06 それから
マルミさんとのふたり旅は、以前の旅とは全く違うものだった。
旅を続けるということ、商人として学ぶべきこと、男としての成長に必要なあれこれ。
自分で考え、マルミさんから教わる。
今はちゃんと家族出来てると思う。
「このままおんぶに抱っこなのは嫌だと言いますけど、おんぶしていた温もりも、抱っこしていた寝顔も、アシュトさんのことなら全部覚えているんですからね」
それを言われると、どうしようも無いんだけどさ。
今のマルミさんは、姉みたいな感じだと思うのだけど。
父さんの収集物はほとんどが世には出せない物だったけど、ごく稀に驚くほどの高値で売れたりもした。
それらの秘物に執着して後を付け回す連中が現れるようになってからは、目立たないように売れても売れなくても転々と場所を移すようになった。
その手の危ない連中に囲まれてもう駄目かと覚悟した時、助け舟が現れた。
『鏡の賢者』と名乗った僕と同い年くらいのその少年は、お供のメイドさんと共に圧倒的な力で僕らを救い出してくれた。
僕と賢者くんとは、なぜか気が合った。
お礼として何かアイテムを貰って欲しいと言ったら、賢者くんは父さんが残した小さなアイテムバッグに興味を示した。
父さんしか開けることが出来ないはずのそれをあっさりと開けてしまった賢者くんに、僕はそのままそれを手渡した。
「助けてくれたお礼にぜひ貰って欲しい。 後で良いから何が入っていたか教えてくれれば嬉しいな」
それから、旅を続ける中でちょくちょく顔を合わせることになった。
興味深い様子で大きなアイテムバッグの中を覗き込んで、時々何か買ってくれる。
小さなバッグの中身のことは、まだ教えてくれていない。