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不確定性原理

西之園萌にしのその もえ: 富豪の娘で、頭脳明晰な大学生。IQ150の天才で、犀川に恋心を抱いている。

犀川創平さいかわ そうへい: 大学の助教授で、萌の亡き父の教え子。冷静で論理的な性格。

大学の研究室。窓の外には木々が揺れ、静かな午後の光が差し込んでいた。西之園萌は、自分の気持ちを伝えたくて、しかしそれが犀川創平との関係をどう変えるかを恐れていた。


「先生、少しお話できますか?」萌は躊躇いがちに声をかけた。


犀川はノートパソコンから目を離し、彼女に視線を向けた。「なんだ?」


萌は深呼吸してから言葉を選びながら話し始めた。「最近、量子力学の不確定性原理について考えていたんです。観測することによって状態が変わるという理論です。」


犀川は無表情で頷いた。「知ってるよ。で、それがどうしたんだい?」


「それを、人間関係に当てはめて考えてみたんです。」萌は少し視線を落としながら続けた。「私が先生のことを知ろうとすればするほど、先生との関係が変わってしまうんじゃないかって。」


犀川は眉をひそめ、無感情な声で言った。「それが心配なのかな?」


「はい。」萌は視線を上げた。「私が先生を知りたいと思っています。でも、知ろうとすることで、先生の気持ちや行動が変わってしまうんじゃないかと不安なんです。私の観測が、先生との関係を壊してしまうかもしれないって。」


犀川は一瞬考え込んでから、肩をすくめた。「まあ、そういうこともあるかもしれないな。でも、そんなことを気にしても仕方ないだろ。」


萌は困惑した。「どうしてですか?」


「人間関係なんて、元々変わるものだ。お互いを知ろうとすることで影響を与え合うのは当然だ。それを恐れて何もしないよりは、リスクを取ってでも前に進むべきだと思うけど。」


萌はその言葉に少し安心したが、まだ不安は残っていた。「でも、先生が私のことをどう思っているのか、完全にはわからないんです。それが怖い。」


犀川は冷静な目で彼女を見つめた。「誰だって他人の気持ちを完全に知ることなんてできないさ。それでも、お互いに理解しようとする努力が大事なんじゃないかなぁ。」


萌は深く頷き、微笑んだ。「先生、ありがとうございます。私は、先生との関係を恐れずに、もっと知りたいと思います。」

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