134.濡れているのは。
タマチカ野球部のホームページは春季大会の活躍により書き込みが増えた。
敗退した日には怪しい書き込みに対応する電脳部員たちが忙しかった。
『丸太小屋で朝まで彼を慰めたい』
『私ので彼の悲しみを忘れさせてあげたい』
『赤いタイトスカートの彼を抱きしめてあげたい』
NGワードを潜り抜けてきた変な書き込みをアク禁にしながら
気色悪さに耐えていた。
妙な人気?のあるショータは少ししょげていた。
「スタミナ切れしたと思う。昨日お腹壊したのが悔しい」
カーボン・ローディングは各々やっているが、最もエネルギーを使う投手は量を食べる必要がある。
食が細いショータにとっては難しい調整であり夏に向け克服しなければならない課題だった。
試合後のミーティングで課題を洗い出し、最後に監督が退任の挨拶をする。
趣旨をまとめると
『甲子園には3度行ったが、すべてベンチ入り、選手として出場した。
一度スタンドで応援してみたいので、よろしく頼む』
甲子園行けなかった奴にケンカ売ってる内容だった。
川崎先生はもちろん行ったことない。
美月が練習用ボールのカゴに修理したボールを入れていると雨が降ってきた。
美月は縫物が上手で、美月が修理したボールはどこを補修した見分けがつかない程だ。
試合のある日も少しづつ持ち帰り修理していた。
天気予報が外れた事に文句を言っていると
同じく倉庫で何か作業していた礼華も雨に気が付いた。
スマホで連絡し校舎から倉庫まで誰かに傘を持ってきてもらうらしい。
何故かショータを呼んでいた。
余分の傘を1本しかも持って来なかったショータは全員分の傘を
取り戻ろうとしたが礼華は心晴と相合傘して先に帰ると言い出した。
残されたショータと相合傘でその後を歩く、試合の事とかボソボソ話す。
細い雨が続く、中、柔らかくガッチリした腕にぶら下がる。
校舎に着いた時、ショータが結構濡れている事に気が付いた。
礼華と心晴は黙って見ていた。
試合は負けてもうたな、美月は思いきって抱き着いた。
ショータは悔し泣きしていた。
雑な修理したボールは使いにくいです。




