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151/154

151.薄馬鹿下郎? 薄羽蜻蛉ですっ!!

 お昼寝を充分にとった後は、元気はつらつっ!! さあ、お仕事だ。


 さて、今回は樹木の移植だ。【土石震動魔法】でズルンと木を抜いてしまったら、枯れてしまう。

 だから今回はラフターを使わずにバックホウでカメリアの木の根を土ごとごっそり掘ってしまう。12トンクラスのバックホウだ。カメリアはそれほど大きな木じゃないから、これだけデカいバックホウなら一発で根っこを掘り出せるぞ。

 マーシェリンの腕に抱かれたまま、魔力を放出して12トンバックホウを形成する。

 じいさんにコナンの姿を見せるわけにもいかないだろうと思って、今日はマーシェリンに抱かれて移動だ。護衛にイブリーナが横に付き従う。


 「ショウッ、乗りたいっ、乗りたいっ!!」


 案の定だ、アシルが飛んでくる。そう思ってアシルの座席も付けといたんだけどね。

 目を丸くしてるじいさんと護衛達。


 「じいさんも乗ってみる?」

 「すごいよ~、楽しいよ~。」


 アシルまでじいさんに乗る事を勧めている。アシルのお気に入りを体験してもらいたいのだろうか。


 「これは・・・・・ 一体・・・ 」

 「これはね~、ショウの従魔だよ~ 人が乗れるんだよ~ さあ、じいさんも乗ってみようよ。」


 アシルがじいさんの手を取ってバックホウに引っ張ってるけど、アシルまでじいさん呼びかいっ。


 アシルに手を引かれたからというわけではないだろうが、じいさんはバックホウの操縦席に座った。

 やっぱり、じいさんもでっかい乗り物に憧れる男の子だったんだ。これは男の子共通の夢なんだっ。


 さて、遊んでるわけにはいかないぞ。カメリアの木を好きなだけ持ってっていいと言われてるんだ。たっぷり持って帰るぞ。

 だからといって、根こそぎ掘り返してしまったら、環境破壊この上ないっ。所々に若木を残しておけば、その若木が成長しながら実を落とし新たなカメリアが成長する。そうしてまたカメリアの木が増えていってくれれば、ここの自然は守られる。

 そう、自然保護は人類の永遠の課題なんだよ。


 空き地の中をバックホウを前進させて、カメリアが立ち並ぶ林のヘリまで移動する。アームを上げ木の向こうにバケットを伸ばす。アームを下げて・・・・・  あ、駄目だ。バケットがデカすぎる。このまま下げて土を掘った場合、その廻りのカメリアの木をなぎ倒してしまう。

 どうしよう。パワーショベルに形状変更してみるか。そうすれば手前から外に向かって掘る事ができる。

 よし、バックホウの形状変更、バケットの内向きから外向き、パワーショベル。

 これで木の生えていない空き地側から掘れるぞ。


 土の上にバケットの爪を突き刺しグイグイと土の中に突き立てていく。

 あ、あ、あ~・・・・・ これも駄目だ。土がひび割れ、後ろの木まで持ち上がっていっちゃってるよ。

 駄目だ駄目だ、ユンボで掘ろうと思ったのが間違いだったんだ。


 「お~い、じいさん、アシル~。この従魔では掘れそうもないみたいだ。従魔から降りてくれ。」


 じいさんが残念そうに降りてきた。アシルはそれほど残念そうではないな。俺がまた何か新しい事をやり出すと思って期待してるのか?


 「そうか、なかなかに心躍る体験だったんだがな~。もうおしまいか。」

 「この従魔で一本の木の根を掘ると、廻りの何本もが倒れてしまうんだ。だから土魔法で何か考えてみるよ。」

 「そうだよ、ショウは魔法で何でもできるもんねっ。」

 「何でもできるわけではないと思うぞ。できるように努力はするけどね。」


 努力はすると言ってもどうするんだ? 幹の廻りの土をまあるく掘って根巻きをしなきゃいけないんだけど、そんな事を手作業でやってたら膨大な時間がかかるぞ。魔法で一気にスポーンと引き抜けないものかな。

 魔力か、土の中に俺の魔力を差し込んで根と土を包んで球状に魔力の根巻きをする。そうしたら【土石震動魔法】で液状化させれば根巻きの球が簡単にスポーンと・・・・・

 できるかな~、【土石震動魔法】が根巻きの球の中にまで影響して砂状になったりするとカメリアは枯れてしまうんではなかろうか。

 悩んでいてもしょうがない。一本掘ってみよう。


 カメリアの根元に魔力の触手を差し込む。地中で布状にして根と土を包み込む。割と大きめの球にしておく。そこまでやれば後は【土石震動魔法】の魔法円を展開、発動。

 振動が根巻きの球の中に伝わらないように魔力を多めに供給しておいて、根巻きの球を触手で引き上げる。振動で波立つ砂の中からズルッと根巻きの球が浮かび上がる。

 地表において根巻きの球を確認してみれば・・・・・  だめか~~~ 中の土が砂状になっている。


 「え~、なになに、だめだったの~? 何が駄目だったのさ。」

 「この球の中にまで振動魔法が干渉して砂になっちゃうんだ。」


 俺を抱いていたマーシェリンが助言をくれる。


 「ショウ様、魔法攻撃を受けたときには【魔法防御結界】です。その球に魔法を干渉させたくないのなら【魔法防御結界】をかぶせてみてはいかがですか。」

 「お、おお~~~~~~っ!! マーシェリン、すごいっ!! そうだよっ、それなら球の中の土は砂状にならないはずだ。ありがとうっ、マーシェリン。」


 まさかまさかのマーシェリンの助言だ。しかも的確に今の問題点を指摘してきた。俺の中でのマーシェリンの評価が爆上がりだっ!!

 マーシェリンを大絶賛する俺、頬を染めて俺を抱きしめるマーシェリン。ちょっ、ちょっと、力強すぎっ、マーシェリン、ギブギブ


 よ~し、気を取り直してもう一度チャレンジだ。

 魔力の触手を差し込み、布状にして根と土を球状に包み、その球体の中に【魔法防御結界】の魔法円を展開、【魔法防御結界】は廻りを包み込んだ魔力なりに球状に展開するようにして発動。よし、いいぞ、うまくいってる。

 次は球の外側に【土石震動魔法】の魔法円を展開、震動範囲は大きくならないようにその木の根が張っている範囲だけ、ほんのわずかの魔力を注ぎ発動。

 木の幹の廻り、土が液状化して波立つ。つながっている触手を上に引き上げれば、ズルッと根巻きの球が引き上げられた。


 根巻きの中の土は?・・・・・ よっしゃ~っ!! 砂になってない。【魔法防御結界】がちゃんと働いてくれていたようだ。

 よし、よしっ!! 後は同じ事の繰り返しだ。サクサク掘りだそう。


 掘りだしては収納、掘りだしては収納を繰り返し、廻りが穴だらけになってしまった。しかもその穴があいているところは土が砂状に変化しているから、アリジゴクの罠状態で足を踏み入れようものなら、罠にかかった蟻のごとく、あがいても穴の底へズルズルと落ちていく。

 そう、俺を抱いたままマーシェリンが落ちた。穴のへりの砂に片足を取られ、慌ててもう片方の足をついた先も砂だった


 「ちょ、お、落ちるっ。イブリーナ、イブリーナっ。」

 「マーシェリンっ、大丈夫なのっ。」

 「ショウ様をお願いっ!!」


 放り投げられた俺はイブリーナにキャッチされた。

 ちょっとーっ、扱い雑なんですけどっ!!

 アシルは砂の底でジタバタと足掻くマーシェリンの頭の上を飛び回ってるし。


 「なにっ、なにっ、マーシェリン、なに楽しそうな事やってるのさっ!!」

 「いや、マーシェリンは楽しくてやってるわけじゃないぞ。」

 「そんな事ないよっ。楽しいよ、これっ。」


 アシルがすり鉢状の砂の中で滑り降りては上に飛びまた滑り降りる。遊び始めちゃったよ。アシルは放っておいてマーシェリンを助け上げよう。

 魔力の触手でマーシェリンを吊り上げ土の上に降ろす。


 「アリジゴクにはまる蟻の気分です。」

 「やっぱ、そう思うか~。穴掘ったまま放置は危険だな。掘ったところは埋めておこう。」


 アリジゴクの恐怖体験は、なかなかに体験できそうもない体験ができたという事で、マーシェリンには勘弁してもらおう。穴の底にアリジゴクが待ち構えていたわけじゃないしね。

 そもそも、アリジゴクってなんの幼虫だったっけ・・・・・? あ~ そうだ、あれだ、(うす)()鹿()()(ろう)だ。ん・・・・・?  (うす)()(かげ)(ろう)ですっ!!


 いやもう、ウスバカゲロウの文字がどうとか関係は無い。穴を埋めるんですよっ。


 この場合、図面を作るつもりはないから【読込】は全く必要はないな。ボコボコと穴が空きまくった地面に魔力を放出して【土石創造】の魔法円を展開、そして発動。魔力の土石が全ての穴を塞ぐ。魔力で創られた物を【魔力固定】の魔法円を展開、発動、で物体として留める。

 穴ぼこだらけだったのが、綺麗な平地になった。歩いてみても砂に埋まるところは無さそうだし、うん、大丈夫だ。


 「ショウ、今のは【建築物創造】ではないのか。魔石の介在も無しに発動させたというのか。」

 「これは【建築物創造】の基になっている【土石創造】だよ。魔石がいるかいらないかは、魔法円を記憶できているから魔石はいらないかな。」

 「なんと、アドリアーヌ殿はこんな年端もいかぬ子供に、どれだけの魔法を教え込んでいるのだ。」


 教えてもらってないと言えば、また答えるのがメンドくさい事になるな。そういうときの必殺技、『お愛想笑い』・・・・・ えへへ、

 えへヘに対してのじいさんの追求はなかったが、アレが気になるらしい。


 「あの、所々にポツンポツンと残っているカメリアはどうするのだ。掘らぬのか?」

 「所々残しておけば、そこで実を落としまた新しいカメリアが増えてくるんだよ。」

 「増えなくてもいいだろう、花がポトポト落ちるのを騎士達の間では縁起が悪いと嫌われているのだが。」

 「嫌われてるから全て無くしてしまおうだなんて、環境破壊もいいとこだよ。今の自然環境を保つ意識を持った方がいいと思うよ。」

 「そうか、環境か。では他の木を植えてもらうように現領主に進言してみるか。」

 「何言ってんだよっ。この残してあるカメリアから取り木や分け木をしてカメリアを増やすんだよ。」

 「なぜそれほどにカメリアにこだわるのだ。何か私の知らないカメリアの活用法があるというのか。」

 「帰る時に教えようと思ってたけど、ここで教えておくよ。カメリアの実は良質の油がとれるんだよ。コイツの油はサラサラでべとつかないからね、刃物の手入れに使ったり髪に擦りこむ油としても重宝するよ。」

 「なんと、油とは。」


 マーシェリンに出してもらったハンカチに拾い集めた実を包み込む。石の上に乗せて包んだハンカチごと手に持った石でガシガシと叩いて潰せば油がにじみ出てくる。

 にじみ出てきた油をマーシェリンの剣にこすりつけてじいさんに指し示す。


 「ほら、さわってごらん。べたつきがないんだよ。」

 「ほ~、ここは宝の山だったという事か。」


 じいさんの手にも椿油をこすりつけてやれば、髪になでつけて満足そうな顔だ。


 「今回、掘ったカメリアの木は半分は俺がもらっていくけど、残り半分は領都に置いていくよ。植木職人総動員で植栽してもらえば、領都で椿油の生産が可能だよ。」

 「タダで持っていっていいと約束したにもかかわらず、半分を置いていってくれるのか。ありがたい申し出だ。ショウ殿、恩に着る。」


 ここのカメリアの原生林を見ればね~、こんなたくさん持っていってもテルヴェリカでは管理しきれないだろ。

 桜を運んでる職人達は、そのままテルヴェリカに残ってくれるらしいけど、年寄りばっかだしな~。これは早急にその年寄り達に若い弟子を付けて、次世代の職人の育成を急がねばっ!!・・・・・アドリアーヌが・・・・・

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