95 不器用な恋の続き
1月になると、世の中はバレンタイン商戦に入ります。
男子校の同級生はみんなソワソワしてます。
クラスに女子はいないのですが、中学生の時の女友だちとか、バイト先の同僚の女の子とか、部活や文化祭で知り合った女子校の女の子からチョコもらえないかなぁという声が聞こえてきます。
ちなみに演劇部には女子校の演劇部から正式な義理チョコが届くのが慣例みたいです。
でもそれでもみんな嬉しいって言ってました。男って単純ですね。
うーん、私はどうしようかなぁ。
クラスの男子全員には一粒づつだけでも義理チョコあげるかな?
偽物女子だけど、少しは喜んでくれるかな?
あと、祐希と板谷君、尾崎君にはちゃんとしたチョコあげよ♫
お世話になってるからね。
そんなこと考えながら、部活を終え、電車に乗って自宅のある駅で下車すると、
「あ、いたいた。」
「よかったー、読みが当たって。」
ホームで、二人の女子が私に駆け寄ってきます。
小柄で元気いっぱいの桑島純華と長身でポニーテールが印象的なからかい上手の北山文乃です。
二人とも貧乳でAカップです。
でも、とても可愛くて、大好きな二人です。
ラケットを持っている二人は部活が終わると、何とか私の乗る電車に乗ってきたようです。
同じ車両ではなかったので、わからなかったけど、そうみたい。
「ねえ、相談に乗って。」
「頼りは葵だけなんだから。」
「ていうことは・・・私の同級生の件?」
「当たり!佐藤君と山中君の件!」
「わかった。聴きます。
じゃ、前みたいにドーナツ屋さんに行こ!」
「うん!」「よろしく!」
ドーナツ屋さんに行くと、運動部の二人はお腹が空いてたみたいで、やっぱりドーナツを買って頬張っています。二人とも、ハードに運動しているせいか、太らないみたい。いいなー。
「で、どういうこと?私、クラスでは、佐藤君と山中君から報告受けてないんだ。」
「そうなの?
実はさ、グループ交際は無事に続いてるんだ。」
「そうそう、うまく行ってる。でもね・・・バレンタイン近いじゃない?」
「だから、私たち、それぞれ好きな相手とカップルになりたいんだけど、
男子の方が、何となく、それを嫌がってる感じがするの。」
「私、佐藤君に声をかけてるんだけど、何かあまり乗り気じゃなさそうなんだ。」
「私も、山中君にちょっといろいろアピールしてるんだけど・・・何か進展ない。
結局、どっか遊びに行っても、男女のペアにならないんだよね。
嫌われている感じはしないんだけど・・・」
「カップルになるのを嫌がられてる感じ?
もしかして、好きな女子がほかにいるのかな?なんて疑い始めちゃった。」
「うん、私も。」
そっかー?女子の二人は男の子たちの恋愛対象が誰かってことに気づいていないんだ。
気づくと思ったけど、意外に鈍い二人だなあ。そこが可愛いけど。
「わかった。男の子たちに話を聴いて対策考えてみる。
もちろん、純華と文乃に相談されてるなんて言わないから安心して。
あれからどうなの?って感じで聴くから。」
「ほんと?」
「助かる!」
「その代わり、他の女の子が好きになったっていう話がでてくるかもよ!」
「きゃー、それはやめて!」
「そんなこと言ってたら、私たちの方が絶対おすすめって言ってよ!」
もう、プライドなんかないみたいです。二人は完全に恋に堕ちてしまったみたい。
まあ、可愛い二人には恋を成就してほしいから、ちょっと頑張ってみるかな。
「約束はできないけど、うまく行くように頑張ってみるから。
とりあえず、任せて。」
「やったー。」「ありがとう。」
「現金だなー。」
「うまく行ったら、今度、ここのドーナツおごるから。」
「うん、私からも!何か悩みを聴いてもらってたら、もう一個ドーナツ食べたくなっちゃった。」
「私も!ドーナツもう一個食べよ!」
嬉しそうな二人の顔をみて、こりゃほおっておけないなと思う私。
翌日、佐藤君と山中君を屋上に呼び出す私。
まるで、決闘を申し込むみたいだけど、違います。
「ねえ、純華と文乃とあれからどんな感じ?私、気になってて。
私、純華と文乃に最近会ってないし、連絡とってないから。」
「そうだったんだ。
実は、俺たち、ちょっと悩んでたんだ。
俺が好きな桑島さんって、なんか、俺の顔を見てくれないんだよな。俺のことあまり好きじゃないみたいでさ、どうしよう?って最近感じてる。」と佐藤君。
「俺も、北山さんに声をかけてるんだけど、何かうわの空って感じでさ。何かうまくコミュニケーション取れないんだよね。
やっぱり、あの二人は俺たちに興味ないのかな?
ちょっと自信なくしててさ。」
「ふーん、そうなの。」
やれやれ、こっちも女子の好きな対象が全くわかってない感じです。
困ったもんだ。
「あのさ、次に4人で会うのっていつ?」
「今週末だけど。」
「うん、今度の土曜日。」
「じゃあさ、ちょっと提案があるの?」
「ええっ?何かいい方法あるのか?」
「教えてくれ!」
「いつもとちょっと雰囲気変えてほしいんだ。本意じゃないだろうけど、佐藤君は文乃といっぱいしゃべるようにして!そんで、山中君は純華といっぱいしゃべるようにして!」
「何だそれ。つまり、ターゲットじゃない方の女の子と話し込むってこと?」
「それじゃ誤解されないか?私を好きなのかな?なんて思われちゃったら困る。」
「まあ、気分転換だよ。雰囲気を変えることによって、4人の仲が活性化して、本来のターゲットにアプローチしやすくなるっていう私の発想。純華も文乃も同じくらい可愛いんだから、話すのは嫌じゃないでしょ?それくらいのコミュ力ないと、ターゲットの女の子を口説けないよ。」
「わかった。マンネリしているのかもしれないね。ターゲットじゃない北山さんなら割と気楽に話せるかもしれない。うん、いっぱい話してみる。」
「うん、そうだな。俺も、桑島さんなら緊張しないで話せそうだ。桑島さん、小さいから、見降ろして話せるから楽かも。」
「じゃ、オッケーね。まずはがんばって!」
そのあと、純華と文乃にメッセージをスマホから送ります。
「男子に魔法の言葉を振りかけたから、今度の4人でのデートを楽しんでね!」
「何?魔法の言葉って?」「それって、効くの?」
と疑問の返信がありましたが、
「当日のお楽しみ!」と答えて終わりにします。
うーん、うまく行くといいな。




