11.翔太の心の叫び
翔太が野球部入部を断ります。
射沢翔太の視点
覚悟を決めた。
同じ学校にいる以上会わない事も無視もできないだろう。
五十嵐先輩に挨拶に行くと当然のように野球部に入るよう誘われたが断った。
バッティングの事を誉めてくれるけど、それ違うんだ。
相手ピッチャーの視界を通してキャッチャーが何処に構えてるか判る。
駄目だとは思うけど、それを見てから打ちに行く。
投手が狙った所に必ず投げられる訳ではないけど概ねその辺りに来ることが多い。
逆を突いたつもりの相手投手がギョッとした顔するのを何回も見た。
僕の打撃が良いのはインチキ野郎だからだ。
そんな事は言えないから”受験勉強を頑張りたい”を理由にする。
五十嵐先輩は残念そうにしていて、気が変わったら入部して欲しいと言って肩を叩いてくれた。
・・・礼華ちゃんがこちらを見ている。
焦点は、どちらかというと先輩側だな、確認するように僕も見ているのがわかる。
ああ見られてるのが判るこんな”感覚”なんて要らないな。
見られる事には慣れている。
小さい時からすれ違う人に物凄く見られた。
中には話しかけて来る人もいたが、僕は知らない人と話すのが大の苦手だ。
上手く話せなくて友達を困らせてしまう事が多かったし、知らない人には言葉が出ない。
折角仲良くしようとしてくれた人が変な顔するのが申し訳なかった。
家族でも祖父母と話すのは実は苦手だ。
一生懸命世話を焼いてくれて有り難いし基本的には大好きだ。
お姉ちゃんに言わせると「あのジジババ、あれでも思いっきり甘やかせてるつもり。」らしいけど
吃音や口の利き方で良く怒られる。矯正しようと一生懸命なんだけど、いつも悲しくなる。
父母、って両親揃ってたのは何年前かな? 二人と話すのは苦ではないし、大人として話してくれ
相談にも乗ってもらえる。
お母さんがすぐ泣きそうになるのには困るな。両親とも尊敬してるし大好きだ。
・・・お姉ちゃん迎えにくるのまだかな? 友人に「お前お姉ちゃんのオッパイ飲んでないか?」
とからかわれた事がある。実際周辺から見たらそうだろうなと思う。
甘えまくって迷惑かけている。僕のウジウジした性格を完全に把握しているお姉ちゃんは
それが良いって人もいるから心配するなと、言いながら.「それより私に良い男いないか~」と
冗談を言っていた。
結論、自分が一番嫌いだ。
まともに話せない、ウジウジした覗き見ゲス野郎だ。
色々あってため込んでしまっている主人公です。
吐き出す機会はあるのでしょうか。




