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Last Resort  作者: 当廟
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≪Last Resortへようこそ!新規キャラクター設定を開始します≫


…ですよねえ。知ってたよ、事前準備はキャラの側だけだもんな、作ったの。


それでも勇んでログインした事を思えば仕方ないでしょ。ウッキウキで時間まで待機してたんだもの。そりゃ出鼻くじかれた気持ちにもなりますよ。



≪保存済みキャラクターデザインが一件発見されました。使用しますか?≫


そらもちろんよ、一時間もかけて作った自信作よ。ここで使わずしていつ使う。キャラクリガチ勢は知らん、俺としては一時間も頑張ったんだ。それでいいんだ。



≪プレイヤーネームを入力してください≫


じゃあまあいつもの「ヤギリ」で。


ここ最近のゲームはずっとこの名前でやってるから迷うこともなく、いつも通りに。名前を入力すると思い出す、珍しく活躍できたゲームを。まあそれでも大したことはなかったが…悲しい。


そんなことを思いながら種族、職業、初期スキルを選択していく。


種族はファンタジーお決まり種族たち。尖りすぎてて扱いきれなかったときが怖い。人間安定。

 

職業は何を選択しても行動に制限は掛かったりしないとのことで、適当に決めた。戦闘メインじゃない職を。硝子の心は砕けないように予防線という名のクッションが必要なんです。


初期スキルも構成とか気にせずインスピレーションで選んでいく。始まればお金やら複数の手段で取得できるらしいし。


これにて選択項目は完了っと。



≪この先に望む世界があらんことを≫












「なるほどなるほど、凄いなこれは」


思わず声が出てしまう程度には意識を奪われていた。目に入る景色に、音に、風に、匂いに、振動に。最新技術で作られたもう一つの世界とはよく言ったもので、事実リアルな夢の中にいるようだった。

天から降り注ぐ光は眩しいほどで、世界全体を初夏のように白く照らし出す。広場の噴水に、周囲の民家の窓がそれらを反射しより一層世界にきらめきをもたらしている。

町全体が白色の石灰のような石材でもって作られている。スペインのコスタ・デル・ソルだったかな?そのあたりが脳裏によぎる。

白く幾重にも重なり天高く広がる雲の存在感が、空と陸とのコントラストをより一層際立たせ鼓動が早まる。


「もうこれ観光メインでもいいじゃんね?」


それはそれで十分楽しめそうだ。元々廃人を目指すほどではない、頑張ってもミッドコアがいいとこだ。ならば気の向くまま流されてみるのも面白いだろう。

元より広告の景色に釣られたのだ。むしろそれこそがメインだしね。

好きなところに行ければいいのだ、適当に何とかできる程度に戦えればいい。


このゲームにストーリーはなくシナリオもない。ただ世界があり人がいて動植物がいて攻撃的生物がいるだけだ。

いわゆるモンスター、敵性NPC、Mob、そんな奴ら。


しいて言うなら敵を排除し未開の地を開拓するのがストーリーか。



とりあえず街中ぶらつくか。

大通りを歩いていけば正面に大きな門が見える。今は門は開いておりここからでも外の平原が見える。

そしてそこに走っていくプレイヤー達。わからなくもないよ、そういう気持ち。

ただ今回は自分の中でアクションが最上位に来ていないだけ。

そのまま視線を切り反対をむけば街の中央に巨大な建築物を見ることができる。


「めっちゃ大きいねぇ…」


関心とともについ声が出る。それほどまでに大きく、存在感のある建造物だった。白く、高く、圧倒的。あれは城なのだろうか、それとも教会?

何となく教会っぽいな?細部のデザインとか色使いとかがさ。相応の権力を持って作られた感じはするが、副次的というか前面に押し出された感じではない。


深い考えもなくただダラダラと歩きながら眺め人混みを流れる。美しい光景をただ眺め続ける。



――もう夕方か。紅に染まる街をスクショの収めれば満足した。そろそろ街の外へ出てみようか。






ヤギリ


人間・男 Lv1/侍祭 Lv1


スキル

『浄化Lv1』『槍Lv1』『腕力強化Lv1』『マッピングLv1』『看破Lv1』


魔法

なし





自分でもしっくりとは来ていない。初期選択上限は5つ。種族と職業で取得可能スキルに若干の違いはあるんだろう。キャラクリの時点で試していないのでわからないんだが。

ジョブ限定スキルに武器スキル、それ用の補助に趣味とおまけ。…案外悪くないような気がしてきた。適当だなあ俺。看破?名前がかっこいいから。


よし、とりあえず外行こう。日も暮れ外で戦闘をしていた人も帰ってきてるし。ちょっとは空いてるでしょ。


外へと向かって歩けば話が聞こえてくる。そうか、みんな夜間戦闘スキルがないのか。そういえば自分も夜目とかそれっぽいスキル見てないなぁ。

つまり今から外に出ても何も見えない?



「なーんも見えねえわ」


振り返れば街の灯りが見えるものそれまで。この時代の光じゃ一帯照らすなんて出来るわけもない。ここまで全く見えないのは流石に予想外だ。見にくく判別がつかない程度だとたかを括っていた。



――なんかいるな?


人気の無くなった草原には風と草の音のみが流れる。何も見えないからこそ、集中し過敏になった聴覚がとらえた違和感。カサりと、くしゃりと、確かな重みをもって植物を踏みつぶす音。

いまだ遠く距離も方向も曖昧だ。わかったところでどうしようもないけどさ。



野犬Lv3 /動物


これが看破で見えた情報である。当てずっぽうで看破を使えば運よく反応があった。今だ姿は見えないがいるのは確定だな。

こういうのって鑑定や観察とかの領分だと思っていた。まあ見えないものを暴き見るってなら間違っちゃいないのかな。


それよりもだ、強いねとっても。見えない中で格上… みんな引き上げるわけだ。夜に外で狩りをしない理由今理解しました。

でもまあ試してみよう。


槍を構えて看破が反応したほうへ――ダッシュ!

ぶつかって蹴り倒すように!一気に、全力で。


いきなり近付いてきたことで警戒したのかうなり声が聞こえるな?丁度いい、音のするところへ槍を、グサッと。

運よく刺されば逃げられないように力を込めて奥へ奥へと刺し込むように。


「あ、ダメっぽいな抜けるわこれ」


犬つよいな、完全に振り回されてらあ。槍が抜けたらもう勝ち目無い。なら


「締め技ならどうよ?」


なお知識なんてないので手探りで引っかかれながら後ろから首を絞めているだけだ。


「初戦闘が犬と寝技でデスマッチなんてほんとセンスがないなあ」


初戦黒星はできたら避けたい。夜に無策で突っ込んで虫がよすぎるとは思うが。


転げまわり、引っかかれ、締めながら槍をねじ込む。

そうしてれば野犬は体を青いポリゴン粒子へと体を変えた。


「完全勝利」


経験値とアイテムの取得ログが流れレベルアップ通知が存在を主張する。




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