《幸福の街》~おやすみ~
過去にトラウマを持った男の子ヨミと、そんな彼を支えるソル。
そんな二人が過ごす、ある日の朝…
「…ん、ソル……重い…」
耳元で聞こえる柔らかい声に目を覚ますと、じっとこっちを見る君の横顔。寝起きで目を擦りながら少し呆れたような表情で俺を見ると、またふいっと前を向いてしまった。俺は無意識に抱きしめていた腕に少し力を加える。ふんわりと柔らかい青い髪の毛が擽ったい。
「んん〜……ソル、仕事休み?」
『ん…休み…』
君はふ〜んと素っ気なく返事をすると、起き上がろうするのでその腰に腕を回す。そのままぐっと引き寄せ首筋に顔を埋めると、俺と同じシャンプーの香りがした。なんで同じ匂いってだけでこんなにそそるんだ…
「んっ……もう、寝ぼけてないで離してよ…」
『離して欲しい…?』
「……」
『ごめんごめん、ほら…』
あんまり虐めると不機嫌になるかな〜と思い、腕を退けようとすると君のしっぽは少しソワソワするように俺の太ももに触れた。表情にはあまり出さないけど、獣人のこの子は耳としっぽは素直だから可愛くて仕方ない。
『…ヨミ?』
名前を呼ぶとくるっとこっちに体を向けて、自ら俺の腕の中に収まった。暖かくてまた眠気が襲ってくる。
「ん…ソルいい匂い。僕も眠くなってきた…」
『ふふ、このままもう少し寝ようか。苦しくないか?』
「うん…ここがいい。落ち着く…」
君はそう言うとすぐに静かになった。俺は少しだけ昔のことを思い出す。君がまた、あの頃のようになにかに怯えることも無く眠れるようになって心底ほっとしてる。
『…幸せだって思うのは、俺だけかな……』
柔らかい青い髪を優しく撫でながらボソッと呟くと、君は俺の手に頬を擦り寄せ薄ら瞼を開いた。
「僕も、幸せ…だと思う。よくわからないけど……ソルのここは僕のだよ。僕だけの…」
よくわからないなんて…そんな嬉しそうな顔をして言うから、愛おしくて小さな体をギュッと抱きしめた。
可愛い可愛い俺の小さなオオカミ。俺だけがお前のそばに居られればいい。俺だけがお前の瞳に映ればいい。もういっそ、俺だけをお前は知ってればいい。でも、あんな思いはもうさせない。
お前が自ら俺に依存するまでは…
『「おやすみ…」』
読んでいただきありがとうございます。
この子たちの出会いは長編で書いているので、少しずつ載せていこうと思います。
作者の妄想に是非お付き合いください♡