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27.ブラックホールをイメージ

 マーシェリンに抱かれアドリアーヌの部屋を出たら、初めて見る護衛騎士が待ちかまえていた。アドリアーヌに新しく付いた娘か。グレーメリーザが俺の護衛騎士になったから、補充されてきた新人か。まだ見習いらしいけど、イブリーナって言ってたな。


 「その子がショウ様なのね。初めて拝見するけど、かわいらしい赤ちゃんね~。マーシェリン、私にも抱かせてもらえないかしら。」

 「イブリーナ、ショウ様には極力関わらないように言っておいたはずですよ。」

 「リベルドータ様、こんなにかわいらしいんですよ。抱っこして癒されたいと思いませんか。赤ちゃんなんて、なかなか見る機会も無いですし。」


 この娘は俺を人形みたいに考えているんじゃないの? 俺はおもちゃですかっ!! マーシェリンの胸にギュッと抱きついて顔を(うず)める。


 「癒されたいと思うのは分かりますが、ショウ様はなかなかに気難しいお子様ですから、接し方に気を付けなさい。ほら、マーシェリンの胸に顔を埋めてしまってるから、イブリーナは嫌われたかもしれないわね。」

 「ええ~、そんな、酷い。私なにもしてませんよ。マーシェリン、私は嫌われてしまったの?」

 「そっ、そんな事はなっ、無いと思うわ。イブリーナを嫌わないように、ショウ様に後で伝えておくわ。」

 「何をあわててるのよ。伝えるって、そんな事言われても赤ちゃんは理解できないでしょ。」

 「いえ、ショウ様は賢いお子様です。私たちの喋る事はかなり理解をしているわ。だから一人の人間として接してあげないと、嫌われる事もあるかもしれないわ。」

 「・・・・・ 分かったわ、・・・ ショウ様、ごめんなさい。もう抱かせてなんて言いませんから、せめて嫌わないでください。」


 振り向いたら、イブリーナが今にも涙がこぼれそうなうるうるした目で見つめていた。悪い娘じゃないみたいだ。抱っこさせてやるくらいならいいか。それだけで護衛騎士としての(まも)りたいというテンションが上がってくれればよしとしよう。イブリーナに向けて手を伸ばす。こんな時の台詞は『苦しゅうない。近うよれ。』か?・・・ 殿様ですかっ!!


 「イブリーナ、抱っこしてもよろしいようですよ。ショウ様が手を伸ばしていますよ。」

 「え~、本当ですか。ありがとうございます、ショウ様~ ありがとう、マーシェリン~ ヒック、ウグッ。」


 イブリーナが俺を胸に抱いて涙を流し始めた。おいおいおい、鼻水垂らすなよ。すかさず、マーシェリンがハンカチを出し鼻を押さえてくれた。マーシェリン、グッジョブ。



 自室に戻ってきて早速マーシェリンに、ヤギのミルクをポットに用意してもらって時間凍結の革袋に入れておく。これで夜中にお腹がすいてもミルクにありつけるね。

 ベッドの上に座らせてもらい目を瞑る。ベッドといってももうベビーベッドではない。キングサイズのベッドだ。赤ん坊の目から見たら、寝返りで転がりまくっても果てがないような巨大なベッドだ。

 さて、ベッドの上で目を閉じて、さっきのアドリアーヌの部屋でのブラックホールの件を考える。体内の魔力自体はさっきの圧縮で、ほとんど熱を感じる事が無くなっているから、余分な魔力は今は無いんだろうね。そうしたら体内の魔石で魔力を発生させて、イメージしたブラックホールに吸わせるか。

 今まで魔力切れみたいな感じで突然の意識喪失なんて事に何度もなったおかげで、魔力を発生させる能力が異常に大きくなってる気がする。圧縮なんてしなくても、大きな魔力が必要な時には、一瞬で巨大な魔力を体内で精製することが出来そうだ。今なら、あの時に魔力で創った○ヴァっぽい物よりも遙かに大きなものでも創り出せるだろう。

 でも『貯める』とか『貯蓄』とか、日本人が大好きだったんだよね。漏れることなく俺も貯蓄好きだったから、圧縮して貯め込むなんて行為は・・・ やっぱ、やるでしょ。やらないわけがない。


 そういう事でまずは魔力を精製、体内に充満させよう。

 一気に魔力を(ふく)れ上がらせるとなんだか危険な気がするので、徐々に、恐る恐る、そ~っと、そ~っと。魔法や従魔を創るために魔力を放出するわけではないから、一気にやって俺の体が爆発したって事になったら困るよね。想像しただけでこえーよ。

 徐々に体内の熱が上がってきた感じだ。でもまだまだ耐えれるぞ。


 かなり熱くなってきたぞ。ここまでの熱さは、この世界に生まれ落ちて、ウルフに襲われていたときの熱さを、遙かに超えている気がする。魔力に対しての耐性が上がっているのかな。でももうそろそろ限界だ。燃え上がりそうなほどに熱さを感じている。

 あの砂粒大の魔力の固まりを、ブラックホールとしてイメージする。全てを吸い尽くし、光りでさえも飲み込まれたら逃れられないといわれるブラックホール、それを強く強くイメージする。


 あれだけあった体内の熱が、一瞬で飲み込まれた

 何が起きた?

 ヤバいっ!! 体内に充満していた魔力が一気に持ってかれた

 しかも止まらない

 クソッ!! 魔力発生マックス、無限大・・・ は無理か

 どれだけ魔力を供給しても全く追いつかない

 もう、○ヴァっぽい物を創ったときの魔力分は、はるかに超えてる

 何もかも吸収しようとするブラックホール、そんなものをイメージするのは危険すぎたのか

 人が手を出してはいけない領域だったのだろうか

 もう・・・・・  持たない



 マーシェリンとグレーメリーザが部屋へ飛び込んできた。


 「ショウ様ッ!! どうされましたっ!! この大きな魔力の動きはいったいどういう事ですかっ!!」

 「来るなっ!! 俺にさわるなっ!!」


 手を伸ばしてきたマーシェリンが、その場で動けなくなる。


 「グレーメリーザ様、どうすればよいですかっ。」

 「落ち着いて、マーシェリン、あなたはここでショウ様を見ていて。私はすぐにアドリアーヌ様をお連れします。ショウ様には触れないようにして。」


 走り出るグレーメリーザを見送ったマーシェリンが、振り返って近づいてくる。


 「ショウ様、大丈夫なのですか? 私に何かできる事はあるのでしょうか。」

 「何もするな。絶対に・・・ さわるな・・・ ごめん・・・ ありがとう・・・ 」


 もう限界が近い。意識が飛んでも、まだ何かを吸い込み続けるのだろうか。今回の状況は意識を失ったら、もう目覚めないような気がする。そこまでヤバい事をやっちまった感が強い。マーシェリンにはお礼を言えたけど、アドリアーヌには言えそうもないな。


 「なぜ謝るのですか。なぜお礼をおっしゃるのですか。私はショウ様と一緒に行きます。」


 マーシェリンが泣きながら抱き付いてきたときには、もう限界だった。突き放す事も出来ず、意識が暗い闇の中に落ちていった。

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