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Last Resort  作者: 当廟
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6

斧とメイス買うの忘れてました。てへっ。


門の外にはぎりぎり出てないからセーフ。ついでにお金もちょっと足りなかったけど不要な素材売ったら足りた。I get KOTONAKI!

レイズが全部乗せ作ってくれてるし初心者装備でいいのです。耐久値無限だしさ。


そして朝です。新しい朝です。ええそうですね明るい状態で街の外とか初めて出ますよ。

あー青空が眩しい、遮るものが何もない。見渡す限りの青、いいと思います。

今まで夜専門だったもんでね。


ワイルドラビットLv2/動物

フィールドモンスター/戦闘態勢

適性:地上/属性:なし


一歩外に踏み出した瞬間ノンアクティブだったのが一斉にこっち向きましたよ。

なんだこれ、怖い怖い。赤い瞳がこちらを見つめている。眼幕だ。

え、ほんとどうなってんだこれ。ウサギってこうなの?怖すぎない?


タンタンとスタンピングが伝播していく。喉を鳴らすような鳴き声が合唱となり明確な敵意となり圧を持って襲ってくる。

走り込み接近したところで歯をむき出しにし飛び掛かってくる。それを一歩後ろに下がりながら半身になって躱す。


って速いな。ウサギ舐めてました。Lv2なのも舐めてました。

ちゃんと動きに注意してみてれば防御でも回避でも迎撃でも出来るだろう。なんというか流石初心者用というのか。


そんな風に思考で意識が内に向くがウサギには関係なく次々に飛び掛かってくる。

補助スキル結構効果あんね、リアルじゃ絶対こんなの躱せないもん。レベル低くても数ありゃ変わるか。


スキルの恩恵を感じつつふらふらと場当たり的に躱しつつ武器を出す。

ジャーン初心者の片手斧 with 初心者のメイスです。

ウサちゃんが飛んでくるタイミングに合わせて…振り下ろすッ!


「結構難しいねこれ、コンパクトに重いからワンテンポ遅れるじゃん」


きれいな素振りを披露したところで構え直す。

まあ二刀流とかアホなことしてる以上誰にも文句は言えないわな。とりあえず今は数練習しましょ。


斧振り下ろしてメイス振り回しー振り上げてー振り回しー得物の重さに引っ張られるように遠心力を感じ流れに任せる。動きを止めてしまうとダメだなこれは、次が続けられねえ。


運動エネルギーを殺さずベクトルを少しだけ変えてやり速さを威力に変換するように叩きつける。

ちょっとだけ楽しくなってきたぞ。


手からすっぽ抜けそうになるのを堪えギアを上げるように叩きつけるまでの時間を詰めていく。

動きを止めず回転数を上げ衝動にに身を任せ流されていけば


「ウサギの屠殺場の完成だ」


重量に任せてぶん殴る武器楽しいです。


《取得可能スキルに『二刀流』が追加されました》


キラキラと青白いエフェクトをまき散らしながらポリゴンへと変化し消失していく経験値たち。

まるで祝ってくれてるみたいだな。壮観壮観。


肉を打ち骨を砕く感触残る腕でウィンドウを開き『二刀流』を取得する。


えーっと、武器の取り回しと姿勢制御に補正、複数武器度維持使用時の与ダメ減少ペナの解除。


ダメージ減少なんてあったのかよ。レベル差ありすぎて全くわかんなかったし。

2発当たれば確定、頭とか急所扱いになるところにうまく当てれば確1。

そんなのでなにがわかるっての。


しかしやっぱりスキル増やしすぎたかね。ウサギの山作っても種族と職業微動だにしてないし。


「エリア奥行ってみっか」


ちょっと上手くいくとすぐに調子に乗る。自分でもわかってはいるがどうにもこればっかりは抑えられない。

楽しいじゃん?仕方ねえよなあ?




今更ながらこのフィールドはとても広い。VRで大人数が暴れまわることを考えれば1kmや2kmじゃ足りないのは明白だが、目測でも既に街まで10km以上あるように思う。


街の南門を出てひたすらに踏み固められたむき出しの土の街道が続いていく。

視界を遮るものなんてほとんどなく土と背丈の低い草があたり一面を覆いつくしている。

ちらほらと木が生えているのは見受けられるが数は少なく狩りをしているプレイヤーの数十分の一もないだろう。


今現在だがプレイヤーは南門からでたフィールドしか出入りできない。

聞いた話に加え自分で確かめたから間違いはないだろう。

門を出て進もうとすれば不可視の壁のような物に接触し戻される。

まるでここから先はまだ未開放だと言わんばかりにシステム的に阻まれる。


南門から出た先、街道平原のボスを倒すことが東西北エリアのアンロック条件だと思われる。いや案外トリガー見逃してシナリオ進めてないだけの可能性もあるな。

とにかく今は皆ここに来ているわkッ


「いってぇええっ」


後頭部に強烈な衝撃を受けぶれる視界の中でたたらを踏む。ふらつく意識を繋ぎ留めながら強化された五感達で原因を探す。

振り返ったそこには何もおらず代わりに一枚の大きな羽が


「上かッ」



アサルトカイトLv5/動物

フィールドモンスター/交戦中

適性:空中/属性:なし

スキル:飛行/強襲/???



見える情報増えてんじゃん。


いや今はそれはいい、翼を広げて空を飛ぶ姿は猛々しく洗練されたデザインと相まって美しくすらある。


「でっけえな1.5mくらいあんじゃん。何であんなのに気が付かなかったんだ」


しかしこれどっかの空の王者を彷彿とさせ降りてくるまで見ているだけしかできないな。

遠距離攻撃といっても魔法じゃ届かない高さだ。

あぁ空から攻撃してくる奴は嫌いだ、どいつもこいつも。


あ、でもこれいけんじゃね?物は試しで上手くいけば儲けもの。


「ダウンバースト」


風のLv3魔法、強烈な下降気流を生み出し大地に吹き付ける魔法。

範囲は狭くても魔法の仕様上縦には結構な判定があるようで鳶もいい感じに飲まれて落ちてきましたね。


「同時アタックとカウンターで4倍攻撃だ」


身体ごと回転させ斧とメイスを勢いのままタイミングよく鳶にぶつけてやれば一撃でポリゴンと化す。


あ、厳密には二撃だわ。


しかしLv3魔法結構いいね。濃霧、薄闇、下降気流、熱空間、どれも使いこなせればいい手札になりそうだ。

ちょっと色々使い勝手確かめねえとなあ。


何考えてたんだっけ?あぁそうだフィールドの話。

ボス殴ろうって話だな。行けるとこまでまっすぐ行きましょうかね。


街道平原街近くはウサギ、少し離れると鳶と犬。あと数は少ないが馬。

馬は強い、魔法よく効く、俺殴る。

両手に武器で魔法が4種、手数は槍の6倍だぜHAHAHA。


頭悪いことしながら進むと大きな蟻やら牛も出てきましたね。それ以外にはMob見ないしいてもレアかトリガー付きか。

まあいいや殴ろう殴れば倒せるスキルが上がってレベルが上がる。


だいぶ慣れてきたなこのスタイルにもさ、上がらない種族職業レベルを見ながらスキル上げ。

これはこれで楽しいな?



Q.目の前に狼っぽい感じのマークが表示されております。これなーんだ?

A.ボスエリア


テローンっと軽いキャッチ―な音が鳴る。

ん?なんだこれ電話か?着信元がレイズ。


『あー着信に気を取られて死んだわーつれ―わー』


『クソ雑魚かな?あ、夜行性の引きこもりだから日光弱点だったかすまん』


『吸血鬼かな?残念ながらデイウォーカーですわ』


『銀の杭用意して待ってるわ。今取り込み中?』


『いんや、野生動物撲殺しながら散歩してるだけよ』


『愛護団体から抗議の電話来そうだな。今から戻ってきたり出来る?』


『なんかあんの?急ぎならプチっとつぶされてくるけど』


『急ぎってほどではないけど早いほうがいいかな?簡単に言うと攻略のお誘いってやつだ』


『――ほぅ、面白そうだけどなんでまた俺に?ソロだしもっと強いやついっぱいいるだろ?』


『夜にソロ狩りレベリングしてるアホだから声かけてんの。戻れるならよろしく』


『あいよ戻んね。尋問でもされんのかねえ』


おっし行きますか。ボス戦。

攻略会議なんだからさ、ボスくらい見てから行かないと話噛み合わないだろうからね。

雑魚に無抵抗で殴られるよりは早そうだ。


レッツゴージャ〇ティーン!!


フィールド境界線を超え、インスタンスエリアへと足を踏み入れる。

独特の不安定感を与える堺を抜ければ、そこは一回り広くなった街道だ。

脇に多少気が生えてる程度で、地形的な差はほとんどなく、中央に人の背丈ほどの岩があるのみ。


黒く黒くどこまでも深く、星彩のような瞳以外夜に溶けてしまいそうな彼がいた。

岩の上から見下ろしてくる姿はなるほど、この平原の王者と言っても差し支えないだろう。

太く大地を掴み駆ける四肢は現時点でのプレイヤーなど一撃で斬り裂く確信を与えてくる。


「もし、もしボスが弱いやつで死に戻るのに時間かかりそうだったらって心配してたんだよ。これは心配いらねえな?」


あぁ未知との遭遇は楽しい。心が躍る。

もっとじっくり見ていたいが今はお暇しよう。仕掛ければ向こうも戦闘状態へ移行するだろう。


死にさらせコラァッ!


飛び掛かり見え見えの噛みつきを避けずに斧を叩きつけ、る前に首をかみちぎられ地に落ちる。


…そういや場所聞いてねえわ。


暗転する視界の端に捉えた姿を強く記憶に焼き付ける。

次は絶対狩り潰してやる。











あの後場所聞き直して指定されたお店まで来ましたよっと。

扉を開け取り付けられたベルが鳴れば、渋い男性が声をかけてくる。


「いらっしゃい。一人かい?」


落ち着いた雰囲気の店内を見渡しても誰もいない。並べられたテーブルとイスだけだ。

ここまで人がいないとやっていけるのか心配になってしまう。


「いや、待ち合わせなんですけどね。レイズってひげもじゃ着てません?」

「アンタ名前は?」

「ヤギリ」

「こっちの部屋だよ」


目線で促され歩き出した店長っぽい人の後ろへ続く。入り口からは四角になってるところに扉があんのね。

年季の入った扉を無遠慮に拳でノックし開け放てば、小さめの会議室のような雰囲気で見知った顔がちらほらと。

店長っぽい、いやもう店長でいいや俺の中では店長だ決定。店長は俺関さずとカウンターの内側に戻っていく。


「悪いね呼び出しちゃってとりあえず空いてるとこ座ってよ」


レイズに促されて円卓の席へ腰かける。

1,2,3…自分含めて13人か。裏切者でそうな数字だなおい。


「では揃ったようなので始めさせてもらいますね。まずは軽く自己紹介ということで如何でしょう?私はLR解放機関、相互協力会の会長です。プレイヤーネームが会長です。どうぞよろしく」


「同じく協力会の八重です。よろしくお願いします」


ニコニコと柔らかい表情を浮かべた人のよさそうな会長と真面目そうな黒髪エルフ八重。


というか俺何でこんなとこ呼ばれてんの?一介のライトちゃんだぞ。βすら参加してないし攻略サイトだのも見たことなく、適当に気分で進めているだけ。


「CUの鍛冶部門レイズだよ。よろしくー」


「同じくCUの皮。エルドル」


「CU木工のニガキでっす。よろしくね」


状況わかってないの俺だけっぽいねえ。頭の上にクエスチョンマーク並べてる中どんどん進んでいきやがる畜生。誰か説明してくれよまじでさあ。

あとCUって何?組織名かなんかなのはわかるよ。はしょるなよわからねえ奴いるんだよここに。


C…クラフターでUってなんだ。部門で別れてるから…ははーんピーンと来ましたわよ?ユニオンとかユナイテッドとかだろ。天才かな?名探偵もびっくりですわ。


「アーカイヴのカタリナよ。βとやってることは変わらないわ。出られるまではよろしくお願いするわ」


「アーカイヴの戦闘系シェヴァだ。情報よろしくな」


「あ、私か。生産系のつくもですよ。何卒御贔屓に」


「設定考察のケーニッヒじゃ。仲良くやろうじゃないか]


金髪ロングのかっこいいお姉さま系の人間、強面の巨漢はグレーがかってるし人間ではないな。それからちっこいライトグリーンなエルフとRPはいったドワーフじいちゃん。


うーんそろそろ名前が覚えきれなくなってきたぞ?既に生産職組忘れたし。


攻略組?生産組合と来て検証班か。こんな状況じゃ出来ることは限られそうだが大切だよな。情報の恩恵にあずかる事とかなさそうだけどさ。ボッチだしー掲示板見ないしー。


そんなこと考えてたら自分の番かよ。いつの間にそこの人達終わったんだよ、大トリじゃねえか。

何しゃべればいいんだこれは。どこにも所属してねええし…もう適当でいっか。


「ソロで夜にぶらついてます。ヤギリです。そこの偽ドワーフに呼ばれてきました。どういう集まりなのかすらわかってませんがよろしく」


皆からの困惑の入り混じった視線が突き刺さるな?やだ、おにいさんゾクゾクしちゃう。冷や汗的な意味でな?

もうどうするんだよこの空気。

中には勝手に理解して勝手に納得した奴もいるみたいだけどさ。


「ヤギリさん、アンタ今Lvいくつだ?」


レイズの助け舟が来たな。助かる、とても助かる。このままいい感じに目的の話題まで乗せて行ってくれ。


「今10でゲージ@1割で11なる」


何やら俺のレベルが想像以上に高くて驚いてらっしゃるようで。聞いてた話じゃ夜ソロは相当に効率がいいらしい。おそらくまだ二桁に到達してないんだろう。

ちょっと優越感。


「狼系Mobとの戦闘経験は?」


「そこそこ、メイン武器さえあれば対1なら負けない」


「ボスと戦ったことは?」


「ついさっきだね、死に戻るために首食いちぎられてきた」


「笑うわそんなん」


レイズ大爆笑である。


「ヤギリさんは単独で夜間に行動し狼の相手が出来るんですね?」


「雑魚ならば、ボスは厳しいですね。動き自体よく見てないもので判断のつけようがないです」


「では話は決まりです。ヤギリさんボス攻略しませんか?合計4PTによるレイドPTです」


「へぇ…面白そうですね?それ」


「ふふふ。興味持ってもらえたようで幸いですよ」


わかりやすく笑う会長。なかなかどうして面白い。

真剣な表情で真剣な声で笑う。妙にチグハグだな?それがまた面白い。


「協力会さんとそちらのお二方のPTとアーカイヴさんとこで4PTって認識でいいんですかねこれ?で、自分がどっかに入る感じかな」


「近いですね。私達で1PT。御二人…LoFLと朱界の2PTに加えアーカイブ2人とヤギリさんにカササギさんと今回は出席していない2人を加えたPTで合計4PTです」


「それはまた寄せ集めたような。でも正直レベルは飾りじゃないですか?なんで呼ばれたんですか?」


「決まってますよ、夜に戦えて一人でも戦える人が欲しかったからです。」


やっぱりそうなのか、ボス戦は強制的に夜に固定される。

夕方に突入して夜になってたのには驚いたもんな。


「ってことはみなさんボス戦経験済みで?」


「はい、私達…CUとアーカイヴ以外の人間はボスに挑み敗北しています」


ひゅー苦虫噛みつぶしたような顔になってんねみんな。


「単純な話で夜間戦闘でも灯りさえあればボス単体なら勝てます。しかし夜間戦闘かつ雑魚に対処ができません。なので今回レイドチームでさらに遊撃として声をかけさせていただきました。」


雑魚沸きさせんのかよあいつ。


「私たちは帰りたいんですよ現実に。どうか力を貸してください」











結局そのまま話は進んで、全体の役割分担だとかPTの構成だとかを摺合せを行い、明日の9時に街を出てボスエリアへ向かうこととなった。


「最後完全に面食らってたね?あの顔どうやってんの?思わず笑いかけた」


「エルフでひげもじゃ再現のほうがどうやてんだよ。そっちのほうが理解に苦しむわ」


解散後レイズと街を歩きながら会議での話を交わす。


「それよりさ俺そんな変な表情してた?自分じゃわからないからさ」


自分のことって自分じゃ結構わからないもんだしね。人から観測されて初めて判明するくらいには。


「してたねえ、見たことないくらい変な顔してたよ。…もしかしてさアンタ帰りたくない?」


「そう、かもしれない」


「煮え切らんね?」


「自分でもわかんねえんだ。けどわかることもある。別に現実が嫌なわけじゃない。ただずっとゲームの中で過ごせたらとか一度は誰でも思うだろ?それにさ俺は特別でもなんでもない。でもこうして何らかのトラブルに巻き込まれゲームに幽閉されている。そこに違いを見出して優越感や特別勘といった欲求に浸かっているのかもしれない。この機を逃せばまたいつも通りのありふれた生活だ。だからかなこの状況から帰りたくない。あぁそういうことがこれは話してたら考えがまとまってきた。何物にも慣れない俺が受動的とはいえその他大勢がいるとはいえ前代未聞のトラブルに巻き込まれ当事者となった。この状況に期待してるんだ俺は。」


「…アンタ今めっちゃいい笑顔してるよ」






夜が明ける。ボス攻略までもう少し。



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