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118.監獄島みたいだな

 海原を進む『トランスポーター』号のデッキ上で歓声をあげる子供達。ジーナがハラハラとしながら子供達を見ている。子供達が落ちちゃいけないと、気が気じゃない様子だ。


 見えてきた。『沖之浮島』だ。前の島とは比べものにならないぐらい大きい。直径1kmの島のまわりが高さ10mの塀で囲まれている。オレンジ色の巨大な要塞島、とでも呼べる程のものだ。

 見方を変えると、塀で囲まれちゃって監獄島みたいだな。

 いやいやっ!! ここで働いてくれる皆さんに失礼ですっ!! 素晴らしいお風呂のある保養地という事にしておこう。


 騎士達の間でちょっとした騒ぎが起こってる。そりゃそうだ。一昨日の帰る時の『沖之浮島』と比べて、あまりにも巨大化しているんだからね。

 エレーナが、昨日拡張した事を説明している。門を開けないと島に入れない事を説明しているが、これは俺が行って開閉のしかたを教えなければいけないだろう。

 操船に二人を残し、觔斗雲に他の騎士達を乗せ島へ飛ぶ。


 「この船が出入りする門、扉に開ける魔石と閉める魔石が設置してあるから、そこへ魔力を注いでくれれば開閉できる。」


 試しに俺が魔力を注いでやると、ゴゴゴと門が横にスライドを始める。巨大な門だ。1枚の門を開けただけでも『アッシュールバニパル』号が出入りできる門だ。その門がもう1枚反対側にある。

 今開けている門に騎士を2人残し、他の騎士を連れて反対側の門を開けに、觔斗雲で飛ぶ。もう開閉のしかたは理解してくれただろう。後は騎士達に開けてもらおう。

 大きく開いた門から『トランスポーター』号がゆっくりと入ってきた。

 そうだ、係留のためにボラードの所へ走らないといけない。これは『トランスポーター』号の運航に6人の騎士達では足らないんじゃないか? 倍ぐらいの人数が居てもよさそうだよね。

 『沖之浮島』方面隊の編成を、1班12人の4班制にするようにエレーナに言っておこう。

 まあ、人数が少ないながらもなんとか係留できた。後は門を閉めて物資の運び込みだ。

 そんな事は騎士達に任せて、ジーナと子供達を連れて、まずは製塩プラントをまわろう。


 リーナとケイトを呼び止めたら、孤児院組が集まってきた。ちょうどいい、ジーナ達と引き合わせておこう。


 「貧民街にいた孤児達と世話をしていたジーナだ。ジーナは厨房に入ってもらおうと思ってるんだけど、リーナとケイトも厨房へ入れるかな。」

 「大丈夫ですよ。料理もできます。」

 「そうか、じゃあ頼む。ニール達はこっちの子供達に仕事内容を教えてやってくれ。」

 「はい、任せて下さい。」


 年代の近い子供達だし、仲良くやってくれるだろう。

 後はリーナ、ケイト、ジーナを連れて食堂へ上がる。厨房ではおばちゃん達が、忙しそうに昼食の準備中だ。

 あまりにも忙しそうなので声を掛けるのもはばかられたが、おばちゃんが俺達に気づいた。


 「ショウ様、そっちの子は新しい子ですね。

 忙しいんだけど、厨房入ってくれるかい?」


 そっちの子と言われても、ジーナは多分マーシェリンと同じぐらいじゃないかな。すでに成人だ。そちらの女性と言ってあげた方がよろしいのでは? でも、文句も言わずに、はいと返事をしているジーナ。おとなだね~


 「そのつもりで連れてきたんだ。3人とも、厨房に入ってもらうようにするよ。」

 「それはありがたいですね。今日から人数が増えるって言われてますしね。」

 「じゃあ、よろしく頼む。」


 今日は、宿泊施設を創るつもりなんだけど、そろそろお昼時だしお昼ご飯が先だな。食堂が混み合う前に飯食っちまおう。




 食堂を後にしたら、入れ違いにぞろぞろと人が入ってくる。労働者の昼食時間か。ちょうどいい具合に混む時間を避けられたな。


 それじゃあ、今日の予定を検討するためにもペントハウスに上がろう。高いところから眺めた方がイメージもしやすかろう。


 この浮島自体が直径50mのタンクの上に創られた人工島。最初こそ、そのタンクの上に直径100m程度の人工島、そこに製塩プラントを創り作業員の宿泊施設を創ったわけだ。それが今では直径1,000m程の要塞島と化している。

 そこに生活をする平民達や騎士達、その評判・・・・・ 特にお風呂の評判がなかなかによろしい・・・・・ 

 こ・・・ これは貴族相手にも、いけるんじゃないか。特に貴族なんて金持ってるだろうし、その金をせしめるシステムを構築しても何も問題はなかろう。

 ここに貴族専用のVIPルームを創り、そのお付きの者達専用ルームを創り・・・・・

 え、VIPルームって、俺専用ルームは? なくなっちゃうの? 


 いやいや、ペントハウスを切り離し、その下にVIPルームを・・・・・ 3層ぐらいを創ろうか。そうすれば俺の部屋がその上に残るよね。

 虹色魔石を取り出して、魔石の魔力を放出させ現在の建物の上に3,4,5層を形成、ペントハウスは切り離して5層の上に設置、各層を半分に区切り、その6区画を全てロイヤルスイートルームに形成。っていうかマジモンの王様来るかもだし、庶民が背伸びして泊まるようなスイートではないぞ。超豪華スイートルームに仕上げよう。

 【魔力固定】の魔法円を展開、発動っ。光り輝き、魔力で形成された建築物が固定される。本体の建物はこんなもんだな。


 次は労働者の宿泊施設だ。下の食堂に隣接した宿泊施設は、いずれ足らなくなるだろうし、そこまで人が増えれば食堂だって手狭になるしね、あの食堂のフロアーは全て厨房と食堂にしよう。

 あ、そうそう、孤児達のためにちょっとした図書室なんかも創ってやろう。

 まあ、それはおいといて、現在の建物が直径50mぐらいの円筒状の建物になっているその外側に、作業員と騎士達の宿泊施設としてドーナッツ状に囲うような建物を創れば、かなりの部屋数がとれるぞ。お風呂も男女分けて二つ創ってやろう。ドーナッツ状と言っても、輸送船が建物の間を抜け奥まで入れるようにしてあるから、建物の形状はCの字になるんだけどね。視力検査で見る、どっちが開いてますか、っていうあのCだよね。


 まずはCの字状の建物の第1層部分、男女別の大浴場、大洗面所、大洗濯室、その残ったスペースを宿泊施設と所々にトイレ区画。

 トイレは何十人もの人が使えるトイレを1箇所創るよりも、使える人数が少ないトイレがあちこちにある方がありがたい・・・・・・・ トイレ遠いと間にあわねーんだよっ。

 第2層は、ここを騎士団の駐屯地として使うような事があった場合のために、騎士達の宿泊施設だけではなく会議室も創っておこう。一階みたいに大浴場、大洗濯室がない分その余裕は充分にある。洗面所ぐらいは創っておいてやるか。


 これだけで、500人程度は宿泊できそうだな。そんなにたくさん詰め込まなくても、労働者と常駐の騎士達で200~250人ぐらいかな。余裕だね。


 後は3,4,5層を王族、貴族の付き人専用宿泊施設として整備しよう。貴族が移動する時って護衛軍団、侍女軍団、料理人軍団、他にもよく分からない団体とか大量の人員が移動するからね。そんな感じで料理人まで連れてくるんだから、厨房創っておかないといけないし。

 そのお付きの団体の宿泊施設とロイヤルスイートルームは空中の渡り廊下で接続。これで一般庶民とは接触せずに滞在する事ができる。

 魔力を放出させ、そこまでのプランを形作る。魔力で出来上がった建築物に【魔力固定】の魔法円を展開、そして、発動っ。

 光り輝き、Cの字状の建築物がその場に固定される。


 食堂からもその輝きが見えたようで、休憩中の人々が窓の外を覗きざわついている。そのざわつきも、何を言ってるのか聞き取れない。ただ、騒ぎにはなっていない。どうせ、あの赤ん坊がまたなんかやってるぞ、ぐらいの話題にしか、なっていないんじゃないかな。


 まだざわついている食堂に降りて、エレーナが食堂に残っているのを確認して指示を出す。


 「ここでの作業員達と騎士達の宿泊施設を、この建物の外に新しく創ったから、午後の作業前に自分達の荷物をベッドの上に全部乗せておくように。そうすればベッドごと新しい部屋に運んでおく。そう全員に伝えておいてくれ。」

 「どなたが運ぶんですか。」

 「俺が運ぶんだよ。」

 「待って下さい。ショウ様にそんな事をさせられるわけありません。騎士達がいるんですよ。我々がやります。」

 「分かった。騎士達と一緒に俺も動く。」

 「かしこまりました。」


 エレーナがその場の全員に指示を出し、皆が各々の部屋へ戻っていく。

 自分の荷物をベッドの上に乗せておくだけなんだから、すぐ終わるだろう。それを騎士達が運ぶなんて言ってるけど、俺が異空間収納に入れて運べばあっという間に終わるよね。俺の手間は各部屋を俺の足で歩き回るぐらいだ。


 俺はまずエレーナの後を付いていく。エレーナが入った部屋には2段ベッドが二つ置かれているが、荷物はエレーナ一人分?


 「一人部屋ですかっ!!」

 「す、すいません。部屋数が余っておりますので、いいかなと思いまして・・・・・ 駄目でしたか。」

 「いや、別に駄目じゃないよ。今度創った宿泊施設の部屋数はもっと多いからね。でも、だんだんと人数が増えて混み合うようになってきたら、相部屋だからね。」

 「はい、それは承知致しております。」


 エレーナの荷物をベッドごと異空間収納にしまい込む。使っていないベッドも収納して部屋を空にして、他の部屋へ移動する。


 「あ、そのようにして運ぶのですか。我々騎士が人力で運ばなくても良いのですね。」

 「俺が運ぶ、って言ってたのに、どうやって運ぶと思ってたんだよっ。」

 「マーシェリンが力持ちなので、マーシェリンが運ぶのだと思っていました。」

 「エレーナ様、私はそんなに力持ちに見えますか。」


 マーシェリン、愕然。か弱い乙女のつもりだったのか?

 いや、それよりも、マーシェリンにも異空間収納ウエストバッグ持たせてあるんだから、それに収納すれば運べるんだけどね。27立米ぐらいの容量はあったんだから、2段ベッド5個ぐらいは入るんじゃね。

 そんな事を指示して時間を取られるのも面倒なので、騎士達の部屋をまわりどんどん収納していく。片っ端から部屋が空になり、平民達の部屋も綺麗さっぱり片付いた。

 今度は収納した物を、新しい建物のそれぞれの部屋に設置してこれば、それでお引っ越しは終了だ。

 騎士達が全員でぞろぞろと付いて回らなくても、エレーナだけ来てくれればいいと、追い返す。製塩プラントがまだ人手不足なんだから、騎士達も目一杯こき使ってやらねば。騎士達がゆっくりできるのはまだまだ先だぜ。


 新規に創った建物の1階に来た。1階は平民達の居住区にしよう。異空間収納の荷物を部屋ごとにどんどん出していく。部屋の場所が気に入らなかったら、自分達で移動してもらおう。

 次は2階に上がり騎士達の荷物を出していく。


 「ショウ様、ここまでの宿泊施設を創られたのは、まだここでの労働者を増やすおつもりですか。」

 「製塩プラントはまだまだ人を増やしてもいいように、かなり大きめに創ってあるからね。他には騎士団だな。まだまだ海中に魔獣が潜んでいるようなら、ここを騎士団の駐屯地として使えるようにしておけば、安心できるんじゃないかな。」


 荷物は全部出したな。後は晩ご飯の時間まで何しよう。お魚釣りかな。お魚釣りと言っても、純粋にお魚釣りをしてないよね。魔獣を釣り上げたり、イカやアジを網で大量に捕獲したり・・・・・・・ 純粋なるお魚釣りをしたいなぁ。

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