すごくはないんです。不器用だから人より時間がかかったんですよ」
「私と一緒で、男より仕事を選んだのかしら⁈ なーんて、あまりプライベートに立ち入ったら嫌われるわね」
「いえ、まだまだ諦めていませんよ」
「婚活しているの?」
「話が盛り上がりかけているところ、すみませんが少し質問が‥」
「また、その話?んとに、彩さん悪いけど聞き流してもいいから」
「⁈」
「今、5年前に突然休業したシンガーソングライターの歌が大ヒットしているの。その歌詞が、元彼がくれた白いワンピースを捨てた頃に、僕らはまた出会えるかなっていう歌詞があって‥」
「うふふ。聞きたいことは、わかったわ。私もこの服ばかり着ているけど、違うわよ」
「ほらね。それに、麗奈っていう同じようなシンガーソングライターがいて、その二人が付き合っているんじゃないかって噂もあるでしょ」
「やっぱ違ったか。でも身近な人がその歌詞の主人公だったりなんかしたら、感動的だなって思ったけど。彩さん、綺麗だし‥」
「あら。梨花さん褒めてくれても、何もないわよ」と手をブラブラして見せる。
「うふふ、面白い人ね。今度、三人で合コンでもしない⁈」
「先輩たちに勝てるものは、若さだけね」と梨花は笑う。
「ごめんなさい。今、実家のことでいろいろ忙しくて‥今度にしてくれる⁈」
「やっぱ、怪しいなあ」と二人に見つめられる。