172.チームワーク
多摩近野球部には思春期の男女が一緒にいる。
友人として集団で遊びに行く位の関係だが、恋愛関係にあるのはショータと美月だけである。
礼華と五十嵐の関係は恋愛なのかどうか迷う関係なので皆突っ込まない事にしておこう。
受験と部活で忙しいが、彼氏、彼女は欲しい集団である。
そして隣の芝生は青く見えるので他校の生徒も気になるのである、特に相手が女子高となると。
「村山女子のバス、もう出たって。」
「一晩中バス移動って疲れるだろうな。何回お礼言っても足りない。」
「それを言い出したら0泊弾丸応援に来てくれる人にも頭あがらないよ。」
「それなのに、体調大丈夫か?とかこっちを心配してくれるんだよな。」
「来たいから来ただけ、とか言われるよな。頑張ってる所みせるしかないけど。」
村山女子チア部は当初、地区予選だけの友情応援のはずが甲子園まで来てくれた。
甲子園で応援できて嬉しいとまで言われた野球部員の士気は天に昇っていた。
「良い子達だよな。前の試合の時もバス移動だったのに疲れた顔せず応援してくれた。」
「村山女子ってホントかわいい子多いよな。天使みたいな子ばっかりだ。」
「うちの学校は受験目的の戦う女ばかりだから。あんな雰囲気にならないよ。」
その村山女子に彼女がいる丸山先輩は女子高の実態をある程度知っていた。
幸せな妄想だと思ったので秘密をいくつか黙っている事にした。
『チアリーディングやってる時はメイクバッチリなんだよ。化粧薄いように見えるけど』
「明日雨だろ? 彼女達どうするの」
「宿舎直行だって。決勝戦までの予定はしてくれているみたい。」
「午後時間あるみたいだからデートに誘ってみようか。友達連れて来れるか聞いてみる」
「なんか言われないですか?」
「近所でお好み焼き食べる位何も言われないさ。」
丸山先輩の彼女はチア部ではないが応援有志という事でバスに乗った。
一回戦以来なので二人とも顔を合わせたかった。
「二人で会わなくて良いんですか?」
「この環境で二人で会うの何か恥ずかしいな。いかにもって感じで」
そういう関係は既にあったが、この状況でそうするのは何か違う、そこまでガッツいていない。
「礼華たちどうします?誘わないと気分害しそうですけど。」
「誘わないとだめだろ。来なかったらお土産用意しないと。あんなに仕事してくれてるのに」
野乃花と乙葉は『会計士になれるかもしれない』と冗談を言う位事務仕事をしている。
女子部員も真剣勝負していた。
「よし、雨でも集まれる場所を探せ。彼女たちの宿に近い方が良い」
「大きな地下街とかどうだ?大阪らしい場所あっただろ。」
「あんまり時間がないから遠くはだめだぞ、さっと集まってオヤツ食べて決起集会」
「リサーチまかせろ。」
野球以上のチームワーク、さすがタマチカ野球部であった。




