パラレルワールドの恋
ある日、萌絵は犀川の研究室で「パラレルワールドシミュレーター」と書かれた奇妙な装置を見つけた。
「先生、これは一体何ですか?」萌絵は興味津々で尋ねた。
「それは、パラレルワールドをシミュレートして、異なる可能性の世界を見るためのものだ。まだ実験段階だが。」犀川は淡々と答えた。
犀川が出張に出かけた後、萌絵は装置に興味を持ち、好奇心いっぱいで触っている。次の瞬間、彼女は様々なパラレルワールドの世界にトリップした。
最初のパラレルワールドでは、萌絵は犀川の学生であり、二人は尊敬と信頼の関係にあった。しかし、萌絵の恋心は告白されることなく終わった。
「ここでも、私は先生のことを好きなんだ…でも、伝えることができない。」
次のパラレルワールドでは、二人は同僚として働いていた。萌絵は勇気を出して告白するが、犀川は仕事に集中しており、恋愛に興味がないと断られる。
「先生はいつも冷静で理知的…でも、この世界では私たちはただの同僚なんだ。」
さらに別のパラレルワールドでは、萌絵と犀川は恋人同士だった。彼らは一緒に研究を進め、幸せな時間を過ごしていた。しかし、仕事の忙しさからすれ違いが生じ、最終的には別れることになった。
「この世界では恋人同士だけど、結局うまくいかない…」
他のパラレルワールドでは、萌絵と犀川は婚約者だった。結婚を控えて幸せそうに見えたが、犀川の突発的な事故で犀川が亡くなってしまう。
「先生と結婚する未来もあったのに…こんな悲しい結末が…」
装置がタイマーで停止し、突然現実世界に戻った。彼女はしばらくの間犀川が自分にとってどれほど大切かを考え続けた。
どの世界でも、犀川への気持ちは変わらなかった。しかし、それぞれの世界で異なる結果が待っていた。
「どの世界でも、私は先生のことを愛している。でも、それぞれの状況で結果が違う…」
犀川が戻ってきた。萌絵は決意を固めた。
「先生、私、ずっと言いたかったことがあります。」
「何だい?」犀川はいつもの冷静な態度で聞いた。
「先生のことが好きです。どんな未来が待っていても、この気持ちは変わらないんです。」
犀川は一瞬驚いた表情を見せたが、やがて優しく微笑んだ。
「萌絵、君の気持ちはわかった。でも、俺は君の指導教授だ。それを忘れないでほしい。」
萌絵は涙を浮かべながらも、その言葉に満足した。本当の愛とは、どんな結果が待っていても、変わらない気持ちを持ち続けることだと彼女は理解した。彼女は未来への新たな一歩を踏み出した。