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お見合い  作者: いづる
10/29

第10話 翔太と

 彩は、目覚まし時計の音に無理やり起こされながらもボタンを止めて、また眠りについた。わずか10分後にまた容赦なく一段と大きく鳴り響く。

『リリリリーン』


「ううーん」大きく伸びをして、観念したようにベットから起き上がった。

 そして、いつものように朝食の準備を始める。


 パンとコーヒーと卵が基本メニューだ。

 日によって、果物や野菜をプラスしたりする。

 今日はこんがり焼いたパンにバターを乗せて、それと熱いコーヒーとゆで卵をプラスした。

 ボッーとした頭で支度をはじめても、作り終わる頃には頭が冴えてくる。

 冷めないうちにそれらをプレートにのせて、テーブルに運ぶ。

 スマホを確認すると、翔太から何件もの着信履歴とメールが来ていた。


 熱いコーヒーを飲みながら見ると

『嘘つき、昨日電話終わったら掛けるって約束したのに!』


 そしてこんがりとしたパンをかじりながら次を読む。

『前にも、約束破られたっけ』


 口の中に残っているパンをながすように、またコーヒーを飲む。

『信じられない』だの、朝から頭が痛くなる内容だ。


 今度は、ゆで卵に塩を振って一口かじる。


『昨日は、本当にごめんなさい。もう、眠くて眠くて。今日、休みだからよかったら会わない?』謝罪を込めて、考え考え文字を選びメールを発信する。


「許すよ。会う」すぐに電話が、かかってきた。


(やけに、は、早いわね)


「掃除や洗濯を一気にすませたいから、お昼からでもよけれは」


「うん、いいよ。約束は絶対守って」


「わかったわよ悪かったわ。でも、昨日は疲れちゃってて不可抗力よ。そういう時は勘弁してよ。断りのメールだって送ったんだから。それに、そっちが勝手に待っていると言ったんだから」あっ、いけない。また言い過ぎた。


「でも、彩さんだってわかったって返事しただろう。それに、俺は『そっち』という名前じゃない。‥‥昨日の長電話も彼氏からで、そのまま寄りを戻すとかそういう内容か⁈とか思ったらあまり眠れなかったし」


「‥‥ごめん。心配かけて。でも、電話相手は武人じゃないわ。とにかく今から、家事の山をあらかた片付けてからメール送るわ」なんだか、面倒くさいなあと思ってしまう。武人とは、こういうことは一切なかったのに。


『家庭環境が複雑で。自分は自分も含めて一生誰も愛せないと、口癖のように言っていた‥』奥さんが言っていた言葉を思い出す。


 だからなのか、翔太のような子供っぽさというか感情をあまり表に出さなかった。私も先輩という意識がいつもあったから、こんな些細なことで言い争うこともなかったのに‥。



(俺は『そっち』で、彼は『武人』かよ。ちぇ、面白くない。それでも、会わないかと言ってくれたのは嬉しい‥でも、彼と寄りを戻したのかっていうことには、はっきり否定しなかったのが気になる)


「メールくるのを、待ってるから」それだけ言うと翔太は電話を切った。

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