11.怪しげな触手アニメじゃないからねっ!!
俺は魔獣の首を切り落とした態勢のまま、まだ空中をジャンプ中だ。女騎士を咥えた魔獣の元へ行かなければいけないのに。
女騎士と一緒に噛みつかれたペガサスがボロボロと崩れていく。どういうことだ? あのペガサスも女騎士の魔力で創られていたのか? 自分の意思で空中を滑空することができる? まさかあのペガサスは体内の魔力を放出して形成されていた?
だったら、コナンも俺の体内の魔力で形成されていると考えれば、自分がイメージをすれば空中を飛べるのか?
よ、よしっ、イメージだ。飛ぶイメージをしろ。
突然、空中で方向が変わった。自分の飛んでる向きが変わり魔獣の口元へ飛んでいく。コナンッ!! 空飛べたのかよっ!!
それなら女騎士に向かって飛んでいき、魔獣にダメージを与えながら助けよう。
風の魔法では女騎士まで傷つけそうだ。どうすればいい? コナンが自在に空中を動けるのなら、この魔力で創られている剣も俺が思った通りに飛んでくれるんじゃないか。魔力ラインをつないでおけば、投げて俺から離れても形状は保っていられるんじゃないだろうか。
よしっ、やつの目に向かって飛んでけー。見事目玉に剣が突き刺さった。
柄まで突き刺さった剣の衝撃と痛みに魔獣が大きな咆哮を上げ、噛まれていた女騎士が牙から外れて宙を舞う。
いくら雪の上だからといっても、あの酷い怪我の状態で叩き付けられたらダメージが大きい。落ち方が悪かったら死んじゃうぞ。空中に放り出されてる間に受け止めないと。
急いで魔力でロープを創り上げ、何本ものロープを放ち、女騎士をそっと受け止め雪上に着地。状態を見れば、鎧が牙型にいくつもの穴が開き体に突き刺さった跡がある。鎧どころか着ているもの全部剥ぎ取らないと、治癒魔法が効かないぞ。この極寒で丸裸にしたら体温奪われて死んでしまいそうだ。シ〇ワちゃん巨大化して中に取り込むか。
この場から離れた魔獣の気配はずっと探っているけど、首を撥ねて倒れている魔獣の胸のあたりで何かしてると思ったら、うわ~、喰いついて共喰いしてるよ。
え? まさか、もしかして、あの光る石を喰おうとしてるのか。とんでもなくヤバい感じがする。
もう一人いた騎士が、魔法攻撃を仕掛けながら剣で切り掛かかっていった。炎魔法が直撃しながらも動じることも無く、近づいた騎士を魔獣が前脚の一振りで弾き飛ばす。騎士は雪に深々と突き刺さって見えなくなった。全身が雪の中に埋もれて、身動きさえもできそうも無い。さっき倒した魔獣よりもはるかに動きが速い。
さっき炎の魔法を使ってたけど、あの埋まった状態で炎を使ったら火だるまになりそうだから、単独で脱出は難しそうだな。しょうがない、あの騎士も助けてやるか。目の前で魔獣に食われたりしたら寝覚めが悪い。。
突然魔獣の体の表面がモコモコと泡立つ感じで膨れ上がってくる。それと同時に体内の魔力も大きく膨れ上がっていく。
ヤバいっ!! 雪の中に埋もれた騎士を、魔力のロープで絡めとり、その場を離れ魔獣との距離を大きくとり、尚且つ騎士を遠くへ放り出す。こいつは怪我はしていなさそうだから放っといても大丈夫だろう。その間にも魔獣はまだ膨れ上がっていく。こいつに対抗するには巨大戦闘ロボットか? 何がある?『マ〇ンガー』とか『ガ〇ダム』か? いや、一人しか搭乗出来ないぞ。一緒に収容できなければ女騎士が死んでしまう。他には何かないか?・・・
『エ〇ァ』? そうだっ!! 『〇ヴァ』だっ!! あれならエ〇トリープラグの中に数人が入れたはずだ。即座に初〇機っぽい物をイメージ、自分と女騎士の廻りに、シュ〇ちゃんを変形させエン〇リープラグっぽい物を作り、その周りに〇号機っぽい物をを形成していく。
自分の体内の熱が、どんどん奪われていく。まだ大丈夫そうだけど、長引けば俺の魔力が持たないかも。でも、やるしかない。ここで引いたら全滅だろう。魔獣達は魔力の強いものに惹かれて襲って来るようだ。多分、俺を狙ってここまで来たんだろう。
エント〇ープラグっぽい物の中は密度の高い魔力を充満させ外からの衝撃に備えながら、何本もの魔力のロープを操り女騎士の鎧の面を外す。出てきた顔は少女から大人へと移り変わろうとしている、まだ若い娘だ。西欧系の綺麗な顔立ちにブロンドのショートヘア。見惚れてしまいそうだがそんな暇はない。急いで鎧と衣服をはぎとっていく。こ、これって、怪しげな触手アニメみたくなってねーか? そんなんじゃ無いからね。治癒のために必要なんだからねっ!! 必死で自分に言い訳をしまくり、血塗れの衣服を剥ぎ取る。
うん、これはひどい。右肩から左腰まで、鋭い牙が何本も突き刺さった跡がある。靭帯や腱、骨もボロボロの状態だろう。肺にも牙が刺さったらしく口から血を吐いている。心臓は奇跡的にも、大丈夫そうだ。
まずは傷口の除菌消毒と止血だろう。傷口ごとにいくつもの魔法円を消毒のイメージで展開し魔力を流し込む。
今迄暇さえあれば魔法円を出しては魔法を試してきたけど、治癒に関しては単に治癒として魔法を発動するよりも、何処の部分をどの様に治療するというイメージを持つ方が、効果が高いことがわかった。ヤギさん相手にいろいろやったし、自分の体、主に内部を魔力で探ったりして人体構造はかなり把握できている。
消毒の魔法円の横に動脈、静脈等の大きな血管を接合のイメージで魔法円を展開、その他の細かい血管は大きな魔法円で修復のイメージでいいか。
魔力の触手を操作して砕けた肋骨を元の位置に修復、魔力をストロー状にして肺に差し込み内部に流れ込んだ血液を吸引、肺の修復の魔法円を展開。
内臓の損傷を探ってみると、胃と大腸が損傷している。それも個別に魔法円を展開。あとは出血が多い。血液を造ってるのは脊椎だったよな? 他にもあったかな? まあいいや、脊椎に対して造血を超促進のイメージで魔法円を展開、消毒の魔法円はもう必要ないから取り消して、傷口全てに魔法円を展開して損傷細胞を活性化させて再生させる。ついでに体中血まみれで汚れているから、洗浄魔法掛けとくか。体表面の消毒にもなるよね。
治癒魔法って、損傷した場所を修復する以外にも、筋力強化とかできるのかな? できるかどうか分かんないけど、ついでに《筋力強化》《身体能力強化》《反射神経速度上昇》こんなイメージを、全身を覆う治癒の魔法円に上乗せして展開。
あくまでもイメージだから出来るかどうかはわかんないけどね。これがうまくいったらあの巨大魔獣にも楽勝じゃない? 最強の女騎士の誕生か?
濃密な魔力の中で宙に浮いた状態の、女騎士の全身を覆う腹側も背中側も大小様々な治癒の魔法円だらけだ。
体中から治癒に必要なエネルギーを引っ張って来てるから、頬がどんどんこけていくようだ。早めに栄養補給が必要だ。そういえば俺の栄養補給用のヤギのお乳あったよね。飲ませとこう。
胃と腸の損傷は治ったよね。魔力をチュ-ブ状にして食道から胃まで通して、お乳を流し込もう。後は胃と腸を治癒魔法で活性化させて栄養吸収、水分吸収、超促進。これで脱水症対策もできたけど、水分摂りすぎでお漏らししないよね。
何プレイですかっ!!
ズズ―――ン!! 外部から衝撃が来た。外に目をやれば、魔獣に喉元を喰いつかれ仰向けに倒れている。デカい、『エヴ〇』っぽい物のサイズが70mぐらいじゃなかったっけ。この魔獣、同じぐらいの大きさじゃないか? 魔獣ってこんなにデカくなるの? 大怪獣じゃないか。まだ女騎士の治療も終わってないのに、こんなのと戦うのか? 治癒の魔法陣に魔力を注ぎながら『〇ヴァ』っぽい物の操縦を試みる。赤ん坊に操縦なんか出来ないから、このように動けとイメージするだけなんだけど、自分の魔力で創り上げたものだから簡単に、しかも思い通りに動かすことができた。
喉元に食らい付いた魔獣の横っ面に拳を叩き込み、膝で腹をけり上げる。吹っ飛んで行った魔獣が体制を立て直しこっちに飛び掛かってくる前には、こちらも起き上がり体制を立て直し身構える。飛び掛かって来るのか?
いきなり尻を向け敗走を始めた。どうする? このまま見過ごして女騎士の治癒に専念するか。追うか。さっき遠くへ放り投げた騎士の戦いを思い出すと騎士達では、あの巨大な魔獣は倒せそうもなさそうだ。もし魔獣の進行方向に人里でもあったら全滅だろうな。
ヴゥオオオオ――――ッ!! 『初号〇』っぽい物が吠えた。走り出す。速い速い、すぐに追いつき魔獣の背に飛びつく。しがみつき止めようとする。振りほどこうと、走り続ける魔獣。
突然の抵抗感。なんだ、この膜状のものはっ!! 魔獣はそのまま進むのに、俺だけを弾き返そうとする膜が目の前に存在する。新たな魔獣の攻撃か? 魔獣を絶対逃がさないと、しがみつき力を込める。こんな膜など食い破ってやる。両腕は魔獣にしがみつき、口で膜に食いつき首を振りたくる。本当に膜を食い破ったような感じ?
ふっと抵抗感が消え、見えない膜を通り抜けた感じがした。抵抗が無くなったらこっちのもんだ。しがみついてる背中に噛みつき肉をむしり取る。手で目を潰し、殴る、殴る、前足をむしり取る、腹に手を突き刺し内臓を掻きまわす。
ちょっと待て、これ、暴走してねえか? やったー、確変じゃん・・・ ?? なんだ? 訳の分からない言葉? 記憶が・・・ 戻るの?
またよく分からない記憶が蘇りながら、魔獣の体内に感じられる光る石を掴み腕を引き抜いた。もう魔獣は身動きもできずその場で息絶える。しかし、俺も似たような状況か? 形を維持できず崩れ落ちてゆく。エ〇トリープラグっぽい物だけでも残さなければ・・・ 女騎士を助けなければ・・・・・・・




