時間ループの告白
西之園萌: 富豪の娘で、頭脳明晰な大学生。IQ150の天才で、犀川に恋心を抱いている。
犀川創平: 大学の助教授で、萌の亡き父の教え子。冷静で論理的な性格。
犀川先生の研究室にあった古びた装置に萌絵は目を留めた。先生が出張で不在の間に、興味本位でいじっているうちに、誤って装置を作動させてしまった。次の瞬間、萌絵は不思議な感覚に包まれ、目の前の景色が一瞬で変わった。
「これは…時間が戻ってる?」
萌絵は信じられない思いで時計を見た。確かに、数時間前の時刻を示している。慌てて犀川先生のデスクを探ると、装置の取扱説明書を見つけた。そこには「時間ループ装置」と書かれていた。
「何てこと…でも、これを使えば…」
萌絵は閃いた。この装置を使えば、何度でも犀川先生に告白するチャンスがあるのではないか。完璧な告白ができるまで、時間をループさせればいい。
第1ループ
初めてのループでは、萌絵は緊張のあまり言葉が出なかった。
「先生、あの、私…」
「ん?どうした?」
結局、何も言えずにループは終わった。
第2ループ
次のループでは、勇気を出して言葉を紡ごうとしたが、突然停電が起こり、研究室が真っ暗になってしまった。
第3ループ
再度挑戦するも、今度は犀川先生が急用で出かけてしまった。
第4ループ
完璧な告白のタイミングを狙うが、電話が鳴り続けて集中できない。
第5ループ
ようやくチャンスが来たと感じた瞬間、他の学生が入ってきて話が中断された。
最終ループ
何度目かのループで、萌絵はもう一度犀川先生の前に立った。今回は、今までの経験から、どんな予期せぬ出来事にも冷静に対処する覚悟を決めていた。
「先生、少し話があります。」
「ん?何だい?」
「実は、ずっと前から先生のことが…」
その瞬間、何かが変わった。萌絵の覚悟と真剣さが、犀川先生にも伝わったのだろう。先生は静かに彼女の話を最後まで聞いた。
「…好きです。」
犀川先生は少し驚いた表情を見せたが、やがて微笑んだ。
「萌絵、君の気持ちはわかった。でも、俺は君の指導教授だ。それを忘れないでくれ。」
萌絵は涙を浮かべながらも、微笑み返した。
「先生、ありがとうございます。でも、この気持ちを伝えたかったんです。」
犀川先生は一瞬黙った後、少し照れたように顔をそらした。
「まあ、君がそう言うなら、それでいい。これからも一緒に研究を頑張ろう。俺も君の成長を見守りたいと思っている。」
萌絵は装置のスイッチを切った。ループは終わりを迎えた。
本当の愛は、何度時間が繰り返されても変わらない。萌絵はそう確信し、未来への一歩を踏み出した