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その日、私は運命と出会った

作者: 諏佐

聖バルド皇国は騎士と聖女により約500年ほど前に建国された国だ

大陸のほぼ真ん中にあるこの国は周辺国家と程よく関係を持ちつつどの国とも親密にならず、然れどよそよそしくならず…

そんな感じでお付き合いを重ね、清廉潔白な騎士団長率いる″聖バルド騎士団″と公明正大な聖女長率いる″ウェールズ聖教団″が慎ましくも確実に国を納めている

どこの国からもアクセスが良く実力のある騎士団が護るこの国に大陸で1番大きい学院が置かれるのはある種、必然だったのかもしれない





現在、ツェントル中央学院には注目を集めている人物達がいる

バルドより北にある国から来たリーリア・ソレル伯爵令嬢は婚約者であるバルトロメオ公爵家のアルベルトを追ってこの学院に入学した。しかしこのアルベルト、彼女の来る1年前に転入してきた男爵令嬢の取り巻きとなっていた。リーリア令嬢はアルベルトに惚れ込み周りの令嬢を威嚇する程と嫉妬深いと社交界では知らぬ者が無い程有名なのだ

あの、男爵令嬢の取り巻きになったアルベルトを見たリーリアの反応がどんなものになるか…同じ国から来た者達は戦々恐々と、然し興味津々にしていた。

しかし、予想に反してリーリア嬢の反応は淡白なモノだった

「……」

これには嫉妬深さに辟易していたアルベルトすらも驚きが隠せなかったらしく後日、入学祝いがてら花束を持参したがいつのも8割減位のテンションで受け取られた

「あのリーリア嬢が…」

アルベルトの乳兄弟で護衛のリリックも驚きの淡白さ

アルベルトへの愛がごっっっっそりと削れている様はある意味アルベルトを困惑させた

政略結婚ではある。リーリアの嫉妬深さには辟易していたのもまた事実。

しかし、アルベルトは普通にリーリア嬢と結婚生活を送るだろうと思っていた。

別に嫌いではないのだ。好きかと聴かれると少し違うが家族になるのは当然だと思っているのだ。昔から決まっていた関係であるし家同士の事なのだから覆る事は今現在の政情では有り得ないと言えた



その当然が違う可能性が出てきた

アルベルトが男爵令嬢の取り巻きになっているのは面白そうだからであり別に男爵令嬢の事は好きでもなんでもないのだ

リーリアの嫉妬深さは愛情の深さだとアルベルトは認識している。この愛情がそっぽを向くなど、増して無くなるなど考えた事もない

これは由々しき事態である




それから学院内ではリーリアに寄り添うアルベルトの姿がよく見られたがリーリアは終ぞよそよそしく過ごしアルベルトのデートの誘いも一切受け付けず、茶会の断り続けた

「ごめんなさい、今忙しいんですの」

…アルベルトが卒業式後のダンス会でリーリアの手を握りしめて見捨てないでくれと号泣する事になるとはこの時誰しもが思わなかった











































リーリアはあの日運命と出会ってしまった。

そう、あの日アルベルト様を探して学院内を彷徨い歩きいつの間にか人気のない中庭に出ていた

「困りましたわ…」

リーリアには確かめなければならない重大な事がある

入学前に聞いてしまったのだ。アルベルト様が男爵令嬢に熱を上げていると…

そんな事許される筈がない!アルベルト様は私の婚約者であるのだから男爵令嬢如きにうつつを抜かすなどある筈がない!!

それを確かめる為に勇んで学院内を歩いたが…どうやら迷ってしまったらしい

歩き疲れたリーリアは木陰にポツリと置かれたベンチに腰掛けた。

「早く…確かめなければ……」

無意識に制服の裾を握りしめた時、ソレは現れたのだ

ニャー

「…猫?」

なんともまぁ見事に真っ黒な猫である

北にある祖国の猫は全体的に小さいのだがこの黒猫、大きいのである。

大きい、大き過ぎる気がするわ。皇国の猫は大きいのね

割と規格外(リーリア比)な大きさの猫に驚いていたがこの黒猫

ニャー!

「キャッ!」

とても懐っこい性格であった

座っているリーリアの膝に我が物顔で居座りリーリアをきゅるるんと見上げてくるのだ

「か…可愛い!」

なんともまぁ可愛らしいぬいぐるみのような大きさで太陽を浴びて調度良い暖かさ、触り心地抜群の毛並み…

一瞬にしてリーリアの心を鷲掴みした

さて、リーリア自身は認識していないが彼女はお気に入りの物に順序を付ける癖がある

人も物も順位があり一番大切なものは他人に触れられたくない程大切にする

ずっと物心ついた時からリーリアの一番はアルベルトだったのだ。

それが、この出会いで崩れた

今でもリーリアはアルベルトが好きだ。

大切な人で一生を歩む人だと思っているし結婚生活は彼とでは無いと嫌だ。

しかし、今はこの愛らしい生物に全力を注がなくてはいけないと確信した

この子はこの学院内でしか逢えない。国には連れて帰れそうにはないだろう…

ならこの子に学院生活の全てをかけよう




リーリアはこの日、運命と出会ったのだ


(触れられることの無い)各種設定


聖バルド皇国

大陸の中央にある国。皇国とか言ってるが皇帝は象徴として君臨しているだけで決定権は騎士団長と聖女長に託されている。皇帝はアイドル。


聖バルド騎士団

清廉潔白な騎士団長率いる実力派集団。国一番の騎士が団長になるのが慣例で今の団長は頭もキレる凄腕。聖女長とは似た者同士な為、会議が偶に血に塗れる。現皇帝とは学院の同級生


ウェールズ聖教団

公明正大な聖女長率いる魔術特化集団。国一番の癒し手が聖女長になるのが慣例で今の聖女長は剣も握れる武闘派。騎士団長とは似た者同士な為、会議が偶に血に塗れる。現皇帝とは従兄弟同士


ツェントル中央学院

聖バルド皇国にある学院で騎士科、魔術科、社交科から成り立っている。公平を信条とする学院内で権力を振りかざそうとするとどこからとも無く騎士団が現れて理事長室に拉致られるらしいとの噂


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― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛くて人懐っこい猫とゴツくてそっけない男では勝負にならないのも仕方ないですね、うん。
[一言] 遊び半分とはいえ浮気してた事は確かだし可哀相と言う程では無いかと
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