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5.ヤギの皮をかぶった狼?

 メエエエ メエエエッ なんだこれ、周りがなんだかやかましい。羊? ヤギ? 鳴き声聞いても、どっちかわかんねー。


 辺りは明るくなっているようで、羊、又はヤギではないかと思われる動物に廻りを囲まれているようだ。夜中の肉食系の魔獣とは違い、穏やかそうで、草を()んでいる様子が見えないながらも感じられる。魔力で作った繭状のものも無事にのこっていた。


 ここで〇ュワちゃん変形したら絶対驚いて逃げ出すよね。変形せずに外を見たい。繭の表面にシ〇ワちゃんの目だけ、できるかな。


 出来た。やってみるもんだね。何事もチャレンジ精神だね。


 日が登って明るい風景の中、やっぱこれ、ヤギだ。誰かが他の名前で呼んだとしても、俺はヤギで押し通そう。で、ヤギの群れが廻りでお食事中、肉食では無くて良かった。草、食ってるよ。

 近くに雌ヤギが、その下に子ヤギが乳をのんでいる。この寒い時期に子ヤギって、季節が違うんじゃね。それとも年中こんな気温なのか。


 (ひらめ)いたっ! 子ヤギに変形してあそこに混じれば、乳をもらえるんじゃないか?

 廻りの子ヤギをよ-く観察して、そっくりに変形してみた。一瞬ビクッとした廻りのヤギ達が、突然立ち上がったのが普通の子ヤギだったため、何事も無くまた草を食べ始めた。良かった。逃げられたら、お乳もらえないところだった。

 母親ヤギにソロソロと近づき、乳首を吸おうとするんだけど、子ヤギが群がって強引に割り込まないと、お乳にありつけそうもない。自然界では弱い者は淘汰されるって事だね。


 子ヤギ達の中に強引に割り込み、蹴られたって蹴り返して場所を確保し、吸い付く乳首をゲットした。

 チュウチュウ  あー旨いってことにはならないんだよね。今、魔力的な物で創り出した子ヤギの体内で子ヤギの吸い出したお乳を哺乳瓶にため込んでいるところです。あー腹減った。早く飲みてー。


 満タンになったところで、いただきまーす。旨いっ! 腹が減ってりゃ何でも旨い。これで餓死せずにすみそうだ。それともお口に合わずに食中毒もあるかな。まっ 餓死するくらいなら食中毒の方がましか。

 飲んでる間に、もう三本程作っておいた哺乳瓶にため込んでおこう。人里に出るまで、このままこの群れの中にいれば安心かな?


 あ~腹いっぱい。幸せ、幸せ。 グェ~プッ げっぷ出た。 あ しっこも出た 洗浄、洗浄 スッキリ~。いや~魔力操作が凄く手馴れてきたね。もう魔法使いを自称してもいいんじゃね。

 【マ○リクマハ○タ】てな感じで呪文詠唱したりして。誰の呪文だったっけ。


 腹も膨れたし、子ヤギのままでこの辺りを散策してみよう。群れが見える範囲なら、はぐれることも無いでしょ。そもそもヤギって草原にいる動物だよね。森の中の空き地にいるって事は、このすぐ近くで森が終わっているんじゃないかな。

 木々が薄い所は何処? って、ちゃんと森が切れて向こうに草原が見えてるところがあるじゃない。これであの危険な森の中を通らずに脱出出来るぞ。近くに人里があればいいんだけど。

 森から出る前に、魔獣共の毛皮がどうなったか、確認した方がいいな。石は回収してあるんだけどね。


 崩れ落ちた肉や骨は、綺麗に地面の中に吸い込まれたようで、血の跡さえものこっていなかった。やっぱりゲーム世界なのかな。


 木の枝に掛けておいた毛皮は、そのまま残っていた。肉が解け落ちていたせいでほとんど乾燥しているようだった。これなら革製品ができそうだ。革袋がほしいんだよね。光る石が通貨になると仮定して、この先この世界で生きていくにも、お金は重要だと思うんだ。光る石用袋を作ろう。


 木陰に隠れて、シュワちゃんに変形、・・・  う~ん、もうちょっとカッコイイネーミングがほしいな~。防御能力つよそうだし『アーマーシ〇ワちゃん』? う~ん、いまいち?

 『プロテクトアーマー シュ〇ちゃん タイプ コナンザ〇レート』 モコモコと筋肉が膨れ上がり、〇ュワちゃんに変形していく。うん、いいんじゃないか? やっぱりこの筋肉は最強だ。


 木陰から魔獣の毛皮を手に取り、きれいに毛を(むし)っていく。次は裏側の肉の残っている部分を、剣を使って削り取る。革紐も欲しいので、真っ直ぐに綺麗に切り落とし、2本作った。革紐っていうか、革ベルトと呼んでいいぐらいの太さになった。残りの大きな革で最大で取れるところは、3尺四方ぐらい・・・ ん? 90cm四方くらいかな。


 何故?・・・ 尺貫法? 何でそんな記憶が? まあ、そのうち思い出すか。


 もう一枚、60cm四方ぐらいの革がとれた。それを上で絞ってベルトを通す穴を剣で空けて、後は革ベルトを通して、大小二つの革袋の完成。

 だけどこれ子ヤギが持ち運べるようなものじゃないな。シ〇ワちゃんの状態で遠くから、ヤギの群れの様子を伺いながら追いかけるか。



 ゾワッ!! 背中に悪寒が走る。森の奥から魔獣と思われる気配が急速に近づいてくる。放っておけばヤギの群れが襲われる。ここで迎え撃てば群れが逃げる。選択肢は? 近づかれる前にこちらから接近して迎え撃つ。悩んでる暇なんかないぞ。

 一気に魔獣の気配に向かって走り出す。流れてゆく景色が異様に速い。人の運動能力を遥かに超えたスピードが出てる。まるで空中を滑っているような感覚だ。

 見えた! 樹上を枝から枝へと飛んでくる長い手、短い脚、 猿ですかっ!! しかも数が多い上にサイズがでかい。成人男子ぐらいのサイズだ。顔を見ると、牙が鋭くあまりにも凶暴そうな面構え、しかも筋肉質で力が強そう。


 一番先頭の猿に向かってジャンプ、   え? これって・・・ ジャンプっていうより飛んでないか?

 空中を飛びながら先頭の猿の首に剣を振り上げる。返す剣で後ろの猿を袈裟切、二つの首が飛んでいった。


 このまま羊の群れに行かせないように、と思っていたら標的が俺に変わったみたいで、って、元々俺が標的か? 猿の群れが全て俺に向かってきた。樹上で剣を振るい腕に噛みつかれ、パンチを繰り出しても喉元に噛みついてくる。剣を振ってどれだけ首を落としても攻撃の手を緩めてこない。


 これは、魔法で攻撃できないか? 攻撃系魔法は風系の魔法円しかないけど噛みついている奴なら、撃ち出せなくても炎系の魔法が効くんじゃない。

 噛みついていた猿の一体に魔法円を向けて魔力を込める。

 ボンッ! 体内で炎が炸裂したらしい。腹が爆ぜて内臓が飛び散った。他にも噛みついている猿共に炎を食らわせた。ボンッ ボンッ ボンッ! 頭が爆ぜ、胸が爆ぜ、腹が爆ぜ、見るも無残な肉塊になって落ちてゆく。

 自分でやってて思った・・・ 『えげつねーっ!』


 離れたところにいた猿共が(きびす)を返し逃げ始めた。

 逃がすかっ!! 逃げるすべての猿に向かって、動くものがいなくなるまで、風魔法を撃ち続けた。


 辺りに沈黙が立ち込めた。すごく残虐な事をやってるけど、大事なヤギさん達に害を成すものは、なんぴとたりともこのコナンが許さんっ!!


 落ち着いて見回して見れば、うわー ひでー バラバラになってる奴の多い事。全部集めないと光る石を回収できないかな。近くにある石はなんとなく分かるんだけど、遠くにあるとね~


 目の前の肉塊を剣でザクザク突いていたら、あった、あった。何で近くの石は分かるんだ? 何か魔力的なものか、この石自体が魔力を持って近くの魔力に干渉しているのか? それならちょっとチャレンジしたい。俺の中にあると思われる魔力を外に向かって、薄~く、広~く引き伸ばし、あ、もう既に感じてる。石の場所が全部分かる。

 えーと、1、2、3、4、5、・・・ 全部で35個か・・・ え? 35匹も倒したのか。よく頑張った、俺。

 猿共を剣で切り刻み、石を全て回収し革袋に詰め込んで、ヤギの群れに戻ろう。


 森から出たらヤギの群れが消えていた。えー、どこ行っちゃったの? 森が切れて向こうに草原が広がっている所へ走って行き見回したら、右手の方のまだ見えるところにいてくれた。良かったー。はぐれるところだったよ。付かず離れず、この後ろを付いていこう。


 このヤギの群れって、食物連鎖の中で下位に属してると思うんだけど、俺が戦ったあの凶暴な魔獣共に襲われたら、反撃したり逃げきったりする手段はあるのだろうか。そんな手段が無ければ、この群れが生き延びてくることなどできないだろう。羊の皮をかぶった狼ならぬ、ヤギの皮をかぶった狼なのか。怒らせないようにしとこう。

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