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133.タケノコ掘り

 桜のつぼみがぷっくりふくれてきた。まだまだ冷えるが、もう春の足音が・・・ もう開花もすぐだな。

そろそろポスダルビア領へ出掛ける算段をつけないといけないな。

 花見が終わってからだけどね。

 桜が舞い散るわびさびを感じられるっつーのもひとえにポスダルビアのじいさんのおかげだな。なんかお土産持ってった方がいいかな。ウルカヌスが一生懸命創ってる鍋? いや、鍋は領主会議で決められた取引量があるしな、塩も他領よりも大量に約束してるし、

 なんかないかな・・・・・  時期の食材とか・・・・・ 今の時期の食材って何だ?

 サヨリとかさわら? 海の幸は春はあまり期待できないんだよね。春の定番といえばタケノコか? 『明日之城』の麓に竹林あったよね。タケノコでも掘りに行ってみるか。


 大天守の最上階に転移してきた。『明日之城』も久しぶりに来たな。ここは騎士団の駐屯地にもなってるから、下の広場で騎士達の剣術訓練やってるのを眺められる。

 近いうちにポスダルビア領の植木職人が桜の苗木を植樹に来るんだし、騎士団のこの広場での訓練は規制しないといけないな。

 もし、桜を傷つけようものなら、お仕置きしてやる。


 さて、騎士団の訓練を見に来たんじゃない。今日はタケノコ掘りだ。『明日之城』の最上階から觔斗雲で竹林のあった辺りへ向かって山を降りていく。

 あったあった。竹が鬱蒼と生い茂っている場所が見えてきた。

 これはちょっと・・・・・  暇なときに手入れしとけばよかったな。竹が多すぎて竹林の中に足を踏み入れられないぞ。枯れた竹があっちにもこっちにも。青竹に倒れかかった状態だし。

 こんな状態だと竹林の中に日が差さないから、タケノコも出てくる時期が遅れるんだよね。

 竹林の外縁部にはタケノコがぽつぽつと頭を覗かせている。このタケノコを掘ったらこの竹林の竹をマーシェリンと一緒に切りまくるかな。


 タケノコを掘るにあたって鍬を用意しておいた。しかし幼児体型でこの鍬をふるのは至難の業だ。ここはコナンのパワーで掘ろう。

 まずは【土石振動】の魔法で頭を覗かせたタケノコのまわりを液状化させて、タケノコの下の方にある赤イボが出てくるまで手で砂を除ける。赤いイボイボが出てきたらその下に向けて鍬を振り下ろす。ザクンと鍬が入りタケノコが掘り出せる。後はちゃんと埋め戻して砂を【転圧】の魔法で固めて、これでまた来年タケノコが生えるぞ。


 「ショウ、そんなものを掘り出して何に使うのよ。」

 「これはタケノコといって美味しいんだ。きっとアシルも美味しいって言うぞ。」

 「ええっ、食べられるのっ。固くて歯が立たないんじゃない? このいっぱい立ってる木になるんでしょ。凄く固いよ。」

 「木じゃなくて竹だ。この竹の子供だからタケノコだ。これから成長して固くなるけど、タケノコは柔らかいんだよ。」

 「そうなんだ。どんな料理になるのさ。」

 「いろんな料理法があるよ。煮たり焼いたり炒めたり、俺が好きなのはタケノコご飯かな。」

 「私もそのようなものを食べた記憶がありません。イクスブルク領でもテルヴェリカ領でも見ていませんね。」


 マーシェリンも知らないという事は、タケノコを食べようなどと考える人間はこの世界にはいなかったみたいだな。アドリアーヌならタケノコ料理を知っていると思うんだけど、竹林がある事を把握してなかったんじゃないかな。これはアドリアーヌにもいいお土産ができたぞ。


 「じゃあ、どんどん掘るからこの袋に詰めてくれ。」


 大きめの革袋を取り出して、マーシェリンに渡す。


 「掘ったタケノコを入れるのに注意する事は、逆さに入れるんだ。根の方を下に向けると水が出ちゃうからね。頭を下に向けて。」

 「かしこまりました。」


 掘った掘った、少ないと思ってたけど、陽当たりのいい側を探しながら掘ってたら30本ぐらい掘ったかな。革袋ごと異空間収納に収納していった。

 お昼のお弁当を食べ、午後の作業について話す。


 「午後はここに生えている竹を切ろうと思うんだ。密生しすぎてるからね、竹林の奧の陽当たりをよくしたい。」

 「のこぎりは持っておられるのですか。」

 「いや、のこぎりで切るのは手間がかかる。剣で袈裟切りにしよう。」

 「それは剣術の鍛錬になりそうですね。」

 「鍛錬にはなるだろうけど、剣を傷めないようにね。」

 「確かにこんなものを切るとなると、刃こぼれしそうですね。」


 マーシェリンは身体機能が常人よりも遙かに高い。剣を力任せに振り回す事もないだろうとは思うが、この固い竹を切るにあたって刃こぼれどころではない。剣を折りかねない。

 マーシェリンの運動能力のパワーアップはしているが、剣の強度アップはしてないからな。剣に魔力を纏わせるように教えておこうか。


 「マーシェリンは従魔のペガサスを創る時に体内の魔力を放出するよね。その時にペガサスを形成するんじゃなくて、自分の体のまわりに魔力を纏わせる事はできるかな。」

 「そんな事はやった事もありませんし、誰もできないと思います。」

 「俺が今この体の表面に魔力を纏っているのは分かるかな。コナンになっていない幼児のままでも、俺の体は魔力の鎧で護られているんだ。」


 短剣を取りだして手に持つ。アンジェリータにもらった短剣だ。その短い方を出した。刃渡りはせいぜい15cmぐらいか。

 魔力をその短剣にも薄く纏わせ、短剣の切っ先よりも遙かに長く魔力の(やいば)を伸ばす。1mぐらいだろうか。

 その魔力の刃を青竹に向かって振り下ろす。美しく斜めにそぎ落とされた青竹が、地面に落ちるが竹の笹同士が絡み合っているようで倒れてこなかった。


 「魔力を纏わせた刃で切れば、刃こぼれの心配とかしなくても大丈夫だ。」

 「凄いです。コナン様が巨大魔獣を切ったときの魔法剣ですね。私にもできるでしょうか。」

 「ああ、そんな事もあったね。それをマーシェリンにやって欲しいんだ。マーシェリンの身体能力で剣を振り回せば、破損しそうだからね。」

 「やりますっ。是非ご教授下さい。」


 え~っと、どうやって教えよう。腕輪にはまっている魔石を介して魔力放出をしたらペガサスになるんだよね。一度形成された従魔の形状は変更が難しいと言ってたな。

 一度俺の魔力でマーシェリンを覆ってみて、魔力を纏う感覚を覚えてもらうか。


 「今マーシェリンのまわりに俺の魔力が漂っている状態、この漂った状態の魔力を衣服を着たような状態にギュッと凝縮させる。衣服のようにしなやかで、鎧を装着した様な強度を持たせる。剣に纏わせる魔力には強度を持たせ刃先は鋭く固く。どう、分かる?」

 「分かりますっ、ショウ様に全身を抱きしめられているようです。」

 「その状態で竹を切ってみて。」


 マーシェリンが剣を抜き放ち袈裟切りで竹を切る。剣を抜いた瞬間に魔力コーティングをしたから、抵抗なくスパンと切れる。


 「こ、これは凄いです。切れ味が全く違いますっ。」


 マーシェリンは調子に乗った。スパスパ切ったあげく、絡んで引っかかっていた竹同士が一気に倒れてきた。俺達に向かって。


 「キャ――――ッ!!」


 【(ゲート)】発動っ!! 魔力の触手で倒れ込んできた竹を全て絡め取り異空間収納に放り込む。


 「マーシェリン、何やってんだよっ、調子に乗りすぎっ!!」

 「も、申し訳ございません。あまりの切れ味に我を忘れました。」

 「今のを自分の魔力でやるんだからねっ。調子に乗らないようにねっ。」

 「はい、肝に銘じます。」


 魔石を介しての魔力放出には慣れているんだけどそれをやるとペガサスが形成されてしまう。魔石無しでの魔力解放ができない。行き詰まったのか?

 ペガサスが形成される前に俺の魔力を叩き込んで分解再形成してみる?

 いいかもしれない。ほんのちょっした刺激でも与えれば何かひらめくかもしれない。そういう娘だったよね、この娘は。


 もう一度と、魔力放出をしているマーシェリンの放出された魔力に、俺の魔力をぶつけペガサスを形成しようとするのを崩壊させる。その魔力を霞状にさせマーシェリンの体のまわりに漂わせる。


 「今だっ。その霞を体のまわりに凝縮させるんだ。」


 常日頃から体内での魔力の凝縮をしているから、体外に放出した魔力の凝縮も問題無くやってのけた。


 「これは・・・・・ できたのでしょうか。」

 「ああ、成功したようだ。剣を抜いてみて、その剣にも魔力を纏わせてみて。剣に纏わせる魔力は固く鋭く、だよ。」


 抜き放った剣に魔力を纏わせ凝縮させる。竹に向かって振り下ろせば、サクッとそぎ落とされる。

 小気味よい切れ味に大満足のマーシェリン。


 「素晴らしい切れ味ですっ。魔力を纏ったこの体も動きが格段に違いますっ。」

 「よしっ、そのまま竹を切っていってくれ。切った竹は倒れてくる前に収納していくから。」

 「はいっ、かしこまりました。」



 だいぶ竹を切った。おかげで竹林の奧の方まで日が差すようになった。これだけ陽当たりがよくなれば、タケノコも一気に頭を出し始めそうだな。しばらくは毎朝タケノコ掘りに来ないといけないな。

 マーシェリンがいともたやすく大量の竹を切り倒してくれた。おかげでまだ日の高いうちに帰れるぞ。

 厨房にタケノコを持ち込めば、夕飯の料理に間に合うんじゃないかな。

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