プロローグ、全ての始まり
「誇り高き騎士よ。汝は正義の心を持ち、我等と共に光の道を行くか?」
玉座に座す者――現アルバティア帝国、皇帝であるギシティエ・アルバティアは長く伸びきった白い色の顎鬚を撫で、静かに、だが威厳に満ち溢れた口調で問うた。
それだけでこの千を越える人間が裕に集まれる室内が一気に緊張に満ち溢れる。
蒼の騎士、他に類を見ないほどの騎士がいる帝国内でもたったの十人にしか与えられる事の無い称号を与える式。それが今回の蒼の騎士、任官式である。
帝国直属の騎士である者だけが身にまとう事を許される青と白の制服、腰につる下げられている一本の刀、女性らしさを感じさせる漆黒の髪、そして光に満ち溢れた瞳を持ち、ギシティエを見つめる少女こそが今回の式の主役。
少女は一度大きく息を吸い込み、刀を抜いた。
そして、この玉座の間の天井に埋め込まれた光を放つ光の石に切っ先を向け、高らかに叫ぶ。
「我は光の道を行く、この帝国、アルバティアを支える十の柱となり、誰もが平等の世界を築く蒼の騎士となることを、ここに誓う!」
――広い室内にこだまする声、そして、それが途切れた頃に訪れる静寂。
だが、その静寂も一瞬。
国を守る為に結成された五つの騎士隊を受け持つ五人の騎士長、そして、現蒼の騎士三名、その他の戦闘職種に就く地位の高い人間達が一斉に拍手喝采。厳しい顔で見つめていた皇帝も柔らかな笑みを浮かべて少女を見つめている。
これは、数百年にわたり空席だった蒼の騎士、十番目の座が埋まった桃色の花の咲き、暖かな風が流れ込む日。
そして、これが全ての始まりでもあった。
何かを守りたいと願う二人の人間の――
正義と、正義の――戦いの。
初めての投稿なので不慣れですが、何か感想やら批評があったらよろしくお願いします。