事件簿2.トランクス切断事件〜エピローグ〜
数日後、探偵事務所はいつもの静けさを取り戻していた。ユウロピーはベアチャンを可愛がりながらお茶を淹れていた。
おじさんはその横で何気なく新聞を読んでいる。
「ねぇ、おじさん、あのトランクス事件のせいで、もう新しいの買ったの?」
ユウロピーがふと尋ねると、おじさんは目を合わせずにうんざりした様子で答えた。
「ああ、買ったよ…新品のやつをな。」
「えっ、どんなの? やっぱりチェック柄?」
おじさんはちらっとユウロピーを見て、「いや、ちょっと違うデザインだ。もうチェック柄は懲り懲りだ」と言いながら、また新聞に目を戻した。
ユウロピーは小さく笑った。
「でも、あのベアチャン、すっごく可愛いよ! おじさんのトランクスのおかげで素敵な衣装ができたんだし、感謝しなきゃ!」
「感謝しなくていいから、次は自分の衣装でやれよ」
ユウロピーは頬をふくらませた。
「だって、おじさんのチェック柄、可愛かったんだもん! ほら、ベアチャンにも似合ってるし」
ぬいぐるみをおじさんの方に向けて見せた。
おじさんはベアチャンをちらっと見て、肩をすくめた。
「まぁ、確かに似合ってるかもな…でもな、俺のトランクスは元に戻らないんだぞ?」
「えへへ、それはちょっとだけ反省してる」
ユウロピーは少し申し訳なさそうに言った。
その時、事務所の窓から風が入るとユウロピーが飾っていたベアチャンのチェック柄の布がふわりと広がり、まるで舞台衣装のように見えた。
「ま、いいか」
おじさんは軽くため息をついて、タバコを口にくわえた。
「ベアチャンが満足ならそれでいいさ。俺も…まぁ、そのうち忘れるだろう」
その言葉に、ユウロピーはぱっと顔を明るくなる。
「おじさん、やっぱり優しい! じゃあ、次はおじさんに何か素敵な衣装を作ってあげるね!」
「いや、それは勘弁してくれ」
即座に返すおじさんだったが、ユウロピーの無邪気な笑顔に、ほんの少しだけ口角を上げてみせた。
エピローグ 完