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お見合い  作者: いづる
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超優良物件

 レストランのラウンジでお見合いは、始まっていた。

丸いテープルの両向かいに私(森下 彩)と相手(竹林 翔太)が座り、仲人の峯田 孝子ーおばちゃんは、私たちの間に位置する所に座っていた。


 「今日は、貴重なお時間をいただきありがとうございます。この日を境にしてあなた達の未来が築ける手助けができるのがとってもうれしいわ」終始にこやかなおばちゃんは、パーソナルカラーだと言っていた紫のワンピースを着ていた。


「まずは、コービーを召し上がって」と、事前に注文した飲み物をうながす。


アイスコーヒーにシロップを入れかき混ぜる。氷の音がカランカランとグラスにぶつかり涼し気な音をたてている。相手の男もホットコーヒーを何もいれていないのに、スプーンでかき混ぜている。


お見合いを進められた時の孝子おばちゃんの言葉を思い出しながら、ぼんやり目の前にいる男に視線を移す。目の前の男は、髪の毛の下方は刈り上げられていて、上の髪の毛を7、3分けにした今風の髪型だ。そして眼鏡をかけている。その顔は、年齢よりもさらに若く見える。


「超優良物件だから、他の人にはもっーたいなくて。彩ちゃんに一番に持ってきたのよ。見てみて」と、やや興奮気味にA四の紙にコビーしたプロフィールと写真を手渡された。にもかかわらず、横からはおばちゃんのお喋りも実況中継のように止まらない。

「年下よ、年下。どっかの有料紹介所なんて行ったら、ぼったくられて年齢が一回りも上のおじちゃんを紹介されるのがおちでしょう?顔も、中の上だし(意味わかんないわよ)一番おすすめどころが年収よ。年収!!『おばちゃんは、興奮したように上ずった声をだした』一千万よ。今時こんな好物件ある?(家じゃないんだから)とにかく会うだけ会ってみて!」


そう、目の前にその超優良物件はいた。でも、10分に1回は席を立ち煙草臭を全身にまとって席に戻ってくる。当然そう何度も席を立たれたんじゃあ落ちつかないし、話が止まったままになっているのを孝子おばちゃんが助け舟を出した。


「彩さんは、キャリアウーマンで今の会社で頑張ってきたのね。もし、結婚ということになったら続けるの?」


「いいえ、出来れば専業主婦になりたいんです。もう、仕事は十分にしたので‥」


「どうせ、社内恋愛で振られて会社に居づらくなったんじゃないのか?」


「えっ」

(なによ。この男。何てこと言うわけ)


「図星かあ」ふふんと、その優良物件は鼻で笑っていた。


私は、涙が出そうになるのを堪えて立ち上がり、テーブルの反対側に座っているその男の前に立つとその頬を思い切り練り上げた。


「いたたた。何、するんだよ。人の顔に‥」


「すみませんが、今日はこれで失礼します」元の席にあるバックを持って足早に出口に向かっていた。

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