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Last Resort  作者: 当廟
5/36

5

風が肌を撫でるのが前よりもはっきりわかる気がする。

形…ではないな、流れか。そうだ流れだな、吹き抜けていく経路がとても繊細で澱みなく感じられる。

同時にそれが吹き動かす草が擦れ合う音も、自分の呼吸音や皮鎧の音さえひどく大きく意識に流れ込んでくる。

野性味あふれる香りは看破よりも先に存在を主張し――



野犬Lv4/動物

フィールドモンスター/アクティブ

適性:地上/属性:なし



これはこれは識別さん早速仕事をしてくれているようで。

いや、でも話では識別先生は姿見えないと使えないと聞いたが。


…まあいいか見えてるし、場所の目安になるし感覚強化で前よりもっとわかる気がする。えぇ気がするだけですがね。


ではいつも通り走りこんで蹴りこむように飛び込む。

足にしっかりとした皮と筋肉と骨の感触、確かめるように調整するように勢いのまま押し切る。

そのまま槍を勘で突き出し刺さればもう見失うことはない。


昨日までならこのまま捕まえて締めながら泥仕合コースだったが



「アクアバレット!」


水魔法の初期呪文で水の弾丸を生成し射出する。なかなかの勢いがあるのか大きな破裂音を伴い水のはじける音が複数回響く。合間に野犬の唸り声がいいアクセントに。



「ダークブラスト!」「ウィンドニードル!」


静かな爆発音という奇妙でいてしっかりと耳に残る音と研ぎ澄ませるかのような音の流れ。

それらも闇と風の初期呪文。


見えないのが非常に残念です。こういうのはエフェクトも含めて楽しむものだしね。

夜に戦ってる自分が悪いんだけどさ。


逸れかけた思考を槍から伝わる抵抗が引き戻す。

伝わる感触がこちらに肉薄しようと暴れる姿をありありと伝えてくる。



「HAHAHA悪いね、こういうのも用意してきたんだ」


蹴る。スキルによってサポートされた脚力で肉を骨を蹴りぬく。それでいて槍が抜けないように。

刃をねじ込みながら蹴って魔法蹴って魔法魔法蹴って蹴って魔法魔法魔法蹴って蹴って蹴って蹴って蹴り倒す。



「ノーダメージクリア!完全勝利だ!」


この戦法いいと思います。ではでは先へ進みましょう。明日のご飯のためにも。











野犬先生のレベルがどんどん上がってきております。さっき倒したのに至ってはLv9という高レベル。素晴らしく格上です、本当にありがとうございます。

経験値がとてもおいしい。ずっとこの調子なら今晩でレベルも二桁行けそうな勢いだ。


上手くいってる時程人は違和感を覚えない物でマップを見ればえらく遠いところまで来ております。足から伝わる感触も草の茂りが深くなっていることを伝えてくる。



「もしかして迷い込んじゃったかな?」


低い唸り声の方へ視線を向ければこの通り



一匹狼Lv10/動物

フィールドモンスター/アクティブ

適性:地上/属性:なし



犬と狼って大して違わないっていうけど文字の迫力が違うんだよなあ。あとレベル。

逃げられ…はしないだろうな、めちゃくちゃ唸ってますがな。HPは満タン、MPとスタミナゲージは7割程。



「突撃」


考えてもわかりません、真っ暗な中で何をどうしろというんだ。


槍をグサッと突き刺さ…らない!

一拍置いて衝撃、地面に引き倒される。

クッソ痛いな、左脇腹に突っ込まれたか。

とっさに頭と首を庇う様に腕を上げれば左腕に噛みつかれる。



「よーしよし捕まえたぞもう逃がさねえからな」


予定とは変わってしまったがこの距離なら外さない。HPも3割程持っていかれたが必要経費だ。

足で胴体を挟み込み首へ槍を突き込む。

刺さったのを確認すれば槍を手放して鼻先を殴る。打撃先生の出番です。

合間に



「アクアオーラ」


と水魔法のLv2呪文を唱えればステータスにアイコンが表示されHotが乗る。



「悪いね、泥仕合は得意なんだわ。落とされる前に落としきってやるからな」


バリバリと爪を立て牙で持って抵抗を示してくるが回復量とMP消費量、削られるHPを見れば思わずにやけてしまう。野犬の鎧結構いい仕事してくれんじゃん。



「ダークオーラ」「ウィンドオーラ」


重ねて闇と風のLv2で取得した回復呪文。単体回復と回復+Hotと属性によって差が出ているな。

突き刺さった槍と顔面殴打、HPに余裕ができれば魔法も攻撃に回せる。


さあ、削り合いしようぜ。











ヤギリ


人間・男 Lv9/侍祭 Lv9


スキル

『浄化Lv1』『槍Lv7』『打撃Lv5』『腕力強化Lv7』『脚力強化Lv5』『感覚強化Lv5』『マッピングLv4』『看破Lv4』『識別Lv3』


魔法

『水魔法Lv3』『風魔法Lv3』『闇魔法Lv3』



狼おいしすぎか?昼間にスキル買い漁って以来の確認だがここまで上昇してるとは。やはり夜間での格上連戦は相当に経験値効率がいいようで。


現在でスキル総数12個。単純に考えれば初期の半分以下の成長スピードになっているはずなのだが、それだけ効率がいいと思うことにしよう。


浄化だけ一切上がってないのは一回も使ってないからかな?でも出番ないんだよなぁ。簡易説明文的にもさ。


それよりも調子よくやってる時程都合よく考えてしまいがちだ。ちょっと冷静になることを心掛けて狼狩り続けましょうか。

誰も助けてくれる人なんていないしね。寂しくなんかない。











《称号【暗闇に潜む者】を所得しました》

《取得可能スキルに『暗視』が追加されました》

《取得可能スキルに『潜伏』が追加されました》

《取得可能スキルに『ハイドアタック』が追加されました》



アナウンス多いね。一気に来すぎてちょっとびびる。流石に順番に確認しましょうか。


【暗闇に潜む者】は一定照度以下での行動時に補正がかかる。

『暗視』はそのまんま、取得したらようやく見えるようになりましたっと。

『潜伏』は敵に発見されにくくなる。存在感を消すものらしい。

『ハイドアタック』補足されていない状態でのみ有効、所謂奇襲。


全部取得しちゃいましょう。どれも有能そうだしね。

特に暗視は皆が待ち望んでいたスキル。いつまでたっても取得可能にならないからそういうものかと思ってたけど称号に紐づけだったとは。


ようやく視界が効くようになったところで周囲を見渡してみる。

それに伴い今までは現在地すらも怪しかったマップが一気に更新されていく。

どうやら現在地、フィールド奥近くまで来たみたいです。


感覚強化と夜間行動による補正に暗視で結構遠くまで見える。なんでそんな言うかと言えば前方、狼の群れです。見える感じ5匹。うん、無理げー。

撤収!潜伏も使うよ!さあ走れ走れ静かに走れ、見つかったら終わりだぜ?











協会ロビーなう。デスペナなう。囲まれてぼっこぼこ、狼怖い。


まさか嗅覚で既に補足されてるとはね、そこまでリアルに作らんでもいいでしょうに。潜伏不発で普通に走って追いつかれました。


よってたかっていじめられてる時に思ったのが槍以外にも武器欲しいなって。

正確に言えば重くて一撃で頭カチ割れるような奴。

…手斧とか鎚とかかな?近距離で取り回しよさそうなのは。


槍も悪くないし上手く扱えれば近距離でも対応できるんだろうが今の自分では無理だ。棒術とか杖術みたいなの取得すればもうちょっと補正で扱えるのかな。


とりあえず出来ることやりましょうか、素材渡したりポーション買ったりいろいろと。











「ハハハハハ、そんでいじめられて帰ってきたのかアンタは」


「本気で怖かったんだけどな?格上に囲まれて食われるんだからさ。見えないのも見えない恐怖があったが見えるとそれはそれで怖いっていうね」


「それだよそれ、暗視。ちゃんと存在するなら攻略組も取得に躍起になるだろうな。なんせ今まで活動は昼間限定だったんだぜ?単純計算で活動可能時間が倍になるわけだ。取りに行かない理由はないだろ」


暗視なぁ、おそらくは称号を取得したことで取得可能になったんだろう。称号も御誂え向けに【暗闇に潜む者】だもんな。

ただ取得条件がはっきりしない。ずっと暗闇状態で戦っていたのとLv10なことくらいか。

戦闘数なのか戦闘時間なのか到達レベルなのか戦闘方法なのか戦闘状況なのか。

思い当たる条件はいくつかあれどどれもが確信を持てる内容ではない。



「称号の取得条件がはっきりしないんだよ。それにさ今まで夜しか戦闘してこなかったんだそれが条件だって言われても今からじゃほとんどの人間が無理だろ?絶対荒れるぜ」


そう荒れる。こんな自分でもわかってしまうほどに暗視は可能性を秘めている。ログアウト不可能で端すらつかませないクリア条件。

それでもレベルを上げて強くなるのが必須なのは誰だってわかるだろう。

そのための必須に近いスキルがlv1から夜間戦闘のみでレベリングするとかだったらもう大半は取れないのだ。



「それがわかってるから相談しに来たんだろ?俺としては存在だけでも公開して思いつく限りの前提条件あげて終わりでいいと思うけどな。まあ多少は夜に張り込んだり特定しようとするやつ出てくるだろうけどさ。内部掲示板ででも流せばいいんじゃないか?検証スレッド立ってたはずだしさ」


掲示板あるのは知ってる。見たことない書きこんだことない。

外部との接続が立たれている以上この狭い世界で生きるためには確かに必要になるんだろうけど。

あんまりいいイメージないよなあ、ゲーム関連じゃ特にさ。

ともかく情報すべてをレイズから入手するってのは無理なわけでどこかで自分も網を作らないといけないわけだ。

ならいっそ飛び込んでみるのも一興か。



「夜でも戦う方法あるってのだけは書いとこうかな。うん、そうする。

それでこの話題は終わりにしよう。これとは別に相談と注文があってね聞いてくれるかな」


「おk、なんでも言ってみなよ、これでも生産関係じゃ結構先頭のほう走ってる自信はあるんだ」


「懐に入られたとき用に取り回しやすくて重量のある簡単な武器がほしい。あと槍見たいな長物の武器を扱うのに補正がかかりそうなスキルが知りたい」


「長物スキルなら無難に杖術、棒術、鎌があるね、どれもこの町で買えたはずだよ。それ以外で使えそうなのは精密動作、触覚強化、把持、身体強化かな?」


なるほど、似たような物や動作に関係するものは補正が乗るのか。

補正が乗るならできうる限りスキルは取得したいな。武器なんて振り回したことないんだからシステムがアシストしてくれるなら使わない手はないだろう。


懸念は経験値分配。

今のところはまだいい感じでレベルは上がり続けているがこれ以上スキル数増やすとレベリング速度が低下しそうだな。



「お、あったあった。さっき言ってた前線組の前衛スキル構成とかだけど。大体はメイン武器1に関連補助技能3つ前後それ以外の識別だとか跳躍とかの補助技能も3つくらい」


「…案外少ないんね」


「そこからは結構ばらけるけどサブで武器やら格闘スキルやら魔法って感じだね。人によったら連戦性能上げるために生産技能とか入れてる人もいるよ」


「生産技能か、耐久回復させたりか、PTなら一人いれば便利そうだね」


「そうそう。そんで総数で言えば10個位って感じだね。β版では種族と職業レベルを上げてステータスを上げる方式がよかったみたいだからそれを引き継いでる感じかな」


「もう既に10個余裕で超えちゃってるんだけどスキル数。それでも結構上がるよ?テーブルゆるくなった?」


「はっはっはっ言いよるは此奴、あんたソロで夜に格上相手に連戦し続けてんだそりゃ美味いに決まってんでしょ。テーブル以前の話だよ」


「スキル増やそうっかな。話聞いたら欲しいスキル増えちゃった」


「今いくつよ」


「15、内魔法3」


「スキル取得しすぎ問題」


「なおまだまだ増える模様」


「経験値分配に真っ向から喧嘩打っていくスタイル嫌いじゃない」


「目指せコンプリート、憧れのスキルマスターに絶対なってやる」


「戦わせるより戦たほうが強いんだよなああいつ」


「そんで近接おすすめは?」


「メイス、手斧、ダガーとかどうよ」


「手斧とメイスで迷うね」


「…ならいっそ全部くっつけちゃうか?」


「槍も?」


「槍も」


「どうなんよそれ」


「いわゆるハルバードやポールアックスってやつだな、漢字で書くなら長柄武器ってやつ。対応スキルはないけど補正がかからないいだけで武器としては使えるはずだぞ」


「欲張りセットかよ、全部くっつけましたとか劇場版かな?」


「リーチは力、重さも力、突斬打を選べるのも力、力こそパワーなわけでそうなるのは当然QED」


「でもいいじゃんねそれ、作ってよ頑張って練習するからさ」


「おっけー承りーとりあえず作ってみるからさ、素材置いてけ」


「妖怪素材置いてけ」


「金を要求しない優しさなんだよなあ」


「んじゃあそろしく、スキル買ってくんね」


「じゃあまたあとでな」


「あとで」











スキル増えすぎて見にくくなってきたな。これ何とかならないの?

種類毎に分割とかさ…あ、できた。






ヤギリ


人間・男 Lv10/侍祭 Lv10


戦闘スキル

『槍Lv8』『斧Lv1』『メイスLv1』『棒Lv1』『打撃Lv7』『ハイドアタックLv2』


補助スキル

『腕力強化Lv8』『脚力強化Lv6』『身体強化Lv1』『視覚強化Lv1』『聴覚強化Lv1』『触覚強化Lv1』『感覚強化Lv6』『精密動作Lv1』『把持lv1』『潜伏Lv2』


汎用スキル

『浄化Lv1』『『マッピングLv6』『看破Lv5』『識別Lv4』『暗視Lv2』


魔法

『火魔法Lv1』『水魔法Lv4』『風魔法Lv4』『闇魔法Lv4』






スキル総数25個。平均の訳2.5倍の取得数。

行動可能時間は睡眠を計算に入れなければ約2倍。


さあ外付け強化パーツ祭りと行こうじゃないの。

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