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55.【時間凍結空間】4億7千百万km³

 目覚めにあたって考える事。あれ? 何してたっけ・・・・・  いやいや、乳幼児は考えねーっ、腹が減って泣きわめくでしょうがっ!!・・・・・? ベッド脇にマーシェリンが・・・・・  くっ、暗い。


 「私は、連れて行って頂けなかったのですね。」

 「連れて行くって、どこへ・・・」

 「ショウ様の行くところ、全てでございます。」

 「どこへ? ここで寝てただけだよ。」

 「もう夕方でございます。それまでお乳を口に運んでも、全く目覚めません。そもそも、ポットを入れていた革袋はどうされたのですか。」


 もう夕方? そんなに寝てたのか。マーシェリンには夜遊びがばれてる。正直に言っておくか。


 「王宮図書館の地下の隠し部屋へ行ってた。革袋はそこでなくなった。ポットは忘れてきた。後で取りに行ってくるよ。」

 「そうでしたか。あの部屋には、私は行けないのですよね。え、でも革袋がなくなった、とはどういうことですか。」

 「粉々にちぎれた、のかな?」


 意味が飲み込めず首をかしげているけど、言ったとおり爆散しちゃったんだからしょうがない。

 革袋に焼き付けた【空間】の魔法円はどうなったんだろう。革袋の爆散で魔法円も粉々に砕け散ったのだろうか。でも革袋が粉々になった後も、とんでもない量の魔力を吸い出されていたよな。もしかしたら【空間】はできあがっているのだろうか。だけど【空間】を維持するための魔力負担がないし・・・・・  あの時の魔法円を展開してみるか。いや、ここではまずいだろ。あの魔力の流れが起きたら、また騒ぎが起きる。もう一度あの書庫へ行ってくるか。ポットも取りに行かないとね。


 おなかが減ってたからマーシェリンが持ってきていた食事を、魔力の触手でさっさと食べ始める。


 「あ、それは私が・・・」

 「あーん、しなくてもいいから。一人で食べれるから。」


 その程度のことで寂しそうな顔してんじゃないよ。子供が一人で何でもやり出したら、喜ぶもんでしょうっ!! 少しマーシェリンを甘やかしすぎてるか? いや、赤ん坊が大人を甘やかすって何? 逆でしょうがっ!! ま、まあ、そんな事はどうでもいい。食事が終わったらポットを取りに行ってくるか。

 転移円を展開し始めたら、転移結界が張られる直前にマーシェリンが飛び込んで来た。


 「そんな突然に飛び込んだら、危ないだろ。」

 「申し訳ございません。でも・・・・・  連れて行って下さい。私が行ける所まででいいのです。そこでショウ様が戻るのを待ちますっ。」


 まあいいか。マーシェリンなら王宮図書館の地下には行けるし、そこからの隠し書庫への転移は、多分制限は無いだろうと思う。


 「わかった、一緒に行こう。」

 「あ、ありがとうございます。」


 王宮図書館の地下に転移した後、隠し書庫への転移は、やはり問題無くマーシェリンも転移出来た。


 「私をこの書庫まで連れてきて頂いてもよろしかったのでしょうか。」

 「うん、ここに入るための制限は無いんじゃないかなと思ったんだけど、その通りだったみたいだ。」

 「でも、アドリア―ヌ様にお叱りを受けるのでは無いでしょうか。」

 「そう思ったら、黙っておけばいいよ。」


 あったあった、お乳のポットだ。時間凍結の革袋に入っていなかったから、飲んだらおなか痛くなりそうだ。ポットはマーシェリンに渡し、魔法円の続きだ。


 革袋と共に粉々になったかもしれない魔法円を展開してみる。

 う~ん?・・・・・  普通に目の前に魔法円が展開されているんだけど、なんか違う。

 【空間】の魔法円をもう一つ展開して比べてみよう。あっ、よく見れば直径と高さが魔法円の中に記されていた。直径2,000km 高さが・・・・・??!!

 150km ―――っ!?   天空の魔法円は・・・ 多分1万mぐらいだったはずだ。その上にまだ巨大な空間が広がっていた? まさか、その空間が『原初の女神』の存在する空間なのか。

 地表から100km。成層圏がおよそ50km、その倍の高さぐらい? そのうちの10kmから100kmまでが女神の領域か?

 地下が50kmもあるけど、もしかして地下大都市が形成されて地底人とかいたりして。


 先にしっかり確認してサイズ変更しておけば、あれほどの魔力消費は無かっただろうな。

 その魔法円を横に並べてみれば、全くの別物になっている。まさか革袋が爆散したせいで【時間凍結】の魔法円と混ざり合った? よくよく見てみれば、魔法円の文字同士が複雑に絡み合い、よく分からないものになっている。

 これって、全く別の魔法円が出来てしまったってことか。

 【時間凍結空間】サイズ 直径2千kmの円 高さ150km 容積4億7千百万km³ って、とこかな。円筒の体積って、πr²h でよかったっけ。まあ、間違えていても、そうたいした問題は無いだろう。

 とてつもない容量だけど、本当にそんな空間が出来ているのか? 魔力消費が感じられないんだよね。中に何も入っていないからなのか。それとも中の時間が凍結されているからか? でも、【時間凍結】の魔力消費は大きいと聞いてるし・・・・・ 分からないものは、実証して確認するしかないか。

 とりあえずやることは、この魔法円に(ゲート)を付けなければ、物の出し入れなど一切出来ないと言うことだ。

 脳内図書館から探し出してきた【(ゲート)】の魔法円を展開し・・・・・  あれ? これをどこへ焼き付ける? 今展開している【時間凍結空間】の魔法円は、革袋が無くなって空中に浮いてる状態だ。空中でも焼き付けられるのかな。やってみるか。

 と、その前に、この【(ゲート)】に制限を付けておかないと。魔法発動者、つまり俺だよね。この魔法発動者が(ゲート)を通れないようにしないといけない。入ったが最後、時間凍結空間に閉じ込められて出られないという、間の抜けたことになるのはごめんだ。

 魔法発動者通行不可、と強くイメージをしてその文字を魔法円に記していく。

 【時間凍結空間】の魔法円の前に【(ゲート)】の魔法円を重ね、『焼き付ける』

 またも勝手に魔力が引き出されていくが、それもすぐに収まった。そりゃそうだ、でかい容器はすでに存在していて、そこに出し入れ可能な蓋を作ってくっつけただけだしね。

 ここで何か入れる物は無いかな。さすがに書庫の本を放り込んで、出せなくなったらまずいだろうし。あ、マーシェリンが持ってるポット。


 「マーシェリン、そのポットをちょうだい。」

 「お待ちください。おなかが減ったのなら、帰ってからにしてください。先ほど匂いを嗅ぎましたら、傷んでいるようです。」

 「飲まねーよっ!! ちょっと実験するんだよ。」


 受け取ったポットを魔力の触手に固定したまま【(ゲート)】の魔法円に放り込む。ポットは【(ゲート)】の中に消えていった。

 ここまでは成功だ。この空間内は時間が止まっているかどうかは、まだ分からない。放り込んだポットの中身がすでに傷んでいるから、取り出した時にも傷んでいる。これでは時間経過してるのかがわかりにくい。それは後日実験しよう。

 でも、空間内に入っている触手が、ポットをつかんでいる感触はある。動かそうと思えばあっちこっちに動き回る感触がある。こんな自由に動けるんじゃあ時間は止まって無さそうだね。

 魔力消費量は【(ゲート)】が開いている間は消費されているようだ。閉じてみれば魔力消費が止まる。あ、触手が切れた。【(ゲート)】の魔法円が消えた場所でスパっと切れてその先の感覚が消えた。こ、これは【時間凍結空間】に収納したものを取り出せるのか? 

 あわてて【(ゲート)】を開き直し触手をつっこんだら、切れた先の触手が【(ゲート)】を入ったところでつながった。

 どういうことだ? 魔力供給が止まれば触手は霧散してしまうはずなのに、再びつながってその先のポットをつかんでる感触まであるぞ。ポットを取り出したり入れたりして確認してみるんだけど、いつもと変わらない触手の感触だ。やはり内部の時間は止まっているのか。時間を掛けて調べてみよう。

 【(ゲート)】を閉じ、今日はもう帰りましょう、とマーシェリンを振り返れば、何か聞きたくて、うずうずしている様子だ。少しぐらいは教えといてやるか。


 「今、俺がやってた魔法は、収納魔法と言ってもいいと思う。アドリア―ヌがこの世界には収納魔法は無いと言ってたから、ここの書庫を調べて作ってみたんだけど、今収納したポットが他の場所で取り出せるかどうか試さないと成功したか分からない。」

 「収納魔法ですか。確かに聞いたことはありません。ポットを収めていたようですが、どのくらいの物が入るのですか。」


 今、住んでいる国が全て入る、なんて言っても信じないだろうね。あいまいに答えておくのが無難そうだな。


 「すごくたくさんの物が入ると思うよ。それも検証してみないとね。」


 いろいろと作業をしてたら眠くなってきた。目がトロンとしてきたらしく、マーシェリンが心配そうな顔で尋ねてくる。


 「だいじょうぶですか。少しお休みになりますか。」

 「いや、まだ大丈夫だ。急いで帰ろう。」


 さっさと転移、転移で自室に戻ってきた。そのままベッドの上に倒れ込み、深い眠りに落ちていく。

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