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149.ハンバーグ、うまうま

 ハンバーグが運ばれていくのと一緒に、俺達も客席に戻る。


 「おまえ達が植木職人達を切り捨てようとしたのは聞いておるっ。申し開きがあるのなら述べてみよ。」


 じいさんの声が聞こえてきた。騎士達が食事に降りてきたようだ。そんな事など今の時点で俺には全く関係ない。俺の座る目の前にハンバーグがっ!!


 「ショウっ!! 何なのさそれっ!!」

 「これは俺のだ。小さな子供が食べられるように調理した肉料理だ。」

 「・・・・・あた・・・・・・ あたしも小さいよ、あたしも食べても大丈夫だよね。」


 涎を垂らしながら俺のハンバーグを凝視してくるアシル。しかもアシルだけじゃない。ポスダルビア親子までガン見してくる。じいさんはお説教モードじゃなかったのかよっ!!


 「ショウ殿、それは何なのだ。焼いた肉の香りがするが、肉にしては形が丸く整いすぎておる。

 おい主人、この料理を私も所望する」


 テーブルにいた連中が、私も私もと主張し始める。マーシェリンまで。


 「申し訳ないんですが、あと三人分ぐらいしか材料が残ってないんです。」

 「あ、それなら大きさを半分にすれば6個できるよ。

 アシルはいらないだろ。俺のを勝手に食ってるし。」


 アシルと競争でハンバーグの食い合いしながら、料理人に教えてやれば、なるほど、と頷きながら厨房へ戻っていく。


 「ショウ、美味しいよっ、これっ。何て料理?」

 「私もその料理の名を知りたいぞ。」

 「ハンバーグって言うんだけどね、って言うか、じいさん説教中じゃなかったのかよっ!!」

 「おお、そうであった。

 おぬし、申し開きはできるのか。」

 「へ、平民が、こちらのショウ・アレクサンドル・テルヴェリカ様に無礼な物言いをしたためでございます。」


 フルネームで呼ばなくてもいいよっ、ってか、ハンバーグ、うまうま


 「その程度の事を気にするほど、ショウ殿は小さき男ではあるまい。」


 いえいえ、まだまだ小さき子供ですよっ。って、待てアシル、食い過ぎっ!! 俺のハンバーグ~


 「そもそもショウ殿が平民の格好をしているのは、平民と同じ目線で会話をしたいのだと思わないのか。」


 あ、それ言えてる。お上品な格好で気取った会話をしてると、歯が浮くというか何というか、そんな付き合いって気疲れしちゃうよね。やっぱ俺は、平民同士のざっくばらんな会話が好きだね。


 ふ~、食った食った。といってもアシルに半分以上食われたけど。


 「今回の任務は、職人達を無事テルヴェリカ領主城まで送り届ける事である。その職人を切り捨てようとしたのだ。隊長を降格とし、今回の護衛の任を解く。追って沙汰があるまで待機。

 ショウ殿、これでよろしいか。」

 「・・・・・・・え? あぁ、いいんじゃないかな。」


 突然フィリベールに振られて返事しちゃったけど、もう一人平民蔑視の若造騎士がいたよな。コイツも自宅待機に・・・・・ う~~ん・・・・・ まぁいいか、あの若造は立ち位置がスネ夫みたいなもんだし権力持った隊長がいなくなれば、他の四人に迎合するようになるでしょ。


 「お待たせ致しました。」


 おぉ、ちょうどハンバーグが運ばれてきた。こっちも話は終わったようだし、みんなの意識がハンバーグに向かう。

 他の騎士や年寄りの職人達の分は無いからね。欲しそううな顔してんじゃないよ。おまえ達には肉があるだろ。


 「ほほう、これがハンバーグというのか。これはなかなかに旨い。ショウ殿、調理法を教えてはもらえないだろうか。」

 「ここの料理人が作ったんだから、料理人に聞けばいいじゃない。」

 「いやしかし、先ほどショウ殿が創ったおもちゃのような道具、あれを使ったのではないのか。あれを私にも創ってはもらえぬか。」

 「あ~、それは次回の領主会議をお楽しみに。」

 「なんとっ、そんなに待たねばならんのか。」

 「初めて創ってみたんだけど、問題点もあったからそのあたりを改善して、しっかりした商品として販売するよ。」

 「そうか、それではしょうがない。が、一番はこの私が買うぞ。」

 「わかった、約束するよ。じいさんとこに一番で持ってくよ。」



 さて晩ご飯も終わったし、ポスダルビア領主城へ帰るとするか。

 帰りは元隊長が増えているけど問題はない。5人の騎士に後の事を託して転移円を発動。ポスダルビア領主城へ帰ってくる。

 元隊長は騎士団本部で説教でもされるのだろうか、騎士団長のフィリベールに連行されてった。体育会系みたいに正座でセッキョーか?

 俺達はお世話係の侍女を付けられて部屋へ案内されている。

 おや? じいさんが一緒に歩いてきてる。フィリベールの替わりに他の騎士をつれてぞろぞろと付いてくる様は、うっとうしい事この上ない。


 案内された客間は応接の部屋に執務もこなせるようなかんじの部屋、奧にベッドルームが三間備え付けられていた。

 いやいや、豪華すぎでしょ。ベッド一つあれば・・・・・ 今回はイブリーナもいたな、ベッド二つあれば充分でしょ。っていうか、それって貧乏人の考え方が染みついてるよな。

 いやいや、貧乏人のひがみ根性とかではないよ。貧乏というよりも質素だな。座って半畳寝て一畳の精神が染みついているから、こんな広い空間をあてがわれると落ち着かね~。こんなんだったら外で野宿のほうが落ち着くよ。


 「今回ショウ殿は少人数なのでこの程度の客間にしたが、もっと広い部屋がよければ他へ案内するが、どうする?」


 あたりまえのごとくにソファーに腰を据えたじいさん。案内した侍女も、これまたあたりまえのようにじいさんと俺にお茶を用意してる。付いてきた護衛達は扉の外とじいさんの後ろに分かれて背筋をビシッと伸ばして立っている。そのおかげでマーシェリンとイブリーナも俺の座ったソファーの後ろに立たざるをえなくなる。

 これは年寄りのおしゃべりに付き合えってことらしい。


 「この部屋で充分、って言うよりも、もっと狭くても何も問題はないよ。」

 「テルヴェリカ領主の子が客として訪問しておるのだ。みすぼらしい部屋に案内はできぬであろう。気の向くまま逗留してもらってかまわぬぞ。」

 「気の向くままって、カメリアの群生地を教えてもらったら明日には出るよ。」

 「待たれよ。まだ到着したばかりであろう。ゆっくりしていけばよいではないか。」

 「テルヴェリカに向かった職人達が領主城に着くまでには、俺も帰りたいんだよね。そうすれば桜の植樹に立ち会えるでしょ。」

 「そんなに急ぐのか。それでは私も急いで準備せねばならぬな。」

 「準備って何を?・・・・・ まさか、じいさんも一緒に行くのかいっ。」

 「それはそうであろう。ショウ殿と行動を共にしたかったからこそ領主の座をテオファーヌに押しつけたのだ。」

 「その程度の理由で領主の座を降りちゃったのか。」

 「いや、引き時というのもあるのだ。いつまでも年寄りが居座っていたら若い者が育たぬ。退き際もそれなりには考えて、いつ引退しようかと考えておった。ショウ殿の来訪をちょうどよいきっかけに利用させてもらった、と考えてもらえればよい。」

 「領主の重責から逃れて遊びに行きたかっただけじゃないの。」

 「はっはっはっ、まあ、そういった理由もあるな。」


 明日の準備があると言って席を立つじいさんに釘を刺しておく。


 「従者をぞろぞろと連れて来られても困るからね。連れてくのは護衛二人まで、こっちの護衛が女性だから女性騎士にしてもらえると助かるね。」

 「ふむ、承知した。料理の得意な騎士がよいか。」


 そうか、食事か・・・・・  人数は6人、アシルもいるから7人分。日数は4日ぐらい用意すれば足りるかな。

 テルヴェリカ領から持ってきた料理もまだ残ってるけど、それは帰る時の食事として残しておこう。


 「明日の朝食の時に、7人の4日分の料理を用意してよ。」

 「ほう、【時間凍結】の保存庫を用意しておるのか。承知した。朝食の時間に用意させよう。」


 準備をせねばと足早に立ち去っていったけど・・・・・・  保存庫じゃないんだけどね。明日の朝に収納しまくったら驚かれるかな。

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