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41.原初の女神様

 誰かが話しかけてる。


 「う、う~ん」


 「ショウ、起きなさい。」

 「ん、アドリアーヌ?・・・・・ 何?」


 頭がぼーっとしてる。目を開ければ廻りに金色のもやがかかった感じの部屋だ。こんなキンキラキンにして、あまりにも趣味の悪い部屋だ。こんな部屋どこにあったんだ?


 「おなか減ってない?」

 「あ~、減ってる。」

 「今日はね、マーサがいないのよ。だからいつものように哺乳瓶を作らないと、お乳が飲めないわよ。」

 「あ、そうなんだ。ポットある。」

 「マーシェリン、ポットを持ってきて。あ、待って、私が取りに行くわ。」


 なんで、マーシェリンが持ってこないんだろう。


 「ショウの廻りの光っている魔力はなんとかならないの。誰もショウに近づけないわよ。」


 え? このキンキラキンは俺だけ?


 「部屋中が金色のもやに覆われているわけじゃないんだ。俺だけなのか。」

 「ええ、そうよ。それでね、その光る魔力の圧が凄いのよ。一体何をしたのよ。」

 「ちょっと待って、抑えるように努力してみる。」


 アドリアーヌが離れていった。

 この光っているのは何だ? アドリアーヌは魔力って言ってたな。何をしたんだっけ。

 ・・・・・あっ、『原初の女神様』・・・・・ 力を分け与えたとか、死を迎えるまで使えないとか・・・・・ えーっ、使えないって事は、一生このピカピカ状態ですかっ!! 恥ずかしくて、出歩けないぞ。道行く人全てに、拝み倒されそうだ。な、なんとかしないと。

 力と言っていたのは、魔力の事だろう。ブラックホールのイメージで吸い込ませられるかな。

 だめだ、抵抗感ハンパねー。

 自分自身の魔力を、一瞬で大容量発生させて、外側からドンッとぶつけて圧縮させてみるか。

 一気に魔力を発生させた。光る魔力を囲い込み、外から一気に衝撃を、ドンッ!!

 外からの衝撃で圧縮させ、自らの魔力ごと圧縮魔石にねじ込む。よしっ、うまくいったみたいだ。廻りにかかっていた金のもやが消えてる。これで普通の赤ちゃんだね。

 あ~、腹減った。哺乳瓶にお乳を入れて、ウマウマ。


 アドリアーヌが、知らない女性を連れてきた。


 「誰?」

 「ショウ、失礼ですよ。この方はこの国の王様です。」


 あれ? なんで王様? そうか天空の魔法円から落ちたら、ここは王宮か。

 落ちたらって、なんで俺生きてるの? 原初の女神様? 生ある間その力を育てろとか、言ってたね。力が育ってもいない使い物にならない奴が、すぐに死んで自分のもとに来ても困るから、下までそーっと下ろしてくれたのかな?


 「ああ、今の王は女王だって本に載ってたね。アンジェリータ・ヴァランタイン様だね。ショウです。」

 「何故・・・ 赤ちゃんですよ。なんで、しゃべれるのですか。」

 「いろいろな本を読ませたりしまして、言葉を覚えるのがとても早いのですよ。」

 「早いと言っても限度があるでしょう。やはり、神々の御子なのではないでしょうか。」


 「リベルドータ、マーシェリン、椅子を持ってきて下さる。」


 椅子に腰を据えて、じっくり尋問ですかっ!!


 「何? 御子って。」

 「ショウ様、あなたは、天の魔法円から神の魔力を身に纏いご降臨なされ、私が抱きとめた神々の御子なのです。」


 私が抱きとめた、をやけに強調するね。私、助けてあげたのよ、って恩を売ってるのかね。お礼ぐらいは言っとくか。


 「神の御子設定は勘弁してほしいね。助けてもらったことは、ありがとうございます。それと、ショウ様はやめてよ。ショウと呼んでくれればいいよ。」

 「そんな、恐れ多いことです。ショウ様、王宮の者達は皆そのように認識しておりますし、私も信じております。あなたは王位を継ぐ者として、この王宮で大事にお育て致します。」


 「アンジェリータ様、本人も嫌がっているようですし、テルヴェリカ領へ連れて帰りたいのですが。」

 「嫌がってなどいませんよ。あなたは王になるのです。さあ、私の腕の中へいらして下さい。」

 「ショウ、母と一緒に家に帰りたいでしょう?」


 二人で手を差し出してきた。王になるのは嫌だよね。どっちかと言えばアドリアーヌのところが気楽そうだから・・・・・ 俺は、マーシェリンだ。

 マーシェリンに向かって這い寄り手を伸ばす。ブワッと涙をあふれさせ、抱き上げられる。


 「ショウ様っ、ショウ様っ、ショウ様っ、もう二度と置いていかないで下さい~ ずっとショウ様のおそばに~ ひぐっ おっ おいっ 置いて うぐっ  下さい~。」


 マーシェリンが落ち着いたかなというところで、アドリアーヌに抱き上げられ、ベッドの上に戻された。。


 「さて、ショウ、何事が起きたのか、いいえ、あなたが起こしたのよね。何をやったのか説明をして欲しいわね。」

 「アドリアーヌ様、赤ちゃんを相手にそんな厳しく問い詰められては、脅えてしまいますよ。」


 そうだ、そうだー、王様、もっと言ってやれー。ふんふんと腕を振り上げてたら、アドリアーヌにギロッと睨まれた。怖いよ。もうおとなしくゲロします。許して下さい。

 でも、


 「え? ここで説明してもいいの?」

 「ここで話さないと、後からアンジェリータ様からのお呼び出しを受けることになるわよ。」

 「そうじゃなくて、リベルドータとマーシェリンには聞かせない方がいいかな。」

「分かったわ。

 リベルドータとマーシェリンは部屋の外で待っていて。」


 マーシェリン、寂しそうに出て行ったけど、感情出しすぎですよっ。




 「天空の魔法円について説明をするけど、あの魔法円を創り出した神が存在した。12神とは別に。」

 「そんな、まさか・・・ いえ、人が推し量れる話ではないわね。」

 「アドリアーヌ様、そんなことが人々に知れてしまったら、国が混乱を・・・」

 「新しい神様がいました、ぐらいでそれほどの混乱は起きないと思われますよ。」

 「新しくないんだ。その神に言わせると『ルーナレータ』を自らの分体と呼び、それ以外を11の眷属と呼んでいたんだ。自分の存在を認識しているのは、その分体と11の眷属だけだって言ってたね。名は無いと言ってたから、『原初の女神様』と呼んだんだけど、どう?」

 「どうって、神様に名を付けるだなんて、そんな恐れ多いことを・・・」

 「天空の魔法円は、この世界、この空間を創り維持しているものらしいんだ。国境の結界だと思われているものは、この空間を維持している境界で、その外には何もなく、国境門が唯一、外の世界へ転移出来る門なんだろうね。その分体が守る門が1番最初の門だと思う。その後眷属が増えるごとに、他の世界につながる門を次々に開いていったんだと思うよ。」

 「分体と言われてるのは、神様だと認識していいと思うけど、眷属っていうのはどこから現れたの。それも分体なのかしら。」

 「いや、普通にこの世界で生活してた人達じゃないのかな。天空の魔法円は、もともと見えてなかったのが見えるようになったんだけど、何故なのか考えたら、ある一定以上の魔力を持つことが原因だと思う。その魔法円を見せて、大きな魔力を持った人間を誘ってるんだ。そこに魔力を込めることで、眷属になる資格を得た、生きてるうちに魔力をもっと大きくしろ、死んだら使役してやる、みたいな事言ってたけど、嫌ですよっ!!って言ったら、放り出された。拒否権は無いらしい。」

 「あきれたわ、神様にそんな態度をとるなんて。」

 「アドリアーヌ様、私は何をお話になっていらっしゃるのか、理解ができなくて、めまいがしてきました。アドリアーヌ様はご理解なさっているのでしょうか。」

 「アンジェリータ様、今のショウの話したことは、今すぐの理解は難しいと思います。後ほど、私が文書にしてお送り致します。」

 「お願い致します。この話は国民には知らせないことにします。アドリアーヌ様も、他言されないようにお願い致します。」

 「アンジェリータ様、国民どころか、貴族達、アンジェリータ様の側近にも話されないことをおすすめ致します。」

 「そうですね、そういたしましょう。」

 「私からお送りする文書は、アンジェリータ様に目を通していただいた後は、王立図書館の奥深くにしまって、王以外の目には触れないようにお願い致します。」


 「ちょっとっ!! 王立図書館、あるの?」

 「ありますよ。」

 「そうか~、王宮生活もいいかも知れないね~ ちょーっとこっちで生活しようかな。」

 「だめよ。ショウがいるだけでどれだけ迷惑をかけると思ってるのよ。」

 「アドリアーヌ様、私がお預かり致しますよ。何も迷惑だとは思いませんし、娘が、妹ができるって喜んでおりましたのよ。」

 「え?」

 「ショウは男の子ですのよ。」

 「ええー、そうなんですか。とても優しいお顔立ちで、着ている服は女の子用ですよね。」 「娘の服を着せたら可愛らしすぎて、男の子の服を用意しなかったのです。」


 ええー、これ女の子用なの? アルテミスのお下がりかい。なんかひらひらしてるなと思ったよ。まっ、いいか。赤ん坊が何着てても関係ないや。





 王宮でお世話になることが決定して、マーシェリンは引き続き専属護衛で付いてくれることになったけど、グレーメリーザはテルヴェリカ領で必要らしい。その代わりにイブリーナを付けると言っていた。

 アドリアーヌに、成人したばかりの護衛見習いで大丈夫なのか、と聞いたら、


 「ショウの護衛というよりも、イブリーナに経験を積ませたいのよね。」

 「俺の安全は “アウトオブ眼中” ですかっ!!」

 「ショウの身の心配よりも、何か騒ぎを起こさないか、それが心配よ。」


 そりゃそうだな。自分でも、護衛はいらないんじゃね、と常々思ってるし。

 マーシェリンとイブリーナは、身の廻りのものを取りに行かなきゃいけないから皆と一緒に帰って行った。

 俺はその間、王様とその娘アルディーネにいじられて・・・ 俺はおもちゃですかっ!! 今度はアルディーネのお下がりで着せ替え人形だ。王様、暇かっ!!


 マーシェリンが俺の着替えを持って戻ってきた。と言っても、アルテミスのお下がりだけど。


 「ショウ様、アドリアーヌ様より、当座必要なお金ですと、お預かりしてきました。」

 「お金や魔石が部屋に置いてあったのに、それを持ってくればよかったんじゃないの。」

 「それがありましたのでお断りしまたら、ショウ様のお金と魔石は没収されました。『大きくなってお金が必要になったときに渡します。必ずテルヴェリカ領に帰ってきなさい』とおっしゃっていました。」

 「ええー、とられちゃったのか。まあいいか、お小遣いもらってきたのなら。イブリーナは一緒には来なかったんだね。」

 「明日、侍女に同行してきます。」



 最初に目覚めた部屋から比べると少し小さな部屋だけど、それでも豪華な部屋だよね。こんな豪華な部屋でなくていいと言ったら、案内してくれた侍女・・・かな? 女性が『いつもアドリアーヌ様がお泊まりになる部屋でございます。』と言われた。

 年に一度の首脳会談に、すべての領主が集められるそうだ。領主夫妻に身の回りの世話係、領のブレーン、護衛騎士、なかなかの人数を引き連れてやってくるそうで、ここからここまでがテルヴェリカ領専用ですよと言われた。どんだけ部屋数あるんだ。そんなところに俺とマーシェリン二人だけ・・・・・ 落ち着きませんよっ!!

 寝てしまえば、どこでも同じだけど・・・ 侍女の部屋一間で十分じゃね。いまだに『座って半畳、寝て一畳』の精神が染みついてしまってる。こんな贅沢をしても、極力その精神を失わないようにしよう。

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