168.世間の評価?そんな物ただの飾りです。エロい人には・・・
「では、この2球種は区別がつかないと?」
「はい、高校生としてはトップレベルの速球に効果的に混ぜうまく抑えています。」
TVでは評論家が根拠のない説を流布していた。
2試合連続で結果を出した多摩のドクターKはニュース解説されていた。
ショータの姿がメディアで配信されると、あちこちで話題になっていった。
姿かたちは野球にも人柄にも関係ないはずだがあまりにも、あまりにもなのである。
彼の叔母はショータを盛り場に連れて行かない。
小学生のころ何回かやって懲りている。スカウトがたかりそれ以外の人からもジロジロ見られる。
上手く喋れないからと断ってもモデルなら大丈夫と粘られる。
『将来美人になりますよ。』『水着モデルをやってくれたらグラビア一番前に乗せます。』
何か間違えているし面倒でたまらなかった。
その外観が全国的にバレて全国的に面倒になっていた。
ショータが盛り場に行くには覚悟が必要だろう。
「サインだけでもとか、一緒に写真をとか申し込みが凄いの、どうしよう。」
「全部断ってと言ってるでしょう。」
「こっちの取材申し込みは?」
「密着系は断って。練習帰りの決まった時間だけならそこに必要事項書いてもらって。」
「激励に来たいというOBやらお偉いさんは。」
「だから全部断って。後でお詫びするから誰から申し込まれたか記録して。」
「差し入れの飲み物、受け取りサインが欲しいって。」
「そのぐらい自分でサインして」
礼華は働きづめであった。
仕事は人に投げていたが、最終判断は彼女がしなければならない事が多かった。
「子供の頃から意味の分からない判子やサインはダメって教わらないのかしら。」
一人ブツブツ言いながら事務処理を続けた。
騒ぎの元凶のショータは美月を見ながらため息をついていた。
甲子園に来た頃は自由時間に外に出ていた。
買い物していて店の人に『にいちゃん、えらいシュッとしとんなー』と声をかけられ戸惑っていると、
美月と心晴が腕を組んできて『ええやろー』と返して笑いあっていた。
意味がわからないけど楽しかった。また行きたいけど当分無理そうだった。
人気?世間の評価?美月とデートできないショータにとってそれは呪いだあった。
ワンダー3と後輩たちは発売されたばかりの甲子園特集の雑誌を見ていた。
野球ではなくチアガールの特集ページである。
「可愛いチアガールで多摩近あんまりいないな」
「心晴が番外で載ってるけど可愛いの意味違うしな」
「汐里、野乃花、美緒でこんな感じか、全国のレベルは高いな」
「ショータに女装させたら上位いけそうだ。」
「やめろ、想像して笑ってしまったじゃないか。」
同じ雑誌を女子が見てメーク力の評論になった事を彼らは知らない。
3回戦の対戦校は決まった。
相手は頭を抱えていた。
「打者の反応がおかしい?」
「はい、投球フォームに合わせ動き始めるのですが、途中で動きがおかしくなります。
球が手から離れた後やっと動き出したり全然違う所から慌てて修正したり。」
「どういう事だ」
「いきなりクイックモーションで投げられて慌てた打者みたいな反応です。球が見えていない。
そうとしか思えません。」
「一人や二人でなく全員だろう?なぜそんな事が。」
「わかりません、投球フォームとかチェンジアップのイメージがとか評論家は言っていますが。」
「試合まで時間がない、原因の究明と対策を至急考えてくれ。」
同じころショータと同じホテルでアニーも考えていた。
分析班は相手バッテリーのクセをすでに見つけ出していた。
考えていたのはショータの事である。
『おかしい。ショータの動きに変化はないのに相手の混乱が大きくなっている。
なんらかの理由があるはずだ。』
何か見逃している、それを未だに見つけられないアニーであった。
マスコミ対応をしていた山崎先生は疲れきって同棲中の彼女に電話連絡していた。
結婚が決まっている年上の彼女は甲子園で指揮をとる婚約者に嬉しそうだった。
友人親戚に自慢できると。




