表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスパー投手は彼女に夢中(甲子園に行くぞー)  作者: 駄犬
来ちゃった。(甲子園だ!)
182/195

182.美月の心配事

ホテルに帰ったタマチカ野球部員は次の試合の準備に入った。

小休止の後のミーティングでは、ホテルに残っていたアニーが相手の傾向を説明する。

相手投手のクセや監督のクセ、人間の行動には必ずパターンがある。

各自に課題と連携のカードが配られ、カードを見ながら何人かが集まり打ち合わせる、

時にタブレットの動画を確認し、意図を確認しあう。

小柄で非力な選手ばかり、機動力もたいした事はないタマチカが勝ち残っているのは偶然ではなかった。

チート投手が居て打撃戦にならないという前提はあったが、計画とおり僅差の試合を行っていた。


選手達が打ち合わせている間、前監督、山崎先生、アニー、礼華で何やら打ち合わせ。

いつも通りなのか重要項目の確認だけで済む感じだ。


女子部員も同じミーティングを受けている。

乙葉、野乃花は分析班でホテルに残っていたから当然だが、美月のように応援団の整理に行った者も。

意見は多いほど良いそうだ、抜けや見逃しが出るのを防ぎたい。

アニーは一人で全てを決めた事はない。


自由時間になっても何組かの選手は何やら確認を続ける、ショータはいつも通り五十嵐と一番最後まで

残るだろう。


美月がロビーでショータを待っていると、礼華が出てきて何か指示を出し始めた。

ユニフォームはクリーニングに出しているが、自分で洗うものはホテルの洗濯機だけでは

間に合わなくなっている。

近所のコインランドリーに保護者、OB,部員を出しているが女子の洗濯物には見張りがいる。

なかなか大変だ。


礼華大好きの心晴がその横に立ち、私が補佐していますみたいな態度を取っているのが面白かった。

美月は前監督、ショータの祖父が珍しく一人でロビーに座っているのを見て話しかける事にした。

「どうされたんですか。」

「来客の予定だったんだが、先方が急用とかで予定が空いたんだ。」

「なんか忙しそうですもんね。」

「私のできる事は防波堤になってやる事位だからね。大会が終わるまでは静かにすごさせたい。」

「ショータとあんまり話てないようですけど大丈夫ですか。」

「普段からあんまり話さないよ。野球の技術的な事はもう教える事はない、精神的な事は教える事は

できない。自分で考える他ない、最近は考え込み過ぎだと思うけど、自分の経験からいって他人の

意見なんか役に立たないよ、自分で考えないと。」

「難しいんですね・・・。」

美月は思いきって気になっている事を質問する事にした。

「あの、ショータ、さんと私の関係って、知ってますよね。」

「どんな鈍感な人間でも気が付くよ。ショータには責任の取れない事はするなと言ってある人を。」

「大丈夫なんでしょうか、私、母子家庭で親戚もあんまり良い家じゃないんです。」

「何?結婚の心配をするのは速すぎるような気がするけど。反対しないかって事?」

美月がうなずくと、優しい声が帰ってきた。

「君が優しくて頑張り屋なのは知っているから大丈夫だよ。

うちの家は私の祖父が鉄道会社に土地を売って始めた金物屋だし、

ショータの母方も軍医だった祖父戦後始めた病院だ。大した家じゃない。

そんな風に思われると恐縮してしまうよ。でも、もうそんな関係なの?」

美月が赤くなって首を振るとさらに続いた。

「ショータは扱いの難しい子だから、そんな風に思ってもらえて有難いよ。

 人を思いやる心は人一倍持っているから、信じてやって欲しい。」

「はい。」

「聞いてると思うけど、ショータはプロ野球には行かないよ、それどころか競技としての野球は

 もう辞めると思う。だから大金持ちにはなれないよ。」

「この大会で辞める、って聞いてます。」

「私も辞めた方が良いと思う。ショータは弱すぎる。負けた相手の事を考えてしまう。

 良い言い方をすれば優しいんだが、全くプロ向きではない、勝負事に向いてない。」

「私もそう思います。」

「ショータは自分でもそう思ってるみたいだけどね。弱すぎる奴でも誰かが助ければ

 世の中を渡っていけるだろう。私はあまり助けられなかった。

 まだどうなるか分からないがショータを助けてやって欲しい。」


美月は何も言えなくなり、ただ頷いていた。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ